ValveSteam Deck OLEDを大幅に値上げしてから約2カ月、販売台数が平均82%減ったとの推計が出た。だが、この数字はValveが公表した実売ではない。Steamの売上高ランキングを独自の金額帯へ置き換え、想定した平均販売価格で割った結果である。値上げでSteam Deckの価格優位が薄れたことと、販売台数が82%減ったとの結論は分けて考える必要がある。

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44〜46%の値上げで、価格の前提が変わった

Valveは2026年5月27日、Steam Deck OLED 512GB549ドルから789ドルへ、1TB649ドルから949ドルへ値上げした。上げ幅はそれぞれ240ドル300ドルで、率に直すと約44%と約46%になる。理由はメモリとストレージのコスト上昇であり、Valveは本体そのものに変更はないと明記している。

同じ仕様の製品を買うために、512GBでは従来より240ドル多く払う。1TB1,000ドル51ドル届かない価格だ。この水準では、999.99ドルの競合機が公式価格の比較対象に入る。

比較対象のROG Xbox Ally X(2025)は、ASUSの米国ストアで999.99ドルである。Ryzen AI Z2 Extreme24GB LPDDR5X、1TB SSD、80Whバッテリー、1920×1080・120Hzディスプレイを搭載する。対するSteam Deck OLEDはZen 2 4コア、RDNA 2の8 CU、16GB LPDDR5、50Wh、1280×800・最大90HzのOLEDだ。OSの設計や消費電力の上限が異なるため、仕様表だけで優劣は決まらない。ただし、1TB同士の価格差は50.99ドルまで縮んだ。

「82%減」はどう計算されたのか

Boiling Steamは、Steamのグローバル週次トップセラーにおける順位を起点にした。2025年のSteam Deckは主に4〜5位、2026年7月は10〜15位に下がったとみなし、それぞれの順位に独自の週次売上高帯を割り当てている。

推計の入力 2025年 2026年7月
想定した順位 4〜5位 10〜15位
想定した週次売上高 600万1,000万ドル 120万250万ドル
想定した平均販売価格 540ドル 835ドル
算出した週販 11,000〜18,000台 1,400〜3,000台

計算の筋道は明快だ。Boiling Steamの推計では、売上高が72%減る一方、平均販売価格が54%上がるため、推定販売台数はさらに小さくなり、平均82%減という結果になる。ただし、Valveが公開しているのは順位であり、各順位の売上高ではない。600万1,000万ドルと120万250万ドルという帯は、Boiling Steamが外部データから置いた推定値である。

平均販売価格にも仮定が入る。2025年の約540ドルは、399ドル256GB LCDを25%、549ドル512GB OLEDを45%、649ドル1TB OLEDを30%とした構成から算出している。2026年の約835ドルについては、2つのOLEDモデルをどの比率で売ったかが示されていない。つまり82%は、非公開の売上高と非公開のモデル構成を2段階で推定した数字だ。販売減の方向を考える材料にはなるが、精度を検証できる販売統計ではない。

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10位、16位、9位という三つの順位

Valveの週次トップセラーは、月曜日の午前10時(太平洋時間)から次の週までに得た売上高で上位100製品を並べる。販売本数ではない。ゲームの場合は本体価格に加えてDLCやゲーム内取引も合算されるため、Steam Deckの順位は大型新作、セール、基本プレイ無料タイトルの課金動向でも変わる。

確定済みの週次チャートを追うと、Steam Deckは2026年6月30日〜7月7日に10位、7月7〜14日に16位、7月14〜21日に9位だった。Boiling Steamの記事が出た7月20日の時点では最後の週がまだ終わっておらず、その後に確定した順位は9位まで戻った。16位への低下は確認できるが、その位置にとどまり続けたわけではない。

2025年の比較点も一様ではない。年初の週は5位、6月17〜24日は7位、12月2〜9日は2位だった。2026年の10位や16位は前年の確認点より低い一方、順位差をそのまま売上高72%減へ変換する公式の対応表は存在しない。直近の9位も需要回復の証明にはならず、82%減を確定させる数字にもならない。

販売崩壊より先に、価格優位の縮小

公式情報から言えるのは、Steam Deck OLEDが同じ仕様のまま約44〜46%高くなり、1TBモデルが新世代の競合機に近い価格へ入ったことだ。価格改定後の週次順位は、確認した2025年の3週を下回る週もあった。値上げは、Steam Deckを検討する買い手の比較条件をはっきり変えた。

それでも、販売台数82%減を確定事実として扱うには情報が足りない。Valveがモデル別台数や売上高を開示しない限り、外部から確認できるのは相対順位までである。今後数週間、在庫がある状態で週次順位が再び中位へ沈むのか、9位前後を保つのか。その推移によって、値上げ後の順位低下が一時的だったかを判断しやすくなる。