Samsung Electronicsは2026年10月29日、7〜9月期の確定決算を発表した。同社の公式発表によると、連結営業利益は107.4兆ウォン(約12.5兆円)に達し、世界のテクノロジー企業として初めて四半期営業利益が100兆ウォンを超えたという。ただし、今回の決算で注目すべきなのは、利益の大きさだけではない。全社営業利益の99.2%、設備投資の93.8%が半導体事業を担うDS(Device Solutions)部門に集中している。記録的な利益を生み出した一方、全社の業績がメモリ市況に大きく左右される構造になっていると筆者はみる。以下では、公式決算の数値から利益と投資の集中度を検証し、この構造がリスクとなる条件を考える。

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営業利益107.4兆ウォン、前期比20%増で前年同期の8.8倍

Samsung Electronicsの2026年7〜9月期の連結売上高は195.3兆ウォンで、前期比14%増となり、四半期として過去最高を更新した。営業利益は107.4兆ウォンとなり、4〜6月期の89.49兆ウォンから約20%増加した。前年同期の12.17兆ウォンと比較すると約8.8倍に当たり、急激な利益拡大が続いている。今回の確定値は、10月8日に発表された速報値の約107.4兆ウォンと同水準だ。共同通信は、速報段階でこの営業利益を約13兆円と報じている。

事業部門別にみると、好不調の差は極めて大きい。半導体事業を担うDS部門は、売上高147.1兆ウォン、営業利益106.5兆ウォンを記録した。特にメモリ事業は売上高と営業利益の両方で四半期の過去最高を更新し、全社の利益拡大を牽引している。一方、スマートフォンや家電などを扱うDX(Device eXperience)部門は、売上高こそ前期比8%増加したものの、営業損益は0.8兆ウォンの赤字だった。

DX部門の内訳では、スマートフォンを中心とするMX(Mobile eXperience)とネットワーク事業の合計売上高が37.7兆ウォンで、営業損益は0.6兆ウォンの赤字となった。テレビ事業のVD(Visual Display)と生活家電事業のDA(Digital Appliances)は、売上高13.9兆ウォンに対して0.2兆ウォンの営業赤字を計上している。一方、ディスプレイ子会社のSamsung Display(SDC)は売上高8.0兆ウォン、営業利益1.1兆ウォンと黒字を確保した。

同日の決算では、株主還元の方針も示された。Samsung Electronicsの発表によると、第3四半期の現金配当は普通株、優先株ともに1株当たり4,601ウォンで、総額は30兆ウォンに達する。2026年の株主還元総額は90兆〜110兆ウォンを見込んでおり、このうち35兆ウォンは実施済み、または実施が決定している。残る55兆〜75兆ウォンについては、現金配当に加えて大規模な自社株買いと消却を行う方針だ。最終的な還元額と具体的な実施計画は、2027年1月下旬の取締役会で決定する予定となっている。

全社利益の99.2%、設備投資の93.8%がDS部門に集中

今回の決算で最も特徴的なのは、半導体事業への利益と投資の集中だ。連結営業利益107.4兆ウォンのうち、DS部門が稼いだ106.5兆ウォンは全体の99.2%に相当する。さらに、四半期の設備投資29兆ウォンのうち27.2兆ウォンをDS部門が占め、その割合は93.8%に達した。DS部門の営業利益率も、売上高147.1兆ウォンに対して営業利益106.5兆ウォンという数字から、約72.4%と計算できる。

DS部門の営業利益を連結営業利益から差し引くと、残りはわずか0.9兆ウォンだ。これはDS以外の部門と連結調整などを合算した金額であり、Samsung Electronicsの利益が事実上、半導体事業に依存していることを示している。ただし、DS部門にはメモリ事業だけでなく、System LSIや半導体受託製造のファウンドリ事業も含まれる。メモリ事業単独の営業利益は開示されていないため、全社利益の99.2%をメモリだけが稼いだと解釈することはできない。また、設備投資の連結総額は29兆ウォンと丸めて公表されており、93.8%という比率も27.2兆ウォンを29兆ウォンで割った概算値である。

設備投資も、利益と同じく半導体事業に偏っている。7〜9月期の設備投資は前期から12.2兆ウォン増加し、前年同期比では19.8兆ウォンの増加となった。公式決算資料によると、2026年通期の設備投資は約84.4兆ウォンを見込んでおり、そのうちDS部門には76.8兆ウォンを投じる計画だ。これは全体の約91%に当たる。Samsungは、AIと高性能計算(HPC)向けの旺盛な需要に対応するため、新工場や関連インフラへの投資を進めると説明している。ただし、DS部門の設備投資にはファウンドリ事業なども含まれるため、設備投資の集中度がそのままメモリ市況への依存度を表すわけではない。

