Huaweiは、データセンターおよびAI推論向けのエンタープライズストレージとして、61.44TBおよび122.88TBの容量を持つ新しいSSDを発表した。将来的な製品ロードマップとして、最大245TBに達する超大容量モデルの投入も予定されている。これらの製品群において注目すべきは容量そのものではなく、それを実現した特異なアーキテクチャである。

現在のストレージ市場において、100TBを超える高密度なSSDを製造するには、垂直方向にメモリセルを集積する最新の3D NAND技術が不可欠とされている。SamsungSK hynixをはじめとする業界大手の半導体メーカーは、すでに400層を超える極端に高層化された3D NANDアーキテクチャの開発を進めており、物理的なフットプリントを維持したまま記憶容量を飛躍的に増加させている。

Huaweiは米国の輸出管理規則により、こうした最新のストレージ技術へアクセスする手段を絶たれている。米国商務省が2019年に同社をエンティティリストに追加して以降、米国の技術や設備を用いた半導体製品の調達は厳しく制限された。これにより、製造プロセスに米国の技術や特許が関与している限り、第三国の企業であっても最新の3D NANDチップをHuaweiに供給することは許されない。同社は従来のグローバルなサプライチェーンから切り離され、中国国内の限られたサプライヤーに依存せざるを得ない状況に置かれた。

高層化された3D NANDチップを入手できないことは、物理的な空間が限られるサーバーラック内でのデータ密度競争において、エンタープライズベンダーとしての致命的な技術的ビハインドを意味していた。

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YMTCの技術的限界と実装密度におけるボトルネック

外部からの技術供給を断たれたHuaweiにとって、代替となる主なチップ調達元は中国国内の主要なメモリメーカーであるYMTC(長江メモリ)であった。YMTCは、Xtacking 4.0と呼ばれる独自のアーキテクチャを展開しており、一定の技術競争力を維持している。同社のメモリチップは中国国内のストレージ需要を支える基盤となっているが、その技術的な到達点は現在232層にとどまっている。数百層規模の積層化を推し進める海外の競合他社と比較すると、メモリセル自体の実装密度の面で大きなギャップが存在している。

この232層のNANDチップを用いて、一般的なTSOP(Thin Small Outline Package)やBGA(Ball Grid Array)といった標準的な実装方式でSSDを設計した場合、同規模のフットプリントで競合他社と同等の記憶容量を確保することは物理的に不可能である。

TSOPやBGAなどの従来型パッケージングでは、複数のNANDダイを一つのパッケージ内部に積層し、その樹脂パッケージをプリント基板(PCB)上にはんだ付けする工程を経る。この手法は製造ラインの標準化には適しているものの、パッケージ自体の外殻やインターフェースを接続するための物理的スペースが余分に占有される。限られた基板面積の中で最大容量を追求するデータセンター向けのエンタープライズ用途においては、この無駄なスペースが大きなボトルネックとなる。

100層以上の高密度NANDチップが使えないHuaweiが、従来と同じパッケージング方式を踏襲し続ければ、ハイパースケーラーが求める100TB超のストレージ要件を満たせず、クラウドインフラ市場での競争力を完全に喪失するリスクを抱えていた。

Die-on-Board技術によるストレージアーキテクチャの転換

NANDチップの積層数における技術的格差を克服するため、Huaweiの研究開発チームはアプローチを根本から変更した。メモリセル自体の高層化という半導体製造プロセスで競合を追従するのではなく、基板への実装方法というアセンブリ段階のイノベーションにリソースを集中させた。その成果として実用化されたのが、Die-on-Board(DoB)と呼ばれるウェハレベルの独自パッケージング技術である。

フランスのパリで開催されたHuawei ID Forum 2026において詳細が公開されたこのDoB技術は、文字通りNANDのベアダイを従来のパッケージに封入することなく、直接SSDのメインプリント基板上にマウントする手法を採用している。

