Rocket Labは2026年8月10日、ロケットと発射設備一式を標準輸送コンテナで運ぶ「GHOST」を発表した。小型衛星を軌道へ送るElectronと、極超音速試験に使う準軌道型HASTEの両方に対応し、最初のシステムをアラスカ州コディアック島へ配備する。2027年には、そこから準軌道飛行を始める計画だ。
Rocket Labは6月、米宇宙軍から発射通知を受けて16時間42分後にElectronを打ち上げ、準備済みの射場で短時間に動けることを示した。GHOSTが変えようとしているのは、その速度を出せる場所そのものだ。発射台、地上支援、射場管制まで運搬可能な一式にまとめ、顧客が必要とする場所へ即応能力を移す構想である。
ロケットも発射場も、標準コンテナへ
GHOSTはGlobal Hypersonic & Orbital Spaceport Technologyの略称である。標準輸送コンテナには完成したロケットと発射インフラを収め、地上支援設備と射場管制システムも運ぶ。ロケットを既存の発射台まで運ぶ運送手段ではなく、Rocket Lab固有の地上系をまとめて展開する製品として設計された。
同じ地上設備で二つの機体を扱える点も大きい。Electronは全長18メートル、低軌道へ最大300キログラムを投入する軌道ロケットだ。HASTEはElectronの複合材構造と3Dプリント製Rutherfordエンジンを受け継ぎ、準軌道飛行向けに第3段を変更した。最大700キログラムのペイロードを高度80キロメートル以上で分離し、分離速度は毎秒3キロメートルから7.5キロメートル超まで調整できる。
一組のGHOSTは、小型衛星の軌道投入と極超音速機器の飛行試験という異なる需要を支えられる。Rocket Labは設置面積を抑えたモジュール構成により、短時間で射場を立ち上げ、複数の発射を同時に進められる可能性も掲げた。ただし、必要なコンテナ数、設置にかかる時間、要員数は公表していない。「迅速」と「同時」は、まだ測定値を伴わない製品目標である。
16時間42分の即応性を、固定射場の外へ
GHOST以前にも、Rocket Labは短い通知で打ち上げる運用を実証していた。米宇宙軍のVICTUS HAZEでは、2026年6月19日に発射通知から16時間42分でElectronを打ち上げた。宇宙軍が設定した24時間の期限より7時間18分早かったが、発射には準備済みのRocket Lab射場を使った。
GHOSTは、この短さを別の場所でも再現するための仕組みだ。固定設備を新設する工事を減らせれば、特定の飛行経路が必要な試験や、国内から自国の衛星を上げたい同盟国へ、ElectronとHASTEの運用基盤を持ち込める。Rocket Labが強調する「launch anywhere」の実体は、ロケットの性能向上よりも、発射場を構成する機器の標準化にある。
事業上の需要はすでに見えている。Rocket Labは7月27日、米宇宙軍のRocket Systems Launch Programから2億6600万ドルの契約を受注した。内容は準軌道飛行12回と、追加6回のオプションであり、飛行の大半をコディアック島のPacific Spaceport Complex-Alaska(PSCA)から実施する。契約上の初回飛行は2026年末以降を見込む。
この契約発表から2週間後、同社はPSCAをGHOSTの初配備先に指定した。ただし、2億6600万ドルの発表は使用機体を明記せず、12回または最大18回の全飛行がGHOSTを使うとも説明していない。契約上の初回飛行が2026年末にも始まり得る一方、GHOSTの運用開始は2027年である。アラスカの需要が開発を支えることは確認できるが、契約とシステムの対応範囲は今後のミッション発表を待つ必要がある。
なぜ最初の配備先はコディアックなのか
最初のGHOSTは、未整備の土地ではなく、1998年から35回の打ち上げ実績を持つPSCAに入る。運営する州営Alaska Aerospace Corporationによると、同宇宙港は通年運用に対応し、商用航空、凍結しない港、州管理道路からアクセスできる。遠隔地へ大型機材を運び、飛行安全を管理するための物流と射場機能がすでにある。
Rocket LabはPSCAの新拠点をLaunch Complex 4と名付け、高頻度の飛行キャンペーンに使う2基の発射台を設ける。2027年の準軌道飛行で運用を始めれば、ニュージーランドのLaunch Complex 1、バージニア州のLaunch Complex 2と3と合わせ、同社が運営する発射台は2半球で6基になる。
既存宇宙港を初配備先に選べば、GHOST固有の設備と手順を、射場安全や輸送経路が整った環境で検証できる。これはRocket Labが明示した選定理由ではないが、射場側の準備不足とGHOST固有の問題を切り分けやすい。2027年の飛行は「どこからでも」の完成証明ではなく、コンテナ式の地上系が既存射場で予定どおり動くかを測る最初の試験になる。
運べる設備と、現地に残る許認可
コンテナで設備を運んでも、発射許可と空域調整までは移動できない。米連邦航空局(FAA)は、商業宇宙機の運用と射場の運用を別に認可している。米国内で打ち上げる事業者は機体運用の免許または許可を取得し、発射地点を管轄する航空交通管制機関と合意書を結ぶ必要がある。危険区域の設定や航空情報(NOTAM)の発行も各飛行に伴う。
PSCA自体が既存の宇宙港であることは、GHOSTにとって有利に働く。一方で、Rocket Labが米国内の別地点へ展開する場合には、その場所の安全審査、空域調整、射場運用体制を整えなければならない。国外ではFAAと同じ手続きとは限らず、Rocket Labは各国での対応方法を公表していない。ハードウェアの標準化は建設と統合の負担を減らし得るが、飛行経路ごとの安全確認は残る。
公表資料には、燃料の輸送・保管方法、現地で必要な土木工事、システム価格、国外の導入顧客も記載されていない。GHOSTが変え得るのは許認可の有無ではなく、許可された場所に発射系一式を持ち込み、次の飛行まで何日で整えられるかだ。2027年のコディアック運用で、その時間と2基の発射台を使う実際のペースが初めて測られる。



