NVIDIAとOracleは2026年10月27日、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)のAIスーパークラスターを、Vera Rubin NVL72によって数ギガワット(GW)規模へ拡張する計画を発表した。発表時点で、Vera Rubin NVL72とVera CPUはOCIでの一般提供が始まっている。今回の増設計画について具体的な契約金額は明らかにされていないが、NVIDIAが決算説明会で示した「1GW当たり約400億ドル」という売上機会を基準にすると、1GW分だけでOracleの2027年度設備投資目標の4割強に相当する規模となる。

もちろん、この400億ドルがそのままOracleの支払額になるわけではない。それでも、数GW規模への拡張はOracleの営業キャッシュフローだけで賄うには相当な負担となる可能性がある。実際、Oracleの直近の決算資料からは、顧客の前払いや持ち込み機材、株式発行などを活用してAIインフラ投資を進めている状況がうかがえる。今後の拡張ペースは、こうした外部資金や顧客側の設備負担をどこまで確保できるかに左右されると考えられる。

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Vera Rubinの一般提供開始と数GW規模への拡張計画

今回の発表では、すでに利用可能になった製品と、今後の導入計画が示された。一般提供が始まったのは、Vera Rubin NVL72とVera CPUのOCI上での利用だ。Vera Rubin NVL72は、1ラック内の72基のGPUをNVLinkで接続するシステムである。一方、計画段階にあるのが、OCIスーパークラスターへのVera Rubin NVL72の数GW規模での増設と、x86サーバー構成のHGX Rubin NVL8の導入だ。

HGX Rubin NVL8は、8基のRubin GPUに加え、64コアのIntel Xeon 6プロセッサを2基、4TBのDDR5メモリ、6.4Tbpsのネットワーク接続を備える構成となる。Vera Rubin NVL72による大規模なAI計算基盤の拡張と並行して、x86ベースのサーバー環境にもRubin世代のGPUを導入する方針だ。

Vera CPUが重視する用途の一つが、AIエージェントの処理である。AIエージェントはモデルによる推論だけでなく、外部ツールの呼び出しやプログラムの実行など、CPUが担当する処理も頻繁に行う。こうした処理に時間がかかると、その間GPUが待機することになり、システム全体の効率が低下する。NVIDIAとOracleは、CPU側の処理能力を高めることで、このボトルネックを解消する狙いを示している。OpenAIでコンピューティング部門のCTOを務めるUday Ruddarraju氏も、急増するAIエージェント向けサンドボックスの処理を支えるため、OCI上でVera CPUを本番環境に導入すると述べた。

一方、今回の発表では、増設に伴う契約金額や資金調達の方法は明らかにされていない。Reutersも、取引額は非公開であり、Oracleが資金調達の具体的な方法を説明していないと報じている。また、Oracleは同日、GoogleのTPUを初めて提供する方針も発表した。Reutersによると、SambaNovaやCerebrasの推論向けAIチップも提供する計画だ。NVIDIAとの協力を拡大する一方で、AI計算基盤に採用する半導体の供給元も多様化させている。

1GW当たり400億ドル、Oracleの年間設備投資目標の4割強に相当

今回の拡張計画の規模を考える上で参考になるのが、NVIDIAが2026年8月26日の2027年度第2四半期決算説明会で示した数字だ。同社は、AIデータセンターの電力容量1GW当たりの売上機会について、Hopper世代では約180億ドル、Blackwell世代では約250億ドルだったものが、Vera Rubin世代では約400億ドルに拡大したと説明した。

Vera Rubin世代の400億ドルには、Vera CPU、Rubin GPU、NVLink、InfiniBandまたはEthernetのネットワーク製品、Groq LPUなどが含まれる。NVIDIAは、こうした売上機会の拡大について、AIデータセンター全体の投資額に占める自社製品の割合が増加した結果だと説明している。重要なのは、400億ドルという数字がデータセンター全体の建設費や顧客の総支払額ではなく、NVIDIAが獲得できると見込む売上規模を表している点だ。

