水中では、水による光の吸収・散乱で太陽エネルギーが急速に減衰し、とくに赤外光が浅い場所で失われるため、太陽光スペクトルは青緑色域に偏る。
この制約に対し、太陽電池の曲率という幾何学的なアプローチから活路を見出す理論と実証が提示された。米国海軍研究所電子科学技術部門のチームが構築した理論モデルによると、機器の占有面積を基準に評価した最適曲面構造のアモルファスシリコン(a-Si)太陽電池は、水深2 mにおいて最大59.7%の変換効率に達した。さらに、南太平洋の水の光学特性を用いた水深2~50 mの計算モデルでは、最適化した曲面太陽電池の日積算発電量が、従来の平面型に比べて9.4~15.9%高くなる結果が示されている。平面で受光するという前提を排し、曲面化によって得られる光学的利得を定量化した点に本研究の核がある。
青緑色に偏る水中光と散乱光を取り込む幾何学的構造
水中特有の光減衰特性と、効率という指標の定義を確認する。
水は光を吸収・散乱し、とりわけ赤外光は浅い場所で急速に減衰する。その結果、水中に届く太陽光スペクトルは青緑色域へと偏る。ここで留意すべきは、水中太陽電池の変換効率の算出基準である。この変換効率は地表面の全日射を分母とする指標ではなく、その深さでセルに入射する光パワーに対する出力パワーの比として定義される。
曲面構造は、同じ機器投影面積に収める条件で受光量を増やす。研究チームの説明によると、曲率の大きいセルは透過光に加えて周囲からの散乱光も取り込むため、平面型より多くの光を受けられる。
この幾何学的アプローチの妥当性は、実験室レベルでも裏付けられた。水深0.1 mの環境下で50 mm角のa-Siセルを用いた屋内試験を実施したところ、曲率が最大で水中機器の外面に密着したセルが最も高い出力を記録した。これは研究チームが構築した光学モデルの予測傾向と合致する挙動である。
4種の市販セル試験と水深20 cm・水深1 mで分かれた特性
理論の確認に続き、研究チームは素材ごとの実力差を浮き彫りにする実証試験を展開した。実験の場となったのは、塩分3.5%の人工海水を入れた10 m³のプールである。比較対象として選ばれたのは、市販されている結晶シリコン、CIGS、CdTe、そしてa-Siの4種類である。
封止が必要な結晶シリコンとa-Siには、400~1100 nmの波長帯で透過率91%超のポリメタクリル酸メチル(PMMA)容器が用いられた。容器による日射減衰は10%未満で、研究チームはこの透過損失をスペクトルと性能の計算で補正した。
屋外環境で取得された実測データは、水中における光の厳しさを物語る。太陽光がピークを迎える11時30分から12時30分の測定において、日射強度は水面における717.81 W/m²から、わずか水深10 cmの地点で395.20 W/m²へと44.9%低下した。水による吸収だけでなく、水面での反射によって可視光にも計算以上の損失が生じた結果である。
急激に光が絞られる中で行われた屋外試験では、各セルの受光特性に応じた明瞭な分岐が現れた。水深20 cmの測定点において、結晶シリコン、CIGS、CdTeの効率はそれぞれ20.6%、24.3%、35.9%で最大となった。対照的だったのがa-Siである。a-Siの効率は水深20 cmにとどまらず、水深1 mまで上昇を続け、試験の測定範囲内では最適深度に達しなかった。
水深10 cmの人工海水で12時から17時まで行った屋外試験では、曲面セルの開放電圧は一貫して平面セルを上回った。
小型水中機の航行実証とモーター直接駆動の限界深度
曲面化がもたらす電力利得は、実際の水中機器の運用にどのような差を生むのか。研究チームは、小型UUV用リチウム電池の充電試験と、満充電後の連続水中航行試験を行った。