メモリ事業の利益が急増した背景には、供給能力の制約と価格上昇がある。Samsungによると、同社は生産能力が限られるなかでAI向け製品を優先するよう製品構成を調整し、サーバー向け需要の強さを背景に、幅広い用途でメモリの市場価格が上昇した。競合するSK hynixも10月28日の決算発表で、先端製造プロセスの技術的な難しさや新工場の建設に要する期間の長さから、供給が需要の伸びに追いついていないと説明している。両社の説明を踏まえると、生産能力の増強が実際の出荷増加につながるまでの間は、供給不足による価格上昇が利益を押し上げやすい状況にあると考えられる。

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供給不足は追い風だが、利益集中のリスクは消えない

この利益集中を必ずしも弱点と捉えるべきではない、という反論も成り立つ。Samsungは2027年についても、AIインフラへの投資拡大を背景に、メモリ需要が業界の供給能力を大きく上回り、2026年より需給の逼迫が強まると予想している。また、安定した販売基盤を確保するため、複数年にわたる供給契約の締結を進める方針だ。

SK hynixも、強い需要が続くとの見方を示している。同社は主要顧客14社と長期供給契約(LTA)を締結しており、契約済みの数量は2027〜2028年の生産能力の50%超に相当するという。さらに、先端工程の複雑さと工場建設の長期化を理由に、需要が供給を上回る状況は2030年まで続くと予想している。こうした見通しが正しければ、SamsungがDS部門に利益と投資を集中させていることは、成長市場への経営資源の配分として合理的だと考えられる。

ただし、需要が強いことと、利益集中によるリスクが小さいことは別の問題だ。今回の数字が示しているのは、DS部門の利益水準がSamsung Electronics全体の営業利益をほぼ決めているという事実である。メモリの価格上昇が続く間は大きな利益を生み出せる一方、需給が緩み、価格が下落に転じた場合には、その影響が全社業績に直接表れやすい。他の事業部門が十分な利益を確保できていない現状では、半導体事業の減益を相殺する余地が限られている。供給不足が続くという前提が崩れたとき、この構造が弱点になる可能性は残る。

もっとも、メモリメーカー各社も価格変動への対策を進めている。SK hynixの長期供給契約には、顧客と合意した価格帯の範囲内で市場環境を反映する仕組みが組み込まれている。同社は、これによって価格変動への柔軟性を保ちながら収益の安定化を図るとしている。一方、Morningstarが2026年7月に公表した分析では、価格帯を設定する長期契約の普及によって、メモリ価格の上昇余地が制限される可能性が指摘されていた。同社は2027〜2028年に生産能力の増強が進むと見込み、2029〜2030年にはメモリ市況が下降局面に入ると予想している。

Samsungも、価格変動に備えた契約条件の見直しを進めている。7月の決算説明会に関する第三者サイトの書き起こしによると、同社は汎用メモリ製品に最低価格を設定し、前受金を契約条件に含めるとともに、原則5年間の複数年契約を結んでいるという。ただし、最低価格の具体的な水準や、SK hynixと同様の価格帯方式を採用しているかどうかは明らかになっていない。長期契約によって販売数量や価格の見通しを立てやすくなるとしても、市況変動の影響を完全に取り除けるわけではない。

競合との比較でも、現在のメモリ市況がいかに高い利益率を生んでいるかが分かる。SK hynixの2026年7〜9月期の営業利益は83.3338兆ウォンで、前期比38%増加した。営業利益率は約80%に達しており、SamsungのDS部門の72.4%を上回る。ただし、SamsungのDS部門にはSystem LSIやファウンドリも含まれるのに対し、SK hynixはメモリを中心とする企業であるため、両者の営業利益率を同じ事業構成の指標として直接比較することはできない。なお、SK hynixはキオクシアへの投資で今年実現した利益の大半を、特別配当として株主に還元する方針も示している。

次に注目すべきは、2026年10〜12月期の確定決算だ。筆者は、全社営業利益に占めるDS部門の割合が今期の99.2%から95%未満に低下するかどうかを、利益集中の変化を測る一つの基準とする。ただし、比率の低下だけでは構造的な改善を意味しない。DX部門などの利益回復によってDS部門の構成比が下がるのであれば、収益源の分散が進んだと評価できる。一方、DS部門の減益によって比率が下がった場合は、むしろ半導体事業の収益悪化を示している可能性がある。

また、DS部門の営業利益が今期の106.5兆ウォンを下回るかどうかも確認したい。減益に転じれば、供給不足と価格上昇を背景とする利益拡大に変化が生じた可能性がある。ただし、その原因がメモリ価格なのか、出荷数量や製品構成、為替などの影響なのかは、追加の開示を確認する必要がある。2027年1月下旬の取締役会で決まる株主還元の最終額も、今後の利益や資金創出力に対する経営陣の見通しを読み解く材料となる。

Samsung Electronicsの記録的な好業績は、AI向けメモリ需要の拡大が半導体メーカーの収益を大きく押し上げていることを示している。しかし、営業利益のほぼすべてをDS部門が稼ぎ、設備投資も同部門に集中する現在の構造は、メモリ市況の変化に対して全社業績が敏感であることも意味する。今後はDS部門の利益水準だけでなく、DX部門などの収益改善が進むかどうかが、今回の好業績を持続可能な成長につなげられるかを判断する重要な指標となる。