中国のDRAMメーカーCXMT(長鑫科技)が2026年10月30日に発表した7〜9月期決算では、売上高が前期比19.30%増の1187.14億元、粗利益率が89.53%に達した。一方、親会社株主に帰属する純利益は544.35億元と、前期比3.01%の増加にとどまった。しかし、少数株主に帰属する分を含めた連結純利益は19.38%増加しており、売上高とほぼ同じペースで成長している。この差を理解する鍵となるのが、子会社の利益のうち、親会社以外の株主に帰属する割合の変化だ。
連結純利益は19%増、親会社帰属分は3%増
CXMTの2026年第3四半期報告書によると、7〜9月期の売上高は前年同期比613.18%増の1187.14億元となり、粗利益率は前期から1.94ポイント上昇した。同社は業績拡大の要因として、世界的なDRAMの需給逼迫に伴う販売価格の上昇と、生産規模の拡大による単位コストの低下を挙げている。粗利益率89.53%という数字は、Micronが発表した2026年度第4四半期(9月3日終了)のGAAP粗利益率86.8%を約2.7ポイント上回る。ただし、両社では決算期末や会計基準が異なるうえ、粗利益率は研究開発費や税金などを差し引く前の指標であり、この数字だけで最終的な収益力を比較することはできない。
今回の決算で注目すべきなのは、連結純利益と親会社株主に帰属する純利益の伸びに大きな開きがあることだ。7〜9月期の連結純利益は前期比19.38%増の889.83億元だったのに対し、親会社帰属分は同3.01%増の544.35億元にとどまった。両者の差額である345.48億元が少数株主に帰属する利益に相当し、連結純利益全体の約39%を占めている。
売上高に対する利益の割合で比較すると、この違いがより明確になる。連結純利益率は4〜6月期の約74.9%から7〜9月期も約75%と、ほぼ横ばいだった。一方、売上高に占める親会社帰属利益の割合は、約53.1%から約45.9%へ低下している。つまり、売上高100元あたりの連結純利益はほぼ変わらないにもかかわらず、親会社株主に帰属する利益は約53.1元から約45.9元へ減少したことになる。なお、4〜6月期の売上高約995億元は、7〜9月期の売上高1187.14億元と前期比増加率19.30%から逆算した値だ。
この違いは、連結決算における利益の配分方法から生じる。親会社が支配する子会社については、原則としてその利益を全額連結決算に取り込み、そこから親会社以外の株主に帰属する部分を区分して、親会社帰属利益を算出する。CXMTでは9月末時点の少数株主持分が1712.74億元に達しており、少数株主への利益配分が決算全体に大きな影響を及ぼしている。4〜6月期の連結純利益を前期比増加率から逆算すると約745億元で、少数株主帰属分は約217億元、連結純利益に占める割合は約29%だった。これに対し、7〜9月期は約39%まで上昇し、少数株主帰属利益の金額も約1.6倍に増えている。
2026年1〜9月期の累計でも、その規模の大きさが分かる。連結純利益1965.32億元に対し、親会社帰属利益は1320.40億元で、差額の644.92億元が少数株主帰属分に当たる。このうち7〜9月期だけで345.48億元を占めており、1〜6月期の累計約299億元を上回った。日本円に換算すると、345.48億元は約8200億円に相当する。これは、日本のビジネス+ITが10月30日の記事で使用した1元=23.65円という為替レートに基づく概算だ。
DRAM価格の上昇鈍化だけでは説明できない利益の差
CXMTの親会社帰属利益の伸びが鈍化した背景には、DRAM価格の上昇ペースが落ち着いてきたこともあるのではないか、という見方がある。TrendForceは7月時点の予測で、2026年7〜9月期の汎用DRAM契約価格の上昇率を前期比13〜18%と見込み、それまでより上昇幅が縮小すると予想していた。また、メモリーモジュール大手のLongsys(江波龍)も、同四半期の純利益が前期比で最大49%減少するとの業績予想を示していた。CXMT自身も売上高の前期比増加率が4〜6月期の95.9%から7〜9月期には19.30%へ大きく低下しており、成長ペースが鈍化したことは確かだ。
