米Deployable Energyは10月7日、運搬可能な小型原子炉「Unity Nuclear Battery」が、2027年にアイダホ国立研究所(INL)の試験施設DOMEで全出力実証を行う対象に選ばれたと発表した。電気出力1MWを目指すUnityは、6月に核分裂の連鎖反応が持続する「臨界」に達している。次の試験では出力を上げ、工場で燃料を入れた原子炉の輸送や、運転後の再配置まで確かめる計画だ。産業施設や遠隔地へ継続的に電気を届けるには、小さな炉心に加え、熱を逃がし、燃料を扱う一連の工程も成立させる必要がある。
ゼロ出力の臨界から、発電する原子炉へ
Unityが臨界に達したのは2026年6月30日だ。米エネルギー省(DOE)は翌7月1日、燃料を用いたゼロ出力の臨界実証を完了したと発表した。Deployable Energyによれば、INLとのプロジェクト開始から約150日で到達したという。この日数が示すのは臨界実証までの速さであり、電気を供給する商用原子炉を完成させた期間ではない。
ゼロ出力での臨界試験は、発電に使うほどの熱を生じさせずに、炉心で核分裂の連鎖反応を維持できるか確認する段階である。国立原子炉革新センター(NRIC)の3月の説明資料では、Unityの水槽を用いたゼロ出力試験は、中性子の挙動を計算したモデルを検証し、低濃縮燃料と水による減速を組み合わせた炉心設計を確認するためのものとされていた。2027年の全出力試験は、そこから実際の熱の取り出し方や、設備を組み合わせた運転へ進む。
今回の発表を、初の臨界達成や商用運転の開始と取り違えると、開発がどこまで進んだか見えなくなる。確認できる節目は次のとおりだ。
| 時点 | 出来事 | 開発上の位置付け |
|---|---|---|
| 2026年6月30日 | Unityがゼロ出力で臨界を達成 | 炉心の核分裂連鎖反応を確認 |
| 2026年9月30日 | INLがDOMEへの選定を発表 | 2027年の全出力試験に向けた枠を確保 |
| 2026年10月7日 | Deployable Energyが選定と試験工程を発表 | 輸送・再配置を含む実証計画を提示 |
| 2027年 | DOMEで全出力試験を行う計画 | 出力を上げた運転と設備全体の性能を検証予定 |
9月30日のINL発表と10月7日の企業発表は、同じ試験への選定を伝えている。達成済みの臨界と、これから行う全出力試験を分けて読む必要がある。
濃縮度4.95%と、水・ヘリウムの役割分担
Unityの「核電池」は、核分裂で熱を生み、その熱から電気を取り出す小型原子炉を指す。Deployable Energyが公表する燃料は、ウラン235の濃縮度が4.95%の二酸化ウランだ。NRCもUnityを、通常の低濃縮ウラン燃料を使う電気出力1MWのガス冷却型マイクロリアクターとして説明している。
炉内では軽水、つまり通常の水を「減速材」に使う。核分裂で生まれた中性子を遅くし、次の核分裂を起こしやすくする役目だ。熱を運び出す冷却材にはヘリウムを使う。水とヘリウムは、同じ仕事を分担するのではなく、連鎖反応を維持する役目と熱を取り除く役目をそれぞれ担う。NRCの説明では、運転中のヘリウム一次冷却系は能動的に冷却する方式とされている。
4.95%という濃縮度には、燃料供給の面で意味がある。DOEの説明によれば、既存の商用炉で使う燃料はウラン235を最大5%まで濃縮したものだ。一方、多くの新型炉が必要とする高濃度低濃縮ウラン(HALEU)は、5%を超え20%未満に濃縮する。濃縮度を高めれば、炉を小さくしたり、燃料交換までの期間を延ばしたりしやすくなるが、その燃料を供給する体制も整えなければならない。
Unityは、この濃縮区分の面では既存の商用炉に近い選択をしている。HALEUの量産拡大に依存せずに小型炉を実現しようとする設計と読める。ただし、同じ濃縮度でも燃料の形や使い方は炉ごとに異なる。Unity用燃料の製造や、燃料として使えることの確認まで自動的に済むわけではなく、低濃縮燃料の採用と原子炉全体の実用化は別の課題である。
電気1MWの裏で、2MWの熱をどう扱うか
NRICが2026年3月に示した設計値では、Unityは熱出力3MWに対して電気出力1MWで、差し引き2MWの熱を電力以外の形で扱う必要がある。資料の「3MWth」と「1MWe」を同じMWにそろえ、定常運転を想定して3−1=2MWと差し引いた概算だ。2027年の試験で測った出力や効率を示す数字ではない。
