米国のTrump政権が、半導体とそれを組み込んだ製品へ新たな関税を課す案を検討している。Politicoが2026年8月27日、政権内の協議を知る8人の話として報じた。米国内生産への投資に応じて無税輸入枠を与え、サーバーなどの完成品も対象に加える案だという。1月に始まった現行措置はデータセンター向け輸入を免除しているが、その免除が第2段階で外れる可能性が出てきた。

政権は半導体生産の国内回帰と、AIデータセンターの急速な建設を同時に進めようとしている。しかし、米国内の供給能力は輸入をすぐに置き換えられない。将来の工場投資に連動する無税枠で、足元の計算資源需要をどこまで賄えるのか。関税案の成否は、この時間差を埋められるかにかかっている。

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無税輸入枠を米国内生産の約束に連動

Politicoによると、Howard Lutnick商務長官が支持する案では、企業が米国で生産すると約束した量に応じて、一定量の半導体を無税で輸入できる。国ごとに税率や輸入枠を変える案も検討されている。新関税を段階的に導入し、負担が一度に生じるのを避ける選択肢も協議中だという。

適用範囲は半導体から下流へ広がる可能性がある。候補にはノートPC、ゲーム機、データセンターで使うサーバーが含まれる。サーバーまで課税されれば、チップを調達する事業者に加え、完成したシステムを輸入するクラウド事業者も影響を受ける。

ただし、これは決定済みの制度ではない。報道時点で税率、品目、無税枠の計算式、国別条件は固まっておらず、数週間から数カ月の協議で大きく変わり得る。データセンター免除を廃止するかどうかも未確定だ。政権が1月から進めてきた二段階措置の次を検討していることは分かるが、制度の詳細はまだ分からない。

無税枠の基準も実務を変える。投資額、将来の生産能力、実際の生産量のどれと連動するかは公表されていない。枠を企業単位で与えるのか、国やメーカーごとに配るのかも不明だ。需要との比較に使える算定式が示されなければ、データセンター事業者は関税を含む調達費を見積もれず、複数年の建設計画に織り込みにくい。

1月の25%関税にはデータセンター免除がある

Trump大統領が2026年1月14日に署名した布告は、通商拡大法232条に基づく半導体輸入調整を二段階で進めると定めた。第1段階では、限定された先端計算チップと一部の派生製品へ25%の従価関税を課した。一方、米国内のデータセンターと研究開発で使う輸入品は免除した。スタートアップ、消費者用途、公共部門などにも同じ免除を設けている。

布告は第2段階について、交渉終了後に半導体と製造装置、派生製品へ「相当な」関税を課し得ると記した。米国の半導体生産や関連サプライチェーンへ投資する企業に優遇を与える関税相殺制度も盛り込む方針を示している。したがって、国内投資と輸入優遇を結ぶ発想自体は新しくない。今回の報道で輪郭が見えたのは、優遇を生産量ベースの輸入枠にし、既存の用途別免除を縮小する可能性である。

国内回帰を求める理由も布告に書かれている。米国は世界の半導体のおよそ4分の1を消費する一方、必要なチップの約10%しか国内で一貫製造していないと商務省は判断した。輸入依存を安全保障上のリスクとみなし、価格差を関税で変えて投資を促すのが政策の狙いだ。

同じ布告は、データセンター向け半導体市場の報告を7月1日までに大統領へ提出するよう商務長官へ指示した。8月28日時点で、その報告は一般に確認できない。新しい輸入枠が現在の需要や工場の立ち上がりをどう織り込むのか、政権が使った供給見通しを外部から検証できない状態である。

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15.6%という建設コスト試算を分解する

Computer & Communications Industry Association(CCIA)は、データセンター免除が外れた場合の試算を公表した。データセンター支出の78%をIT機器が占め、その80%を輸入し、25%の関税がほぼ全額転嫁されると仮定する。掛け合わせると、建設投資1ドル当たりの実効的なコスト上昇は15.6%になる。

CCIAは、この負担によって2026~2030年に予定される米国AIデータセンター投資の約20%、四千五百億ドル(450,000,000,000ドル)が中止、2030年より後への延期、または国外移転になると見積もった。そこから年九百億ドル(90,000,000,000ドル)のGDP損失と243,000人の雇用リスクを導いている。

この数字は政府予測ではない。CCIAはテクノロジー企業を代表する業界団体であり、関税に反対する政策提言のために組んだシナリオだ。輸入比率を80%と置き、関税コストがほぼ100%転嫁され、チップの単体輸入と完成品の再輸入で二重課税が起きないと仮定している。制度設計が変われば、結果も動く。

感度分析は、どの条件が負担を変えるかを示している。

想定する制度 CCIAが試算した年GDP損失
25%、データセンター向けも対象 約九百億ドル(90,000,000,000ドル
税率を10%へ引き下げ 約四百五十億ドル(45,000,000,000ドル
25%を維持し、サーバーを免除 約三百六十億ドル(36,000,000,000ドル
10%に下げ、サーバーも免除 約百六十億ドル(16,000,000,000ドル

同じ関税政策でも、税率を下げる場合とサーバーを外す場合では削れる負担が違う。完成品の課税範囲が設備投資額を大きく動かすためだ。九百億ドル(90,000,000,000ドル)という中心値を確定的な損失として扱うより、サーバーとデータセンター免除が残るかを測る比較材料として読む方がよい。

税率より先に確認したい輸入枠と課税境界

無税枠を国内生産に連動させても、工場が稼働するまでの需要を賄えなければ、AI事業者は関税を払って不足分を輸入する。現行布告自身が、米国は必要量の約10%しか国内で一貫製造していないと認めている。関税は輸入品と国産品の価格差を変えられるが、国内の生産能力を直ちに増やせるわけではない。

完成品まで対象を広げる場合は、通関も難しくなる。CCIAを含む19業界団体は5月の共同書簡で、完成品の輸入者が組み込みチップの原産地や価値、ウエハー製造地、組立・試験地を通関時に把握できない場合が多いと指摘した。情報は数階層上流の部品供給者が持ち、製造中に変更されることもある。

業界団体は、半導体の含有量が少ない製品を外すde minimis基準、品目番号で明確に判定できる対象範囲、既存関税との重複防止を求めている。単体チップに課税し、そのチップを海外でサーバーへ組み込んだ後に再び課税すれば、国内投資を促す水準を超えてコストが積み上がる。どの書類で無税枠を使えるかも、調達計画を左右する。

米AI Action Planは、データセンター建設、計算ハードウェア、AIモデルで米国が持つ優位を長期的な主導権へつなげる方針を掲げた。半導体関税とその目標の両立には、公表される税率に加えて輸入枠と課税境界の設計が効く。正式案で確認すべきなのは、データセンター免除が残るか、無税枠が国内供給の立ち上がりまでの需要を覆うか、サーバーをどこで課税するか、同じチップへの重複課税を防げるかである。国内供給が増えるまで必要な輸入を認めれば、AI基盤の建設を止めずに、将来の国内生産へ需要をつなげられる。