Trump米大統領が2026年9月6日、月と米国旗を描き、「月はわれわれのもの」と記した画像をTruth Socialに投稿した。これに関しては、第三者アーカイブにも画像が保存されている。米国も参加する宇宙条約は月の領有を禁じており、この投稿によって月が米国領になるわけではない。だが、月を領有できないことと、月面に持ち込む機器を所有したり資源を利用したりすることは別だ。科学探査や将来の採掘を考えるには、何に対する権利なのかを区別する必要がある。
投稿とアポロの星条旗
![FireShot Capture 581 - Truth Details - Truth Social - [truthsocial.com].webp](https://media.xenospectrum.com/Fire_Shot_Capture_581_Truth_Details_Truth_Social_truthsocial_com_d870af2cf8.webp)
保存画像には、月面を背景に「THE MOON IS OURS」という文字と米国旗が置かれている。投稿日時はアーカイブ上で米東部夏時間の9月6日と記録されているが、画像から具体的な領有手続きや政策変更の内容は読み取れない。政治的なメッセージと、宇宙で認められる権利を定める文書は分けて受け止めたい。
月に星条旗を置く行為は、アポロ計画を思い起こさせる。NASAによると、1969年7月20日、アポロ11号の宇宙飛行士が月面に米国旗を立てた。旗の設置は初の月面着陸に伴う象徴的活動を検討した委員会が推薦したものである。
その時点でも、宇宙条約はすでに発効していた。発効日は1967年10月10日で、第2条は月を含む宇宙空間について、主権を主張する場合も、使用や占拠による場合も「国家による取得の対象とはならない」と定める。旗を立てた国が、その場所を領土にできる仕組みではない。
土地と機器で異なる権利
宇宙条約第8条は、宇宙へ打ち上げた物体やその構成部分の所有権が、天体上に置かれても影響を受けないと規定している。月へ運んだ探査車や観測装置まで、誰でも持ち去れる物になるわけではない。登録国は宇宙物体とその乗員に対する管轄権と管理権も保持する。こうした機器の権利は、設置した土地の領有とは異なる。
月面で想定される対象を、宇宙条約とアルテミス合意の文言に沿って分けると、次のようになる。アルテミス合意は民生宇宙活動に関する署名国の政治的な約束であり、条約そのものとは性格が違う。
| 対象 | 文書上の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 月面の土地 | 主権の主張や使用、占拠によって国家が取得することはできない | 宇宙条約第2条 |
| 持ち込んだ探査車や観測装置 | 天体上にあることによって所有権は影響を受けない | 宇宙条約第8条 |
| 月面から採取する資源 | 採取が本来的に国家による取得に当たるわけではない、という署名国の立場 | アルテミス合意第10節 |
| 活動周辺の安全区域 | 有害な干渉を避けるために通知と調整を行う、活動終了までの一時的な区域 | アルテミス合意第11節 |
表は宇宙条約と2020年のアルテミス合意を対象別に分類したものだ。資源の行は合意署名国の解釈を示し、個々の事業の採掘権を確定するものではない。機器の所有、資源の採取、周囲での活動調整を一括して月の所有と呼ぶと、この区別が失われる。
民間企業の活動にも条約上の条件がある。第6条は、非政府団体の宇宙活動に関係当事国の許可と継続的な監督を求めている。国家による領有を禁じる規則から、民間なら無条件で開発できるという結論は導けない。
資源利用を支援してきた米国
Trump氏は第1次政権の2020年4月6日、宇宙資源の回収と利用への国際的支持を促す大統領令を出している。同令は、水や特定の鉱物などを回収して利用するうえで商業主体との協力が必要だとし、適用法に従った商業的探査と資源利用を支持した。今回の画像で初めて資源開発を認めた、という経緯ではない。
大統領令には、米国は宇宙空間を世界の共有財産とは見なさない、という立場も記されている。ただし、対象は資源の回収と利用を支援する政策であり、月面を米国領とする条項はない。同令はさらに、米国が参加する宇宙条約と、参加していない1979年の月協定を区別している。月協定に参加していないことを、宇宙条約にも拘束されないという意味にはできない。
同じ2020年に採択されたアルテミス合意は、資源採取を宇宙条約に適合する方法で行うよう求めたうえで、採取が本来的に国家による取得に当たるわけではない、と署名国が確認している。資源を使うことと天体を領有することを区別し、探査を進めようとする立場だ。この解釈をすべての国が共有しているとまでは、合意から言えない。
科学活動に求められる調整
宇宙条約第9条は、月などの有害な汚染を避け、他国の活動に有害な干渉を及ぼすおそれがあると信じる理由がある場合には、事前に国際的な協議を行うよう求める。科学探査にもこの条件はかかる。研究目的を掲げれば、他国の観測や探査への影響を考えずに活動できるわけではない。
アルテミス合意が示す安全区域は、こうした干渉を避けるため、活動を通知して調整する区域である。規模と範囲は科学と工学の原則に基づいて合理的に定め、活動が終われば区域も終了する。天体のすべての地域への自由な立ち入りを尊重する約束もあり、恒久的な国境を引く制度とは区別されている。
科学データの公開にも対象の限定がある。合意第8節は協力活動で得られた科学的成果の公開を約束する一方、署名国の代理として行う場合を除き、民間事業にこの約束を適用する意図はないとしている。これは民間企業に情報提供義務が一切ないという意味ではなく、この合意の科学データ公開の約束がどこまで及ぶかを示す条件だ。
月面活動の具体的な計画が示されたときは、運用する場所、安全区域の広さと期間、他国との協議内容が判断材料になる。これらを明らかにし、機器の保護と他国の探査へのアクセスを両立させられれば、月を自国領にすることなく科学調査や資源利用を進める条件を整えられる。