しかし、DRAM価格の上昇鈍化だけでは、連結純利益と親会社帰属利益の伸びに生じた大きな差を十分に説明できない。価格上昇の鈍化が収益性を圧迫する可能性はあるものの、CXMTの連結純利益率は前期と同じ約75%を維持し、粗利益率も1.94ポイント上昇している。連結ベースでは売上高に近い19.38%の利益成長を確保しているため、少なくとも連結全体の利益率が大幅に悪化したとはいえない。それにもかかわらず親会社帰属利益の伸びが3.01%にとどまったのは、少数株主に帰属する利益の割合が上昇したためと考えるのが自然だ。
CXMT自身も、この解釈を裏付ける説明を行っている。同社が10月30日に開催した決算説明会では、親会社帰属利益の伸びが3%程度にとどまった主な理由として、子会社の株式保有構造を挙げた。親会社の持分比率が比較的低い子会社が業績拡大を牽引したため、連結純利益の増加がそのまま親会社帰属利益の増加にはつながらなかったという。また、同社は8月に子会社への追加出資を実施し、持分比率を引き上げたと説明している。これらの内容は、10月31日に公開された投資家向け説明会の記録で確認できる。
少数株主への利益配分が増える可能性については、業績予告の段階から指摘されていた。中国の経済メディア第一財経は、CXMTが持つ北京と合肥の第2工場に新たな生産能力が集中しており、これらの工場に対する親会社の持分比率が比較的低い可能性を挙げていた。今回の決算からは、少数株主帰属利益の割合が前期の約29%から約39%へ上昇し、7〜9月期単独の配分額が上半期の累計を上回ったことが確認できる。ただし、各子会社が具体的にどれだけの利益を計上したかについては、子会社別の財務情報や持分比率をさらに詳しく確認する必要がある。
今後は少数株主帰属利益の割合と親会社帰属利益率に注目
今回の見立てが今後も成り立つかどうかを判断するには、少数株主帰属利益が連結純利益に占める割合を継続して確認する必要がある。仮に、この割合が7〜9月期の約39%から大きく低下しても、親会社帰属利益の伸びが連結純利益を下回り続けるようなら、持分配分だけでは説明できない要因が存在することになる。その場合は、利益率の悪化や子会社ごとの利益構成の変化などを改めて検証しなければならない。2026年10〜12月期の数値は、通期決算から1〜9月期の累計を差し引くことで算出できる。
もっとも、CXMTの利益成長が鈍化した理由を、すべて少数株主への配分に求めることはできない。親会社帰属利益の前期比増加率は4〜6月期の113.4%から7〜9月期には3.01%へ低下したが、同じ期間に売上高の増加率も95.9%から19.30%へ減速している。つまり、利益成長の鈍化には売上高の伸びが落ち着いたことも大きく影響している。少数株主への配分増加で説明できるのは、あくまで7〜9月期における連結純利益と親会社帰属利益の成長率の差であり、DRAM価格の先行きや需給逼迫がいつまで続くかは別の問題だ。
CXMTの経営陣は10月30日の決算説明会で、2026年10〜12月期も粗利益率は安定して推移するとの見通しを示した。ただし、粗利益率が維持されたとしても、少数株主に帰属する利益の割合が同じ水準にとどまるとは限らない。8月に実施した子会社への追加出資によって親会社の持分比率が変わっていることも、今後の利益配分を考える上で重要な要素となる。
CXMTの収益性を評価する投資家や、DRAM市場の動向を追う調達担当者にとって、粗利益率89.53%という数字だけでは同社の利益構造を十分に把握できない。今後の決算では、連結純利益に占める少数株主帰属分の割合とともに、売上高100元あたりの親会社帰属利益が、7〜9月期の約45.9元からどのように変化するかが重要な判断材料となる。



