Qualcommの次期フラッグシップSoC「Snapdragon 8 Elite Gen 2」が、従来の予想より早い2025年9月末に発表され、搭載スマートフォンが10月にも登場する可能性がリーク情報により浮上している。この前倒しは、新型iPhoneとの競争や年末商戦への影響も考えられ、Androidスマートフォン市場の動向を左右する可能性がありそうだ。
リーク情報が示す新たなタイムライン
著名なリーカーであるデジタルチャットステーション(数码闲聊站)氏が中国のソーシャルメディアWeiboで発信した情報によると、Qualcommは「Snapdragon 8 Elite Gen 2」(モデルナンバーSM8850とされる)を9月末に発表する可能性があるという。これに基づき、最初の搭載スマートフォンは10月にも登場すると予測されるようだ。

これは、従来のスケジュールからの更なる前倒しを意味する情報だ。現行の「Snapdragon 8 Elite」は2024年10月下旬に開催されたSnapdragon Summitで発表され、最初の搭載スマートフォンであるXiaomi 15シリーズはその直後、10月29日に発表された。過去数年間、Qualcommはこの発表イベントを徐々に早めており、かつては11月開催だったものが、ここ2年は10月下旬となっていた。今回のリークが事実であれば、さらに約1ヶ月早まることになる。
この早期発表の背景には、いくつかの要因が考えられる。一つは、直接的な競合製品となるであろうMediaTekの次期フラッグシップSoC「Dimensity 9500」に対するアドバンテージ確保の狙いだ。昨年は「Dimensity 9400」が「Snapdragon 8 Elite」よりもわずかに早く発表されており、Qualcommとしては先に市場の注目を集めたい意向があるのかもしれない。
Android陣営への影響と市場競争の激化
Snapdragon 8 Elite Gen 2の発表と搭載製品の発売が前倒しされれば、Androidスマートフォンメーカーにとって大きなメリットが生まれる可能性がある。
第一に、Appleの新型iPhone(次期モデルはiPhone 17シリーズと予想される)の発売時期とのギャップを縮めることができる。例年9月に発表・発売される新型iPhoneに対し、最新の高性能SoCを搭載したAndroidフラッグシップ機をより近いタイミングで市場に投入できれば、性能面での比較劣位の期間を短縮し、消費者の選択肢としてアピールしやすくなる。
第二に、年末商戦への対応が有利になる点だ。10月に最初の製品が登場し、グローバル展開が12月から1月にかけて行われるようになれば、感謝祭(11月)やクリスマス(12月)といった重要な販売シーズンに向けて、最新機種を投入できる可能性が高まる。これは、スマートフォンの販売台数を伸ばす上で大きなチャンスとなるだろう。
最初の搭載メーカーとしては、例年通り中国のXiaomiが最有力視されている。Xiaomi 16およびXiaomi 16 Proが、Snapdragon 8 Elite Gen 2を搭載する最初のフラッグシップモデルとなる可能性が高い。その後、Samsung、OnePlus、Asusといった他のAndroidベンダーも追随すると見られる。
特にSamsungに関しては、次期モデル「Galaxy S26」シリーズでの採用が注目される。同社は自社製SoC「Exynos」の開発も進めているが、「Exynos 2500」では製造を担当するSamsung Foundryの3nmプロセスの歩留まり率の問題で「Galaxy S25」シリーズでの採用を見送った経緯がある。次期「Exynos 2600」の開発状況次第では、Galaxy S26シリーズが再び全モデルSnapdragon搭載となる可能性も、あるいは一部モデルのみExynos搭載となる可能性も残されている。最近の報道ではSamsungの2nmプロセスにおける歩留まり率が改善しているとの情報もあり、2025年11月までにExynos 2600の量産が可能になれば、来年のフラッグシップでの採用もあり得るとされている。
噂されるSnapdragon 8 Elite Gen 2の性能
現時点でSnapdragon 8 Elite Gen 2の公式な情報は発表されていないが、リーク情報からはその性能向上の可能性がうかがえる。
製造プロセスには、TSMCの改良型3nmプロセスである「N3P」が採用される見込みだ。これは現行世代よりもさらに微細化・効率化されたプロセスであり、性能向上と消費電力削減に寄与すると考えられる。
CPUコア構成は、現行のSnapdragon 8 Eliteと同様の「2つのプライムコア + 6つのパフォーマンスコア」という構成を維持しつつ、第2世代のカスタムOryonコア(一部情報ではPegasusコアとも呼ばれる)が採用されると噂されている。テスト段階では最大5.0GHzのクロック周波数に達したとの情報もある。これにより、CPU性能は最大25%向上する可能性がある。Geekbench 6のシングルコアスコアでは、現行世代の約3,200点を大きく上回る4,000点以上を達成するとの予測もある。
GPUに関しても、「Adreno 840」と呼ばれる新型GPUが搭載される見込みだ。独立したGPUキャッシュが現行の12MBから16MBに増加するとの情報もあり、これによりGPU性能は最大30%向上する可能性がある。
総合的なパフォーマンスを示すAnTuTuベンチマークスコアについては、情報源によって差があるものの、現行世代に対して28%増、あるいは最大40%増(380万点に達する) といった大幅な向上を示す予測が出ている。
その他の噂される仕様としては、32MBのL2キャッシュ搭載、最新の高速メモリ規格であるLPDDR6 RAMへの対応、機械学習能力を強化するSVEおよびSME命令セットへの対応などが挙げられている。詳細は以下の記事を参照頂きたい。
ただし、これらのスペックや性能向上に関する情報は、あくまで現時点でのリークや噂に基づくものであり、Qualcommやスマートフォンメーカーからの正式な発表を待つ必要がある点には注意が必要だ。
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