UUV用の7100 mWhリチウム電池に曲面CIGSセルを接続した充電試験では、純水の水面において満充電まで3時間を要した。従来の平面セルと比較して充電時間は35.7%短かった。そして同じUUVの試験では、満充電した7100 mWhリチウム電池により、2時間を超える連続水中航行が可能だった。
一方で、バッテリーを介さずに太陽電池の出力だけで6 Vモーターを直接駆動させる計算では、水質と深度による厳しい制約が浮き彫りとなった。水域の透明度によって直接駆動が成立する限界深度は劇的に変化する。
| 水質環境 | 平面CIGSセルの限界深度 | 曲面CIGSセルの限界深度 |
|---|---|---|
| 純水 | 1.0 m | 4.6 m |
| 清浄海水 | 0.9 m | 4.1 m |
| 湖水 | 0.5 m | 1.11 m |
表が示す通り、純水では平面セルの1.0 mから曲面セルで4.6 mへ、清浄海水では0.9 mから4.1 mへと限界深度が深くなる。しかし、湖水環境では平面セルが0.5 m、曲面セルであっても1.11 mにとどまる。この計算では、6 Vモーターを直接駆動できる限界深度が水質によって異なった。
純水中で行われた屋外試験では、平面型と曲面型のa-Siセルはいずれも水深1 mまでLEDビーコンを直接点灯できた。
GaInP先行研究の高効率と航空宇宙向け製造のコスト課題
今回の研究に先立ち、GaInPセルを用いた水中太陽光利用の研究が報告されている。
米国海軍研究所が2012年に公表した予備結果では、GaInPセルは最大水深9.1 mで面積1 m²当たり7 Wを出力した。さらに先行研究は、キーウェスト沖の比較的透明な海水を模擬した水深2~9 mの光条件で、RHJ-GaInPセルの効率が全域で51%を超え、水深8 mで約54%に達したと報告している。
しかし、材料の物理特性が優れていることと、普及可能な技術であるかは別問題である。先行研究のGaInPセルは航空宇宙向けの専門的かつ少量の製造に依存するため高価であり、CdTe並みの費用にするには量産化と基板費低減が必要とされていた。
今回の研究は市販のa-SiやCIGSなどを評価し、曲面構造による受光量の向上を検討した。一方、先行研究のGaInPセルには製造コストの課題が報告されている。
水質による光量急減と擬似光源評価・実海域環境の制約
今回のモデルが示した数値や試験結果を現場の運用に落とし込むには、幾つかの前提条件と限界を見極める必要がある。
第一に、環境による光減衰の格差である。海水や湖水による可視光の吸収量は、塩分濃度と有機物濃度によって変わる。研究チームの水域別モデルによると、水深2 mにおいて純水・清浄海水の理論出力は約40%減るのに対し、濁った海水・湖水では最大70%減る。
この差は潜航深度が増すにつれて決定的な断絶を生む。同モデルにおいて、選定した濁水・湖水の例では水深5 mを超えると有用な電力を得られない。一方、清浄海水であれば水深40~50 mでも利用可能な電力が残る。
第二に、評価手法に付随する不確実性である。高効率約54%を報告した先行研究の水深2~9 mの比較は、実際にセルを水没させた試験ではなく、室温の空気中でLEDにより水中スペクトルを再現した測定だった。さらに先行研究は、水深9 m条件の基準セル補正が最大約25分の1と認証効率測定には大きすぎる可能性を認め、結果を合理的な効率推定値と位置付けている。擬似光源による推定値と実水域での挙動の間には、慎重な検証を要する余地が残されている。
そして第三に、実海域での長期運用に伴う物理的障壁である。実海域での長期運用には、腐食、高水圧、海流との相互作用、付着生物による透過光低下が課題となる。
曲面化が示した水深2 mでの最大効率59.7%や、平面型に対する9.4~15.9%の日積算発電量増加は、理論モデル上の結果である。実用化には、腐食、高水圧、海流との相互作用、付着生物による透過光低下といった長期運用上の課題を検証する必要がある。