電気出力は発電する電力の大きさ、熱出力は核分裂で生み出す熱の大きさを表す。熱を電気へ変える際、そのすべてが電力になるわけではない。Unityの設計値に沿って考えるなら、発電に加えて相当量の熱を使うか、周囲へ逃がす仕組みが必要になる。炉心を小さくできても、現地で熱を処理する設備まで省けるとは限らない。
Deployable Energyは、熱を液体で冷却する方法、空気で冷却する方法、施設の冷却に熱を利用する方法を示している。陸上や洋上、遠隔地の条件に応じて、熱を逃がす方法を選ぶ構想だ。したがって、1MWの電源を運ぶ計画を評価するときは、原子炉の外側でどのように熱を扱うかも見る必要がある。差し引き2MWをすべて有効利用できることや、必要な設備の寸法は、この設計値からは分からない。
この熱の処理まで含めて運転を確かめることで、Unityは炉心の実証から、現場で使える電源の実証へ近づく。
工場で燃料を入れ、運転後にもう一度動かす
2027年の実証でDeployable Energyが予定するのは、工場で原子炉に燃料を入れ、その状態で輸送することから始まる工程だ。DOMEに設置して全出力運転を行った後、原子炉をINL内の別の場所へ再配置し、燃料の処置まで進める。同社は、この一連の試験から製造と輸送、運転を繰り返せるようにするためのデータを得るとしている。
工場で燃料を入れる方式なら、利用する現場へ届ける前に、原子炉の準備を工場側へ集められる。標準化した機器を各地へ送り出す構想とも整合する。しかし、運転前の原子炉を運べることと、運転した原子炉を再び動かせることは同じ実証ではない。今回はその両方を試験計画に入れ、届けた後の工程も確かめようとしている。
再配置先は、あくまでINLの敷地内だ。実証の成功によって、どの土地にも自由に移設できる状態になるとまでは言えない。また、発表にある「燃料の処置」は、使用済み燃料の永久処分問題を解決したという意味ではない。燃料を装荷して運転し、試験後にどう扱うかまで、一つの原子炉システムとして検証する計画である。
企業の技術説明には、5年ごとの燃料交換と、敷地外の施設で廃棄物を集中的に扱う方針もある。これは、現場で燃料や廃棄物を扱う負担を減らそうとする設計上の狙いだ。5年間の全出力運転を実証済みという意味でも、5年間保守が要らないという約束でもない。長く電力を供給する仕組みには、運び込む工程に加え、運転後の機器と燃料を扱う工程も必要になる。
DOMEで縮める開発工程と、商用化への条件
DOMEは、かつての実験用増殖炉EBR-IIの格納構造物を転用した、燃料入りの小型原子炉を試験する施設である。INLによれば2026年4月に開設され、熱出力で最大20MWまでの実験を収容できる。Unityの電気出力1MWとは、数字の対象も単位も違う。国立研究所にある設備を順番に使うことで、事業者は実証のためだけの原子力施設を一から造る負担を減らせる。
試験費用はDeployable Energy自身が負担する。7月の募集から競争選定されたが、試験枠を維持するには、技術の準備状況や燃料の確保、規制上の準備に関する節目を満たさなければならない。設備が使える見通しを得ても、原子炉を試験に持ち込める状態へ仕上げる責任は残る。
NRICの募集案内は、現在DOMEがRadiantのKaleidos実証炉を受け入れており、次の利用可能な枠は2027年7月からとしている。UnityはRadiantに続く試験対象だが、利用枠の案内からUnityの運転開始月まで確定することはできない。共用施設での試験は、各社の技術準備と設備の予定を合わせて進めることになる。
商用化への許認可も、全出力試験への選定とは別に進む。2026年10月8日時点で、NRCはUnityの立地・建設・運転に関する活動を「申請前の協議」として案内している。Deployable EnergyはNRCが実証の観察を続けると説明するが、その参加自体が商用運転の許可を意味するわけではない。
2027年の試験で問われるのは、設計どおりの出力を得ながら熱を処理し、燃料入りの輸送から運転後の再配置までを実行できるかだ。そのデータを製造と運転の標準化、商用化に向けた審査へつなげられれば、遠隔地や産業施設は、工場で造った原子炉を継続的な電源として使うための判断材料を得られる。



