半導体の微細化競争は、次世代の「2nm(ナノメートル)」プロセスへと移行しつつある。業界の情報筋によれば、Samsung Foundryは2nmプロセス技術に大きく賭けており、2026年前半発売予定のGalaxy S26シリーズに業界初となる2nmチップを搭載する計画だ。これによりSamsungはAppleとQualcommに先行し、ハイエンドスマートフォン市場における技術的優位性を取り戻すチャンスを掴むかもしれないが、そのためには歩留まりの改善が鍵となりそうだ。
Samsung、2nmプロセス開発で前進か – Exynos 2600への期待
スマートフォンの頭脳であるSoC(System on a Chip)の性能を左右する半導体プロセス技術。現在、Appleの最新iPhone 16シリーズに搭載される「A18」チップや、SamsungのGalaxy S25シリーズに採用されているQualcomm製「Snapdragon 8 Elite」チップは、共に「3nm」プロセスで製造されている。
次の焦点となるのが、さらに微細化された「2nm」プロセスだ。これまでAppleがTSMCの最新プロセスをいち早く採用する傾向にあったが、状況が変化するかもしれない。
これまで先端半導体プロセス技術の開発で苦戦していたSamsungの半導体製造部門であるSamsung Foundryは、自社の2nmプロセス開発で大きな進展を見せているという。具体的には、2026年初頭に発表が見込まれる「Galaxy S26」シリーズ向けに、この2nmプロセスを用いた自社設計チップ「Exynos 2600」を搭載する計画が進められているようだ。
Samsungは過去、Exynosチップの性能や歩留まり(良品率)の問題から、Galaxy S25シリーズではQualcomm製チップに一本化している。しかし、この2nmプロセスでの開発が順調に進めば、Exynosブランドが最先端プロセスを引っ提げて復活する可能性がある。
最近の報道では、Exynos 2600の試作チップはSamsungの2nm GAA(Gate-All-Around)プロセスで製造され、その試作段階での歩留まりは30%に達したと伝えられてた。GAAは、従来のFinFET構造に代わる新しいトランジスタ構造で、さらなる性能向上と消費電力削減が期待される技術である。この試作は2024年5月に開始されたとされ、量産に向けて歩留まりを改善するための時間的な猶予が生まれているとの見方もある。Exynos 2600がGalaxy S26に搭載されるためには、2025年第3四半期までにチップ設計を完了させる必要があるとされる。
ライバルAppleとTSMCの動向 – 盤石な体制と実績
一方で、Appleとその主要サプライヤーであるTSMCも2nmプロセスへの移行を着実に進めている。著名アナリストのMing-Chi Kuo氏によると、Appleは2026年後半に発売する「iPhone 18」シリーズで、TSMC製の2nmチップを採用する計画であるという。
TSMCの2nmプロセスの試作歩留まりは、すでに60%を超えていると報じられている。Kuo氏はこの数字が3ヶ月前の情報である可能性を指摘しており、現在ではさらに改善している可能性が高い。TSMCは2025年末までに月産5万枚の2nmウェハー生産能力を持つ可能性があるとされ、量産体制においてもSamsungに対して優位性を持つと見られている。
つまり、SamsungがExynos 2600を計画通り2026年初頭に市場投入できれば、Apple/TSMC連合に対して半年以上のリードを奪う可能性がある。しかし、それはあくまで「市場投入時期」の話であり、歩留まりや生産能力、そして実際のチップ性能においてTSMCを凌駕できるかは未知数だ。
Qualcommも2nm競争に参入 – TSMCとの連携か
スマートフォン向けチップ市場のもう一つの巨人であるQualcommも、2nmプロセスチップの開発を進めている。リーカーのデジタルチャットステーション氏によると、Qualcommは次世代フラッグシップチップ「Snapdragon 8 Elite Gen 3」(仮称)の開発に着手しており、製造はTSMCの2nmプロセスを利用する見込みだという。
このチップも2026年に登場すると予想されているが、SamsungのExynos 2600とどちらが先に市場に出るかは現時点では不明だ。もしQualcommもTSMCの2nmプロセスを利用する場合、TSMCの量産スケジュールを考慮すると、Samsungが先行する可能性も考えられる。仮にSamsungが自社製Exynos 2600の2nmでの量産に失敗した場合、Galaxy S26シリーズにはこのQualcomm製2nmチップが採用される可能性が高いだろう。
過去の教訓と克服すべき課題 – 3nmの再現は避けられるか
Samsungが2nmプロセスで先行する可能性もありそうだが、楽観視は出来ないだろう。同社は2022年に世界で初めて3nm GAAプロセスの量産開始を発表し、TSMCに対して先行したかに見えた。しかし、実際には歩留まりの問題に苦しみ、主要顧客を獲得できず、TSMCに大きく差をつけられる結果となった。
今回の2nmプロセス開発においても、試作歩留まり30%という数字は、量産に必要な最低ラインとされる70%にはまだ遠い。このギャップを埋め、安定した量産体制を確立できるかが、Samsungの「挽回」シナリオの成否を分ける最大の鍵となる。
さらに、Samsungがファウンドリ事業への投資を2025年に半減させ、約5兆ウォン(約5,000億円)にとどめる可能性があるという韓国メディアの報道や、Exynosチップの製造をTSMCに委託する可能性を示唆するリーカー情報もある。これらの情報が事実であれば、Samsung自身の2nmプロセス開発・量産計画に影響を与える可能性も否定できない。
Samsungにとって、2nmプロセスでの成功は、ファウンドリ事業の信頼回復と市場シェア奪還に向けた重要な試金石となる。過去の3nmでの苦い経験を乗り越え、技術的な課題と量産のハードルをクリアし、Exynos 2600を計画通り市場に投入できるか。今後の動向が注目される。
Meta Desctiption
Samsungが次期Exynos 2600でAppleに先駆け2nmチップ搭載スマホを2026年初頭に投入する可能性が浮上。歩留まり向上が鍵となるが、TSMCやQualcommとの競争は激化。最新半導体プロセス競争の動向を解説。