Googleは2026年8月27日、動画生成・編集モデル「Gemini Omni 1.1 Flash」を発表した。モデルは最大10秒の動画を作り、生成済みの場面を会話で延長できる。開始と終了のフレーム指定や360pの下書きも加わった。

ただし、「40秒の4K動画を一度に生成する」という理解は正確ではない。個々の出力は3〜10秒で、40秒は生成済み動画の末尾へ10秒ずつ足した累積尺だ。4Kもネイティブ生成とは説明されておらず、API文書はアップスケール出力と明記している。1.1の価値は最大値より、試作から編集、延長、高解像度化までを一つの流れにまとめたところにある。

AD

Veoが担っていた制御機能をOmniへ

初代Gemini Omni Flashが登場したのは2026年5月のGoogle I/Oだ。Googleは、テキストから動画を作る専用モデルではなく、テキストや画像、音声、動画を入力として扱い、出力も複数の形式へ広げる構想を掲げた。ただし、開始時点の出力は動画に限られ、画像とテキストは将来対応とされた。

6月30日更新のGoogle公式文書では、Omniは短い動画をすばやく生成し、Interactions APIを通じて会話的に編集するモデルと説明されていた。一方、シーン延長や最終フレームの指定はVeo 3.1を選ぶ理由に挙げられている。

1.1は、この役割分担を変えた。Omniの会話編集を維持しながら、末尾への延長と最終フレーム制御を取り込んだためだ。2枚の画像を開始フレームと終了フレームに割り当てれば、その間を連続する動画として補間できる。GoogleはAPIで使うgemini-omni-1.1-flashを安定版、従来のgemini-omni-flash-previewをプレビュー版として掲載している。

40秒は一発生成ではなく、10秒ずつの累積尺

Gemini Omni 1.1 Flashの個々の出力は3〜10秒、24fpsである。延長時は入力動画の末尾を分析し、3〜10秒の続きを生成する。Googleの発表では10秒単位で延長し、生成済み動画を累積40秒まで伸ばせると説明されている。

前世代との差は、延長時に読む文脈の長さにもある。旧モデルが最後の1秒を参照していたのに対し、1.1は直前の最大10秒を利用する。人物や照明、物語の流れを引き継ぎやすくする狙いだが、Googleは40秒にわたる同一性や破綻率を測った比較値を公開していない。改善は同社の主張であり、長くすれば連続性が保証されるわけではない。

延長できる場所も末尾に限られる。途中へ場面を差し込んだり、冒頭側へ伸ばしたりする機能ではない。外部からアップロードする動画は10秒以下でなければならず、話している人物の動画へ新しい台詞を足す延長にも対応しない。モデル自身が作った動画なら、会話履歴を示すprevious_interaction_idを使って音声付きで続けられる。

AD

360pで試し、4Kはアップスケールする

gemini-omni-1-1-flash-4k.webp

新しい360pは完成品より試作に向く。Googleは、標準の720pより生成が最大60%速く、料金はおよそ3分の1になるとしている。ただし、速度の比較指標はシステムスループットであり、個々の生成が必ず60%早く終わるという意味ではない。

解像度別のAPI料金は次の通りだ。

出力解像度 1秒当たり 10秒出力の名目額
360p 0.03ドル 0.30ドル
720p 0.10ドル 1.00ドル
1080p 0.15ドル 1.50ドル
4K 0.30ドル 3.00ドル

10秒の名目額は、Googleが示した1秒単価に10を掛けた値である。実制作では採用しない案や編集ごとに新しい動画が生じるため、完成した1本の尺だけでは費用を見積もれない。40秒へ延長する場合も、最初の生成と追加生成を別々に数える必要がある。

Googleの比較表では、1.1の720pは旧Omni Flash、Veo 3.1 Fastと同じ1秒0.10ドルだ。1080pはVeo 3.1 Liteの0.08ドル、Veo 3.1 Fastの0.12ドルに対して0.15ドルであり、4KはVeo 3.1 Fastと同じ0.30ドルになる。したがって、1.1が一律にVeoより安いわけではない。価格面の新しさは、720pの3割で試せる360pを用意し、その結果を会話編集や延長へ引き継げる点にある。

比較表で旧Omniに価格が載るのは720pだけだ。1.1では同じAPIから360p、1080p、4Kも選べるようになった。

APIの既定値は720pで、1080pと4Kはアップスケールとして提供される。つまり、4Kというラベルからモデル内部の生成解像度や細部の再現性までは判断できない。Google Flowでも360pで案を試し、選んだクリップを720pでダウンロードしたうえで、1080pまたは4Kへ書き出す制作手順を案内している。

2枚のフレームと3本の参照動画

1.1は文章からの生成に加え、画像からの動画化、開始・終了フレーム間の補間、生成後の会話編集に対応する。編集では「楽器を見えなくする」「背景を変える」といった指示を続けて与え、触れていない部分を保ちながら新しい動画を出力する設計だ。横長の16:9が既定で、縦長の9:16も選べる。

参照動画は最大3本、各3秒まで入力できる。ただし、API文書は複数動画をまたいだ参照や推論を非対応としており、複数を一度に与えると結果が悪化する可能性があるとも注意している。3本を受け付けることと、3本の出来事を正確に理解して組み合わせることは別である。

音声にも境界がある。モデルは通常、映像に合わせた音声を生成し、台詞や音楽をプロンプトで指定できる。一方、音声ファイルの参照入力、声そのものの編集には対応していない。参照動画に含まれる音声も無視される。入力を幅広く扱う「Omni」という名称は、すべての入力を同じ用途で編集できるという約束ではない。

AD

提供先ごとに機能と料金を見分ける

開発者はGemini APIをGoogle AI Studioから利用でき、企業向けにはGemini Enterprise Agent Platformも用意された。Google FlowではGoogle AI Plus、Pro、Ultraの加入者へ世界で提供する。Geminiアプリでは同じ3プランの加入者がシーン延長を使える。

ただし、これらのサービスは同じ操作画面や料金体系を共有しない。秒単位の料金表は開発者向けAPIのものであり、FlowやGeminiアプリのクレジット消費へそのまま置き換えることはできない。欧州経済領域、スイス、英国では、外部からアップロードした動画の編集と延長にも制限がある。

生成動画には、人の目には見えず機械で検出できるSynthIDの透かしが入る。入力プロンプトと生成結果には地域ごとの安全フィルターも適用される。また、公式文書が完全対応とする言語は英語で、日本語を含む他言語は評価されていない。

Googleは1.1を業務利用へ進める更新と説明するが、他モデルと条件を揃えた品質比較は示していない。実用性を測る材料は、40秒まで伸ばしたときに人物と音声が何回の編集まで保たれるか、360pで選んだ構図が4K化後にも破綻しないかである。この二つが安定すれば、低コストで案を回してから仕上げる制作ループがOmniの強みになる。