Samsung Electronicsが、ファウンドリの4nm・5nmプロセスと車載向け8nmの一部で、新規顧客向けの供給単価を約15%引き上げた。朝鮮ビズが2026年7月9日、業界関係者への取材を基に報じた。同紙は7月2日にも、Samsungが既存顧客へ生産枠を優先し、新規案件を選んで受注し始めたと伝えている。Samsungは価格改定を公表していない。ただ、同社の最新業績資料には、4nmを使うHBM4のベースダイとAI向けプロセッサの増産、2026年後半の先端ノードのフル稼働という見通しが並ぶ。公式見通しは、二つの報道が示す受注条件引き締めの背景と整合する。
約15%は新規顧客と一部ノードに限られる
朝鮮ビズによると、約15%の値上げ対象は需要が集中する4nm・5nmと、車載向け8nmの一部だ。契約済みの全顧客や全工程を一律に引き上げる話ではない。同紙は、TSMCもNVIDIA、Apple、AMDなどの主要顧客に対し、3nm・5nm・7nmのウェハー供給単価を5〜10%引き上げる方針を伝えたと報じている。Samsungの改定はTSMCより率が大きい。一方で、対象は新規顧客と特定ノードに絞られている。
この違いは両社の立場を映す。TSMCは複数の先端ノードに広く価格を乗せる。対してSamsungは、注文が集まる工程から単価を改める。新規案件なら既存契約を変更せずに価格を設定でき、採算や生産効率を見ながら顧客を選びやすい。約15%はファウンドリ市場全体の相場ではない。Samsungが一部ラインの新規案件で、従来より高い単価を提示したとされる数字だ。顧客がその条件を受け入れたかは明らかになっていない。
車載向け8nmが対象に入った点も見逃せない。Samsungは車載インフォテインメント向けに14nmから4nmまでを量産し、ADAS・自動運転向けには8nmや5nmを供給している。今回の対象はAIサーバー向けの先端工程に収まらず、長期供給と信頼性が求められる車載工程にも及ぶ。ただし、8nmの需給や値上げの受諾状況を示す数字は公表されていない。
4nmを埋めるHBM4とAI向けLPU
Samsungの2026年1〜3月期資料は、需要が4nmへ集まる理由を具体的に示している。同社は4〜6月期に、4nmを使うメモリー製品とAI・HPC向けLPUの量産を増やす計画を掲げた。2026年後半には先端ノードのラインがフル稼働となり、HBM4のベースダイ供給増によって収益を改善する見通しである。
HBM4のベースダイは、積層したDRAMとAIアクセラレータの間でデータをさばくロジックチップだ。Samsungは2025年10〜12月期に4nm版の初期出荷を始めており、2026年は量産を広げる段階に入った。スマートフォン向けSoCが中心だった4nmラインへ、HBMとAI・HPC向けの大規模チップが加わる。需要源が増えれば、空いているラインを埋めるための値引きより、限られた生産枠をどの案件へ割り当てるかが優先される。
4nmは新設されたばかりの工程でもない。SamsungのSF4は2021年に量産を始めたFinFET世代であり、同社は歩留まりと工程安定性が成熟した基盤として扱う。それでもAI向けの大きなダイは、面積が広いほど欠陥に当たる確率が上がる。均一性と歩留まりの管理はそれだけ難しくなる。Samsungは次世代LPUを2026年後半に量産する予定だ。価格を引き上げても顧客をつなぎ留められるかは、安定して良品を出せるかにかかっている。
TSMCの74%が作る価格の傘
競合の公式数字を見ると、AI需要が価格を押し上げる下地ははっきりしている。TSMCの2026年1〜3月期は、3nmがウェハー売上高の25%、5nmが36%、7nmが13%を占めた。7nm以下の先端ノードを合計すると74%に達する。用途別ではHPCが売上高の61%を占め、スマートフォンの26%を大きく上回った。
同四半期の12インチ換算ウェハー出荷は417万4,000枚で、前年同期から28.1%増えた。粗利益率は66.2%と前四半期から3.9ポイント上昇した。TSMCはコスト改善、高い設備稼働率、為替を理由に挙げている。値上げそのものは同社も公表していない。ただ、先端工程が売上の4分の3を占め、HPCが最大用途となった収益構造は、供給側が価格を維持しやすい環境を裏づける。
TSMCが広い範囲で高い稼働率と利益率を確保すれば、Samsungは代替供給先として安さだけで競う必要が薄れる。顧客にとっても、一社に生産を集中させるより、設計移植や検証の費用を払ってSamsungを第2の生産先に加える意味が増す。ただし、同じ設計を別のファウンドリへ移すには工程ごとの作り直しが必要だ。発注先は価格差だけでは動かない。Samsungが高い単価を維持するには、TSMC側の供給余力が限られた状態が続き、自社の歩留まりと納期を顧客が受け入れられる水準に保つ必要がある。
値上げ率より歩留まりと稼働率
顧客が支払うウェハー単価が15%上がっても、完成したGPUやスマートフォンの原価が同じ率で増えるわけではない。1枚のウェハーから取れる良品数はダイの大きさと歩留まりで変わり、その後には先端パッケージ、HBM、基板などの費用が加わる。大きなAIチップでは、ウェハー価格よりも良品1個当たりの実効コストが発注判断を左右する。値上げ後も歩留まりが上がれば、顧客の負担増を一部相殺できる。
Samsung側にも同じ条件が当てはまる。2026年1〜3月期のファウンドリ収益は季節要因で悪化した。同社はファウンドリ単独の売上高や営業利益を開示していない。Samsungの半導体部門が記録した大幅な利益を、そのままファウンドリの回復とみなすことはできない。しかもフル稼働の見通しは先端ノードに限られ、成熟工程を含む事業全体の稼働率ではない。
約15%の改定が転機だったかは、2026年後半の決算で見えてくる。4nmのHBM4ベースダイとAI向けLPUが予定通り増え、先端ノードのフル稼働が利益改善へ結びつくか。さらに新規顧客向けの価格が既存契約にも広がるか。この二つを確認できて初めて、Samsung Foundryが値引きで受注を追う局面を抜けたと判断できる。