Googleは2026年10月28日のAndroid Dev Summitで、Android Studio Rabbit 2の安定版を発表した。Claude AgentやCodex、Antigravityなど、40以上のACP対応AIエージェントを開発環境から選べるようになる。9月時点ではCanary版でのプレビューに限られていた外部AIエージェントとの連携が、安定版の開発環境でも利用できるようになった。

同時にGoogleは、アプリの実行時にAIがさまざまな機能を呼び出せるようにする新たなAPI群も発表した。これには端末内AIを活用する仕組みも含まれるが、一部のAPIはまだアルファ版の段階にある。開発者がコードを書くためにAIエージェントを利用することと、完成したアプリの機能をAIから操作できるようにすることは別の話だ。今回の発表を理解するには、それぞれの仕組みが担う役割と、提供段階の違いを押さえる必要がある。

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Canaryから安定版へ、AIエージェントがAndroidの開発ツールを利用可能に

Android Studioで外部のAIエージェントを利用する「Bring Your Own Agent(BYOA)」は、9月24日の発表時点ではCanary版でのプレビュー機能だった。9月の公式ブログと10月28日の発表を比較すると、今回の変更は外部AIとの連携を新たに導入したものではなく、その機能を安定版のAndroid Studioへ拡大したものといえる。

この連携を支えるのが、AIエージェントと開発環境を接続する「Agent Client Protocol(ACP)」だ。Android StudioはACPを通じて、プロジェクトの構造やビルド設定、Androidのプラットフォーム情報をエージェントが参照できるようにする。さらに、診断機能やJetpack Composeのプレビュー、SDKやエミュレータの操作とも連携できるため、AIによるコードの作成からAndroid環境での動作確認まで、一連の開発作業を進めやすくなる。

ただし、Android Studioから利用できるからといって、すべてのAIエージェントが無料になるわけではない。9月の発表では、利用者が各エージェントのサービスに対応するプランでログインする仕組みが説明されている。料金や利用制限などは、それぞれのエージェント提供元が定める条件に従う。

コマンドラインからAndroidアプリを開発するための「Android CLI」にも、動作確認を支援する機能が追加される。Firebaseを利用した実機のリモート操作に加え、Jetpack Composeで作成した画面をプレビューできるようになった。Googleによると、このプレビューではエミュレータを起動したり、APKを展開したりせずに画面を確認できる。

性能分析ではPerfettoとの連携により、アプリの起動遅延や描画の引っかかり、バックグラウンドからの起動などを診断できる。Claude CodeとCodex向けの公式プラグインも用意された。これにより、Android Studioを中心に開発する場合だけでなく、コマンドラインからAIエージェントを操作する場合にも、Android固有の開発情報やツールを利用しやすくなる。

開発時のAI連携と、アプリ実行時のAI連携は何が違うのか

Googleは今回、アプリの機能をAIエージェントから呼び出せるようにする「AppFunctions」のベータ版も発表した。これは、アプリが備える機能を端末内やシステムのAIエージェントに公開するための共通インターフェースで、Android MCPを通じた連携に対応する。開発中のAIエージェントとIDEを接続するACPに対し、こちらはアプリの実行時にAIが機能を利用するための仕組みだ。

つまり、ACPは主にAIによるアプリ開発を支援し、Android MCPとAppFunctionsはアプリの機能をAIから利用できるようにする。 接続する対象も用途も異なり、Android Studioの安定版対応と、アプリ向けAPIの提供段階を同一視することはできない。

10月28日に発表された主要な機能を、利用する場面と役割に応じて整理すると次のようになる。提供段階はGoogleの当日の発表に基づき、BYOAについては9月24日時点の説明、ML Kitについては開発者向け仕様も踏まえている。

項目 用途・役割 接続方式・実行の仕組み 提供段階
Android Studio Rabbit 2 / BYOA 開発中に外部AIエージェントを利用し、Android固有の情報やツールを使う ACPでIDEと開発エージェントを接続 Rabbit 2は安定版。BYOAは9月時点ではCanary版プレビュー
AppFunctions アプリの機能を端末内・システムのAIエージェントに公開 Android MCPを通じた機能呼び出し ベータ版
ML Kit Agentic API アプリ内でのツール実行、履歴管理、反復処理を支援 Gemini Nano 4とAgentRunnerを使用。AppFunctionsで公開された機能の発見・実行にも対応 アルファ版
A2UI for Jetpack Compose アプリ固有のUI部品を使って対話型の画面を表示 AIとの接続ではなく、UIの表示を担当 アルファ版
Connected Apps Platform / Google Connected Console GeminiやGoogle Searchとの連携に向けた試作・登録 Android MCPまたはremote MCPを使用。Geminiの開発モードで試作し、Consoleで登録 プレビュー

なお、AppFunctionsの「ベータ版」は10月28日の発表における位置づけであり、関連するJetpackの個別パッケージがすべてベータ版になったことを意味するものではない。

