Samsungが、業界に先駆けて2nmプロセスで製造されるモバイルSoC「Exynos 2600」の量産を2025年後半に開始すると正式発表した。長年TSMCの後塵を拝してきた同社にとって、これは技術的リーダーシップを奪還する絶好の機会となるのか。

AD

「世界初」の称号をかけた2nm GAAプロセスへの賭け

半導体業界の微細化競争が新たな局面を迎えた。Samsungは2025年第2四半期の決算発表の場で、アナリストからの質問に答える形で、次世代モバイルSoC「Exynos 2600」が同社初の2nmプロセスで製造されることを公式に認めた。

これまで同社は「2025年後半に2nm GAAプロセスを採用した新しいモバイルSoCの量産を拡大する」と述べるに留まっていたが、その具体的な製品名が明らかになった形だ。Apple、Qualcomm、MediaTekといった主要プレイヤーが依然としてTSMC製の3nmプロセスに依存する中、Samsungのこの一歩は、彼らを技術的にリードする可能性を秘めている。

この挑戦の核となるのが「GAA(Gate-All-Around)」と呼ばれる次世代トランジスタ技術である。従来のFinFET構造では3方向からしか制御できなかった電流ゲートを、GAAでは文字通りゲートがチャネルの4方向すべてを囲む構造になっている。これにより、より精密な電流制御が可能となり、消費電力あたりの性能向上とリーク電流(電力漏れ)の大幅な削減が期待される。Samsungはこの最先端技術で、競合との差を一気に突き放す構えだ。

Exynos 2600、その心臓部に秘められた実力

Exynos 2600は、単にプロセスルールが微細化されただけではない。その内部構造からも、Samsungの並々ならぬ意気込みがうかがえる。

10コアCPUとGeekbenchスコアが示す片鱗

リーク情報によれば、Exynos 2600は10コア構成のCPUを採用すると見られている。これは、高性能コア、中間コア、高効率コアを組み合わせた「1+3+6」という変則的な構成になる可能性がある。

最新のGeekbenchテストとされるデータでは、シングルコア性能で2,155点、マルチコア性能で7,708点というスコアを記録。これはあくまで開発初期段階の数値であり、最終製品ではさらに最適化が進むことを考慮すると、そのポテンシャルは計り知れない。SnapdragonやAppleのAシリーズチップとしのぎを削る上で、十分な性能向上が見込まれる。

GPUはAdreno超え?Eclipse 960の潜在能力

グラフィックス性能においても、大きな飛躍が期待されている。Exynos 2600には、AMDのRDNAアーキテクチャをベースに自社開発した「Eclipse 960 GPU」が搭載される見込みだ。

一部の情報では、このEclipse 960は、競合となるQualcommの次世代GPU「Adreno 830」を15%上回る性能を持つとさえ囁かれている。モバイルゲーミングやAI処理においてグラフィックス性能の重要性が増す中、このアドバンテージは大きな武器となるだろう。

AD

復活の鍵を握る「歩留まり」との静かな戦い

しかし、どんなに優れた設計も、安定して量産できなければ絵に描いた餅に過ぎない。Samsungにとって最大の障壁は、常に「歩留まり」との戦いであった。歩留まりとは、製造したチップのうち、良品として出荷できる割合を示す指標だ。

3nmプロセスではこの歩留まりに苦しみ、TSMCに大きく水をあけられた苦い経験を持つSamsungだが、2nmプロセスでは大きな改善が見られるようだ。関係者によると、初期の30%程度だった歩留まりは、現在40~50%まで向上しているという。商業生産の採算ラインとされる70%にはまだ道半ばだが、3nmでの苦戦を考えれば、これは大きな進歩と言える。

一方で、ライバルのTSMCは2nmプロセスの歩留まりがすでに60%に達しているとの観測もあり、予断を許さない状況が続く。この歩留まり向上こそが、Samsungファウンドリ事業の未来を占う上で最も重要な指標となるだろう。筆者は、この静かなる戦いの行方こそが、今後の半導体業界の勢力図を決定づけると考えている。

Galaxy S26、そしてTesla。Samsungの描く未来図

Exynos 2600の最初の搭載先として確実視されているのが、2026年初頭に登場予定の「Galaxy S26」シリーズだ。これまで通り、販売地域によってQualcommの次世代Snapdragon(Snapdragon 8 Elite Gen 2と噂される)と使い分ける戦略が採られる見込みだが、自社製チップの性能が競合を上回れば、その採用比率を高める可能性も十分にある。

Samsungの野望は、スマートフォン市場に留まらない。同社は最近、Teslaとの間で165億ドルにも上る巨額の半導体供給契約を結んだと報じられており、この2nmプロセスが自動運転用チップにも活用されるのではないかと見られている。

Exynos 2600の成否は、単なる一チップセットの成功に留まらない。それは、Samsungがファウンドリ事業の威信を回復し、モバイルから自動車まで、あらゆるインテリジェントデバイスの中核を担う半導体メーカーとしての地位を確固たるものにするための、壮大な物語の序章となるのかもしれない。


Sources