米国のAptera Motorsは2026年8月27日、太陽電池を組み込んだ電気自動車の検証車が、固定したままの1日で4.2332kWhをバッテリーへ送ったとするTÜV Rheinlandの試験報告書を公開した。車載パネルの定格ではなく、変換損失を経た後の電力量を測った結果である。Apteraが掲げてきた1日4.0kWhという目標は超えたものの、「約42マイル(約68km)」は実際に走らせた距離ではない。発電システムの実測と、未検証の目標電費を使った航続距離の推定は分けて読む必要がある。

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4.2332kWhをバッテリー入口で測った

TÜV Rheinland Italiaは7月6~8日、カリフォルニア州カールズバッドにあるApteraの施設で3日間のオンサイト立会試験を行った。対象は「APTERA ATLAS 1」と呼ばれる検証車1台で、フードからリアハッチまでの4か所に7本の太陽電池ストリングを備える。各ストリングの合計定格出力は、Apteraの提供値で815.9Wpとされている。

測定にはTÜV Rheinlandの校正済み電力分析器と電圧・電流センサーを用い、7本のストリングと車両の高電圧ラインを同時に記録した。パネルが生んだ直流電力に加え、充電コントローラーを通ってバッテリーへ届いた電力も追える構成だ。1日目に各ストリングの合計と高電圧ラインを比べると、電子回路での変換損失は約9.6%だった。

バッテリー入口で測ったため、車載システムの実力に近い値が得られた。太陽電池の公称出力を足した値では、曲面への配置や車載電子回路による損失をつかめない。今回はパネルから充電制御、バッテリーまでを一つの発電システムとして測り、固定方位でも4.0kWhを超える電力量が実際に蓄電側へ届いた。

4.0kWhという基準は、Apteraが以前から掲げてきた好条件下での1日分の目標である。同社はこれに100Wh/マイルという目標電費を組み合わせ、「最大約40マイルの太陽光航続距離」と説明してきた。今回の試験は、その計算を構成する二つの数値のうち、発電量が4.0kWhへ届くかを車両システム全体で確かめたことになる。

報告書は、DCエネルギー測定の拡張不確かさを12時間積分、95%信頼水準で±1.3%と見積もった。測定器の誤差範囲が示されたことで、発電量の確認はメーカーの車載表示に依存していない。ただし、試験の合否判定は4.0kWhという依頼仕様に対するものであり、車両全体の性能認証とは役割が違う。

42マイルは実走値ではない

TÜV Rheinlandが実測したのは4233.2Whのバッテリー入力までで、約42マイルは100Wh/マイルというApteraの目標電費を当てはめた推定値だ。計算は4233.2Whを100Wh/マイルで割った42.332マイルであり、発表では約42マイルへ丸めている。試験報告書の契約範囲にも、車両を走らせて電費や航続距離を確かめる項目は入っていない。

車体に載せられる太陽電池の面積が限られる以上、長い距離を得るには発電量を増やす一方で、車両が1マイル進むために使う電力を抑えなければならない。したがって4.2332kWhの実測は太陽光システムを検証した成果だが、42マイルを確定させるには量産仕様車で100Wh/マイルを再現する必要がある。

同じ換算を2日目と3日目にも当てはめると、4402.6Whは44.026マイル、4754.2Whは47.542マイルになる。Apteraの発表が示す約44マイルと約47マイルも、実走結果ではなく同じ式から得た推定値だ。発電量の小数点以下までTÜV Rheinlandが測っていても、距離への換算精度が上がったわけではない。

Aptera自身も、100Wh/マイルを量産車で達成できない可能性を注意書きに挙げている。約42マイルという数字は、発電量と車両効率という二つの性能をつないだ値であり、今回第三者が測ったのは前者である。

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方位とハッチが変えた3日間の結果

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3日間は条件を意図的に変えており、同列の反復試験ではない。測定値を並べると、発電量が天候だけで決まらないことが分かる。

日付・条件 水平面日射量 バッテリー入力 100Wh/マイルでの推定距離
7月6日、ハッチ閉鎖・固定方位 5709Wh/㎡ 4233.2Wh 約42マイル
7月7日、ハッチ閉鎖・日中に方位変更 5779Wh/㎡ 4402.6Wh 約44マイル
7月8日、ハッチ開放・方位変更 5446Wh/㎡ 4754.2Wh 約47マイル

3日目は水平面日射量が最も少なかった一方、バッテリー入力は最大となった。リアハッチを開いて太陽へ向け、車両の方位も変えた効果が、日射量の差を上回ったと考えられる。ただし、ハッチを開けて向きを調整し続ける条件は、車を朝から夕方まで普通に駐車する使い方とは異なる。

2日目は日射量も3日間で最も多く、方位変更だけの効果を1日目との差から切り出すことはできない。3日目もハッチの角度と方位を同時に変えているため、どちらが発電量をどれだけ押し上げたかは未分離である。3条件は利用場面の違いを示す一方、各操作の寄与を比較する対照試験としては設計されていない。

さらに、報告書が対象にしたのはAptera側が選んだ単一の検証車である。TÜV Rheinlandは測定機器のDCエネルギー測定について、12時間積分、95%信頼水準で±1.3%の拡張不確かさを示したものの、この1台が量産ロットを代表するとは保証していない。契約もオンサイト立会サービスであり、車両や部品、規制適合を認証する試験ではなかった。

南カリフォルニアの晴れた7月という条件も効いている。影、気温、駐車方位に加え、地域や季節が変われば日射量は動くため、3日分の最大級の結果を年間の日常利用へそのまま広げることはできない。実用性を判断するには、地域・季節別の発電量と量産車の実走電費を組み合わせたデータが要る。

4.2332kWhの先にある量産資金

Apteraは技術検証と並行し、8月4日に最初の生産車40台向けとなるボディとシャシーを発注した。約5万人の予約者を抱えると説明しているが、予約は確定注文を意味せず、顧客への納車実績を示す数字でもない。

ボディとシャシーの発注は、生産仕様を持つ車両へ移るための具体的な一歩である。それでも40台分の部品を注文した事実は、完成車40台が組み上がったことや、顧客へ納車できる状態になったことを示さない。今回測った検証車から量産車へ設計が変われば、太陽光パネルの出力と車両電費の双方を改めて確かめる必要も生じる。

資金面の隔たりは大きい。6月30日時点の現金・現金同等物は1010万ドルで、同社は初期の低量産を始めるまでに追加で4000万4500万ドルが必要だと見積もっている。今回の4.2332kWhは、太陽光発電システムが狙った性能へ届いたという技術上の前進である。一方、量産車が同じ発電量と100Wh/マイルの電費を両立できるかは、資金調達を経て生産仕様車がそろってから確かめる課題になる。

Apteraが掲げる「日々の移動を太陽光で賄う」という構想は、発電量の側で一つの基準を越えた。次の判定材料は、異なる季節と地域でも再現できる発電量、量産車の実走電費、そして最初の40台を完成させる資金の三つである。これらがそろえば、42マイルは計算上の換算値から、利用者が期待できる日々の走行距離へ近づく。