台湾の半導体メーカーMacronix(旺宏)が、任天堂のSwitch用ゲームカードに使われるROMの生産を段階的に終了する方針を明らかにした。10月27日の決算説明会で会長のMiin Wuが説明したもので、Taipei Timesが報じている。同社はこの四半期に過去最高の純利益と70.5%の粗利益率を記録した一方、ROMの売上構成比はわずか5%に縮小していた。今回の撤退はMacronixにとって小規模事業の整理といえるが、任天堂への影響については、代替調達先の有無や調達条件を見極める必要がある。
好決算のMacronixがROM生産の段階的終了を表明
Macronixの2026年7〜9月期の純利益は109億5,000万台湾ドル(約3億3,780万ドル)となり、前期の77億4,000万台湾ドルから42%増加した。前年同期は8億6,200万台湾ドルの純損失だった。粗利益率も前期の64.4%、前年同期の13.5%から70.5%へと大幅に改善している。Taipei Timesによると、AI向けメモリの需要拡大と供給能力の逼迫が価格上昇を支えており、同社は10〜12月期も値上げが続くと見込んでいる。
こうした好業績の中、Miin WuはROMの生産を段階的に終了する方針を示した。台湾メディアUAnalyzeによる決算説明会の質疑応答の要約では、経営資源が限られる中でNORとeMMCを優先することが理由とされ、ゲーム向け事業の重要性もすでに低下しているという。ROMは次回の決算説明会から独立した事業項目として報告されなくなり、8インチ工場もすでにNORの生産へ転換されている。ただし、UAnalyzeの記事は第三者による要約であり、発言の逐語記録ではない。また、ROMの生産終了は段階的に進めるとされているものの、具体的な終了日は公表されていない。
ROMの売上比率は5%、NANDとNORの約19分の1に縮小
今回の撤退を理解するうえで重要なのが、Macronixの売上構成の変化だ。TechNewsとStatementDogが伝えた決算資料によると、2026年7〜9月期の売上高242億3,700万台湾ドルのうち、NAND(eMMCを含む)が47%、NORが46%、ROMが5%、ファウンドリ事業が2%を占めた。NANDとNORを合わせると売上の93%に達し、ROMの18.6倍となる。
ROMの売上高は約12億台湾ドルで、Taipei Timesが使用した換算レートでは約3,700万ドルに相当する。ただし、製品別の構成比は整数に丸められているため、実際のROM比率は4.5〜5.5%の範囲にあり、NANDとNORの合計との比率も約17〜21倍の幅を持つ。また、製品別の利益率は開示されておらず、この比較から収益性の優劣を判断することはできない。
前年同期と比べると、ROMの存在感が急速に低下したことが分かる。7〜9月期の全社売上高は前年同期比195%増だったため、前年同期の売上高は約82億台湾ドルと逆算できる。一方、ROMの売上高は前年同期比39%減少しており、前年同期のROM売上高は約20億台湾ドル、全体の約4分の1を占めていた計算になる。構成比の丸めを考慮すると、当時のROM比率は約22〜27%と推定される。この1年間でNANDの売上高は768%、NORは158%増加したのに対し、ROMは減少した。つまり、ROMの比率低下には、同事業の縮小とNAND・NORの急成長という二つの要因が重なっている。
こうした売上構成の変化は、Macronixの設備投資計画とも関係している。Miin Wuによると、新規設備の稼働までには最低1年を要するため、短期的な業績拡大は生産量の増加ではなく、主に価格上昇によってもたらされる見通しだ。第1段階となる220億台湾ドルの設備投資による増産は2027年後半に始まる予定で、追加の158億台湾ドルについては設備の納入遅延により、2028年の生産開始を見込んでいる。新たな生産能力はeMMC向けNANDや3D NANDに振り向けられる計画だ。
つまり、当面は生産能力を大幅に増やせないため、既存設備をどの製品に割り当てるかが収益を左右する。Miin Wuはデータセンター向けNORについて、顧客から増産を求められていることも明らかにした。需要が強く、売上の大部分を占めるNANDやNORを優先する一方、構成比5%のROMから撤退することは、経営資源の配分という観点では合理的と考えられる。ただし、これは公表された数値と経営陣の発言に基づく分析であり、MacronixがROM撤退の理由をこのように明言したわけではない。
Macronixにとって今回の撤退は事業全体への影響が比較的小さいと考えられるが、任天堂側への影響は別問題だ。任天堂がROMを何社から、どの程度調達しているかは公開情報から確認できない。代替調達先が存在するのか、また、切り替えによって価格や供給数量などの条件が変わるのかについても、現時点では判断できない。
Switch用ゲームカードへの影響は?供給不足を判断する条件
MacronixのROM事業は縮小傾向にあるものの、直近の四半期では前期比9%の増収を記録している。前年同期比では39%減少しているため、長期的な縮小傾向は明らかだが、需要が一貫して減り続けているわけではない。また、任天堂がほかのメーカーから十分なROMを調達できるのであれば、Macronixの撤退がゲームカードの供給に大きな影響を及ぼさない可能性もある。しかし、調達先の内訳が公表されていない以上、その可能性を裏付けることも否定することもできない。
UAnalyzeの要約では、Macronixにとってゲーム向け事業の重要性が低下しているとされているが、任天堂との取引規模や契約条件について具体的な説明はない。ROMの生産終了も段階的に進められるため、直ちに供給が途絶えると考える根拠は乏しい。現段階では、ゲームカードの不足よりも、移行期間中に任天堂が調達先や価格、供給数量などの条件をどう確保するかが重要な論点になると考えられる。
この見方が覆るのは、実際にゲームカードの供給不足が表面化した場合だ。例えば、任天堂や大手ゲームパブリッシャーがカード不足を理由にソフトの発売延期や出荷数量の制限を発表すれば、調達条件だけでなく供給能力そのものが問題になっていることを示す。ただし、それがMacronixの撤退に起因するかどうかは、別途確認が必要だ。Macronixは次回の決算説明会からROMの売上を独立して報告しなくなるため、今後は任天堂やゲームパブリッシャー側の発表も重要な判断材料となる。
日本の消費者にとっても、Switch用ゲームカードの供給状況は無関係ではない。ただし、現時点ではSwitch 2のゲームカードにMacronix製ROMが使用されているかどうかは確認されていない。調達条件の変化がゲームソフトの価格やカード容量の選択に影響する可能性はあるものの、具体的な影響を示す情報はない。今回の撤退が実際の製品供給にどの程度影響するかは、今後の調達体制と市場動向を見極める必要がある。



