TSMCの2nmプロセス製造コストの大幅上昇により、2026年発売予定のiPhone 18シリーズやQualcomm・MediaTekチップを採用する次世代Android端末の価格上昇が懸念されている。複数の情報筋によると、先端プロセス移行によるパフォーマンス向上と引き換えに、消費者は従来よりも高い価格を支払う必要があるかもしれない。
高性能化の代償? 2nmプロセスがもたらすコスト増
半導体製造大手TSMCは最近、次世代となる2nmウェハーの注文受付を開始したとされる。業界推定によると、この2nmウェハーの製造コストは1枚あたり約30,000ドル(約450万円)という高額になる見込みだ。これは現行の3nmプロセスと比較して「大幅な」コスト上昇となる。
2nmという数字は、半導体の微細化プロセスを示しており、数字が小さいほど先進的な技術となる。現在最先端のiPhone 15 ProシリーズやiPhone 16シリーズに搭載されているA17/A18チップは3nmプロセスで製造されている。
技術的には、2nmプロセスへの移行によって同じチップサイズで約15%のパフォーマンス向上が期待でき、電力消費の増加なしに性能を高められるメリットがある。一般ユーザーにとっては、アプリの起動速度向上やゲームのスムーズな動作、AIタスクの高速化などが実感できるようになるだろう。しかし、この技術進歩には高いコストが伴うことになりそうだ。
iPhone 18シリーズ全機種が2nmプロセス採用か、価格上昇必至
AppleのiPhone 18シリーズは2nmプロセスを採用したA20チップを搭載すると予想されている。著名なリーカー数码闲聊站氏が中国のSNS「Weibo」で指摘するように、2026年のiPhoneモデルは「大幅な価格上昇」が予想されている。
当初、著名アナリストのMing-Chi Kuo氏は2nmプロセスの低い歩留まり(正常に製造できるチップの割合)を理由に、AppleはiPhone 18 ProまたはPro Maxのみに2nmチップを限定すると予測していた。しかし2025年3月時点での報告では、TSMCの歩留まりが大幅に改善し、60〜70%に達したとされる。この改善により、iPhone 18シリーズ全体に2nmプロセッサを採用する可能性も出てきた。
現在、iPhone 16 Proの最小容量モデルは約16万円、iPhone 15は約12万円からだが、2nmプロセス採用によるコスト増加で、iPhone 18シリーズはさらに1〜2万円程度価格が上昇する可能性がある。ただし、正確な価格上昇幅については現時点では推測の域を出ない。
Qualcomm・MediaTek採用の次世代Androidも高騰の波、Galaxy S27などに影響
Qualcommも2026年に2nmプロセスを採用したSnapdragon 8 Elite Gen 3を含む2つのチップセットを開発中とされる。同チップはSamsung Galaxy S27シリーズやOppo Find X10、Vivo X400シリーズなど、主要メーカーのフラッグシップモデルに搭載される見込みだ。
TSMCへの依存度を下げるため、QualcommはSamsungの先端ノードの利用も検討しているという。この「デュアルソーシング」戦略によって、コスト上昇を抑える可能性もある。
MediaTekも2nmプロセスを採用する予定で、最初のチップセットはDimensity 9600になると予想されている。同社は比較的低価格で提供することで市場シェア拡大を狙う戦略を取る可能性もあり、中価格帯のスマートフォン市場に影響を与えるかもしれない。
現在10〜15万円程度のAndroidフラッグシップモデルも、2nmチップ採用モデルでは価格上昇が避けられない見通しだ。
半導体業界のジレンマと消費者への影響、高性能と高価格のトレードオフ
チップメーカーは最先端技術の採用とコスト上昇というジレンマに直面している。最新技術を採用しないことで競争に遅れをとるリスクがある一方、高すぎる価格設定は消費者の購買意欲を削ぐ可能性がある。
消費者にとっては、「最新の高性能チップを搭載した高価格モデル」と「前世代のチップを搭載した比較的手頃な価格のモデル」という選択肢の差がより鮮明になるだろう。例えば、2026年には2nmプロセス採用のプレミアムモデルと、3nmプロセス採用の標準モデルという棲み分けがより明確になる可能性がある。
一部の分析によれば、2nmウェハーの需要増加によって、TSMCが規模のメリットを活かして将来的に価格を引き下げる可能性も指摘されている。しかし、少なくとも初期の段階では製造コスト高騰の影響は避けられないとみられる。
スマートフォンの買い替えサイクルが長期化している現状において、この価格上昇は消費者の購買行動にさらなる影響を与える可能性がある。一方で、AI機能の強化など2nmプロセスによって実現する新機能が、消費者に十分な価値を提供できれば、価格上昇を受け入れる層も一定数存在するだろう。
Sources
- Weibo: 数码闲聊站