DoB技術の実装により、従来はパッケージの外装や基板との接合部が占有していた無駄な物理スペースを完全に排除することが可能になった。パッケージング工程を省略して基板上にダイを直接配置することで、ダイ間の相互接続距離を短縮し、限られた基板面積に従来よりも遥かに多くのYMTC製NANDダイを詰め込むことができる。Huaweiの公開資料によれば、この新しい実装アプローチによりストレージの容量密度は従来比で33%向上した。

実際の製品への適用例として、OceanStor Pacific 9926スケールアウトストレージシステムにおいては、2Uのラックマウントシャーシに36基の122.88TB NVMe SSD(PCIe Gen5対応)を搭載し、圧縮率2.5:1の環境下で11PBという巨大な有効容量を提供することが可能となっている。Kioxiaなどがテスト中の245TBモデルには及ばないものの、制約されたリソースの中でエンタープライズ水準の大容量密度を実現している。

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AIワークロードに最適化された設計と物理的課題の克服

ベアダイを基板に直接マウントするDoB技術は、実装密度の向上をもたらす一方で、複数の物理的な課題を伴う。ダイが極めて近接して密集配置されることで、基板上の局所的な熱密度が急激に上昇するため、エンタープライズ環境の連続稼働に耐えうる高度な熱管理(サーマルマネジメント)が要求される。さらに、ダイ間の物理的な距離が極端に近接することで、信号の干渉や劣化といったシグナルインテグリティの問題も発生しやすくなる。

Huaweiはこれらのハードルに対して、OceanDisk 1800などの製品群で具体的な基板設計と冷却機構の解決策を実装し、実運用に耐えうる品質を確保している。従来の複雑なパッケージング工程を省略することは、歩留まりの維持と製造コストの削減にも直接的に寄与しており、高密度化とコスト効率の両立を達成した。

さらに特筆すべきは、このストレージシステムが単なるデータ保管領域としてではなく、AIワークロードに最適化されたコンピュートストレージとして設計されている点である。報告によれば、HuaweiのAI向けSSDアーキテクチャ(EX 560、SP 560、LC 560などのラインナップ)は、SSDのメインコントロールチップ内に専用のAIアクセラレーションユニットを統合している。これにより、ストレージのコントローラ層での直接的なデータ処理演算が可能となり、マザーボード上のCPUやGPUとの間で発生するデータ転送量を大幅に削減する。

このアーキテクチャの採用により、データ転送に伴う消費電力を最大80%削減することに成功しており、膨大な学習データを処理するAIデータセンターのエネルギー効率を劇的に改善する設計となっている。

中国国内のエコシステム構築とマクロ市場への波及

HuaweiによるDoB技術の実用化といったストレージの高密度化技術は、同時に米国の強硬な輸出規制に対する中国テクノロジー企業の適応能力をも示している。現在、米国政府はNvidia H200のような高性能AIアクセラレータの中国への輸出を厳しく制限しており、その対象はRTX 5090D V2のようなコンシューマベースの派生製品にまで継続的に拡大している。海外の先端ハードウェアにアクセスする経路を絶たれた中国国内のAIスタートアップやクラウドプロバイダーは、インフラストラクチャの構築において、Huaweiが提供する独自仕様のソリューションを採用せざるを得ない環境にある。

この強制的に制約された市場環境が、結果として中国国内の半導体エコシステムに対する大規模な資本投下を促進するマクロな構造を生み出している。

国内需要がHuaweiやYMTCといった地元企業に集中することで、莫大なインフラ投資の収益が中国のハードウェアサプライチェーンに直接的に還流している。一例として、HuaweiのAI向けクラスター「CloudMatrix」は、競合製品であるNvidiaのGB200を上回るパフォーマンスを記録するケースもあると報告されている。消費電力が4倍に達するという構造的な課題は残されているものの、力技による物量と独自のパッケージング技術によって技術的なギャップを埋める戦略は、一定の実績を挙げている。

DoB技術を活用した122TB SSDの量産は、最先端の微細化や多層化プロセスに頼らずとも、基板設計と実装のアプローチを変更することでエンタープライズ市場のシビアな要求に応えられることを証明した。こうした独自の技術進化が、グローバルな半導体技術の標準化プロセスから分岐し、独自のハードウェアエコシステムを形成していく流れはさらに加速していく。