これらの機能は、同じAIエージェント関連の技術でも担当する処理が異なる。例えば「A2UI for Jetpack Compose」は、アプリ固有のUI部品を組み合わせて対話型の画面を表示するための仕組みだ。AppFunctionsがAIに利用を許可するアプリ機能を扱うのに対し、A2UIはその操作に関連する画面表示を担う。機能の呼び出しとUIの生成・表示を区別して理解する必要がある。

また、「Connected Apps Platform」は、アプリをGeminiやGoogle Searchと連携させるための仕組みだ。Android MCPまたはremote MCPを利用し、Geminiの開発モードで動作を試した後、プレビュー段階の「Google Connected Console」から本番環境向けに登録する流れが示されている。ただし、今回の発表だけでは、日本国内での提供状況や一般向けの開放時期まで確定したとはいえない。

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端末内AIは、どこまでオフラインで動作するのか

Googleがアルファ版として発表した「ML Kit Agentic API」は、Gemini Nano 4を利用し、アプリ内での関数実行や会話履歴の管理、AIエージェントの反復処理を支援するものだ。中核となる「AgentRunner」は、モデルを呼び出すGenerativeModelの上位で動作する。ML Kitの開発者向け仕様によると、入力や取得した情報を基にモデルが推論し、型付きのKotlinツールを実行して結果を評価するという一連の処理を、終了条件に達するまで繰り返す。

通常、AIモデルを直接呼び出してこうした処理を実装する場合、開発者は会話履歴の保持やツールの呼び出し、実行結果をモデルへ返す処理などを自分で管理する必要がある。AgentRunnerは、こうした処理の反復と履歴管理を担う仕組みを備えている。AppFunctionsを通じて公開されたアプリ機能を発見・実行し、その戻り値をモデルへ渡すことも可能だ。これにより、単に文章を生成するだけでなく、実際に機能を実行し、その結果を踏まえて次の操作を判断するAIエージェントを構築できる。

ただし、ここで注意したいのは「端末内で動作する」という説明の範囲だ。端末内で処理されるのは、AIモデルによる推論や実行計画の生成であり、呼び出されるツールまですべてオフラインで動くとは限らない。Googleはプロンプトが端末内にとどまると説明する一方、開発者が実装する個々のツールはネットワーク通信やクラウドAPIを利用する可能性があるとしている。

したがって、AIモデルの推論が端末内で完結していても、エージェント全体が外部と通信しないとは限らない。 アプリに組み込む際には、AIから呼び出せるツールの種類だけでなく、それぞれがどの情報を扱い、どこへ通信するのかを確認する必要がある。端末内AIという特徴だけを根拠に、すべての処理がオフラインで完結すると判断することはできない。

AgentRunnerには、エージェントの処理が際限なく続くことを防ぐため、反復回数の上限を設定する機能も備わる。「maxTurns」の既定値は10だ。ただし、これは処理の反復回数を制限するものであり、AIの判断やツール実行の安全性を保証するものではない。モデルが呼び出すツールを間違えたり、不適切な引数を渡したりする可能性もあるため、実行結果の妥当性や安全性を検証する責任は開発者側に残る。

また、ML Kit Agentic APIは現時点でアルファ版であり、SLA(サービス品質保証)や廃止ポリシーの対象外となっている。今後、後方互換性を維持しない変更が加えられる可能性もある。導入に当たっては、APIが正常に動作することを確認するだけでなく、誤ったツール実行への対処や、仕様変更に対応できる設計も検討する必要がある。

安定版IDEとアルファ版APIは分けて導入を判断する必要がある

Android Studio Rabbit 2の安定版公開により、開発者は使い慣れたIDEから外部AIエージェントを利用しやすくなった。導入を検討する際には、エージェントが既存のプロジェクト構造やビルド設定を適切に理解できるか、Android固有の診断機能やプレビューを利用してコードの変更を検証できるかが重要になる。各エージェントの料金体系や利用条件も比較する必要がある。

一方、AppFunctionsやML Kit Agentic APIを使ってアプリの機能をAIに公開する場合は、異なる観点での評価が求められる。どの機能を呼び出せるようにするかを定め、その実行に伴う通信やデータの取り扱いを確認しなければならない。反復回数を制限しても、ツールの選択や引数の誤りによる不適切な操作を防げるわけではないため、実行結果の検証や異常時の対処も必要だ。アルファ版APIについては、将来的な仕様変更への対応も考慮する必要がある。

今回の発表は、Android開発にAIエージェントを取り入れるための環境整備が進んでいることを示すものだ。ただし、安定版となった開発環境と、まだアルファ版のアプリ向けAPIを一括して「エージェント対応」と捉えるのは適切ではない。Rabbit 2で開発エージェントを利用するために、Agentic APIまでアプリへ組み込む必要はない。開発支援とアプリ実行時のAI連携を別々に評価することで、それぞれの成熟度やリスクに応じた導入を進められる。