この数字をOracleの設備投資計画と比較すると、計画の大きさが見えてくる。Reutersによると、Oracleは2027年度の設備投資目標を約900億〜950億ドルに据え置いている。NVIDIAが示す1GW当たり400億ドルは、この年間設備投資目標の約42〜44%に相当する。具体的には、400億ドルを950億ドルで割ると42.1%、900億ドルで割ると44.4%になる。

仮に「マルチギガワット」を2GW以上と解釈すれば、同じ基準によるNVIDIAの売上機会は800億ドル以上となり、Oracleの年間設備投資目標の約84〜89%以上に達する計算だ。ただし、これは両社が公表した数字を使って規模感を比較したものであり、Oracleが実際に800億ドル以上を支払うことを意味しない。設備の導入期間や契約条件も公表されていないため、増設に必要な資金が2027年度の1年間に集中するとは限らない。

では、Oracleは巨額の設備投資をどのように賄っているのか。9月10日に公表された同社の2027年度第1四半期決算資料によると、同四半期の総設備投資額は280億ドルだった。一方、短期資金調達と金融的な要素を伴う顧客からの前払いを差し引いた純現金支出は180億ドルにとどまる。差額の100億ドルには顧客の前払いだけでなく短期資金調達も含まれるため、すべてを顧客資金によるものとみなすことはできない。

さらに、同じ決算資料には、残存契約額(RPO)の増加の大半が、顧客による前払い、または顧客が持ち込むハードウェアに関連していると記されている。RPOは契約済みでありながら、まだ売上として計上されていない金額を示す指標で、同四半期末の残高は6,640億ドルに達した。Oracleは第1四半期に、ATM(市場価格による随時株式発行)を通じて200億ドルの株式発行も完了している。Reutersは、Oracleが9月の決算説明で、AIチップの費用を顧客自身が負担するケースが増えていると説明したことも伝えている。

こうした数字からは、Oracleが自社の営業活動で得た現金だけで設備投資を進めているわけではないことが分かる。顧客の前払い、顧客が所有する機材の利用、株式発行などを組み合わせることで、大規模なAIインフラの拡張を支えていると考えられる。ただし、顧客が持ち込む機材はOracleが調達する資金とは異なり、Oracle自身が負担する設備投資額を抑える仕組みとして区別する必要がある。Vera Rubinの数GW規模への拡張でも、こうした資金調達と設備負担の分担が重要になる可能性が高い。

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実際の支払額は不明、外部資金への依存をどう評価するか

この見立てには、重要な留保がある。まず、NVIDIAが示した1GW当たり400億ドルは同社の売上機会を表す数字であり、Oracleの実際の支払額ではない。契約価格や設備の所有形態、顧客による機材の持ち込みなどによって、Oracleが負担する金額は変わる。また、導入期間も公表されていないため、複数年にわたる投資規模を単年度の設備投資目標と比較することには限界がある。

もう一つの反論は、Oracleが株式や債券の発行によって十分な資金を確保できるというものだ。実際、Oracleは前述の200億ドルの株式発行に加え、2027年度に債券と株式を通じて約400億ドルを調達する計画を6月に示したと報じられている。したがって、大規模な増設が直ちに資金不足を意味するわけではなく、顧客からの資金だけに依存しているとも言えない。今回の分析で重視すべきなのは、顧客による前払い、設備負担の分担、資本市場からの調達など、Oracle自身の営業キャッシュフロー以外の手段が拡張計画を支えているという点だ。

それでも、外部からの資金調達や顧客による設備負担が重要になるという見立てには、Oracle自身の決算資料という根拠がある。同社が第1四半期のRPO増加の大半を、顧客の前払いや持ち込み機材に結び付けて説明しているためだ。この事実は、NVIDIAの400億ドルという数字をOracleの支払額として扱えるかどうかとは無関係である。ただし、第1四半期の契約構成が、そのまま今回のVera Rubin増設にも当てはまると確定したわけではない。

今後の見立てを検証する機会となるのが、10月28日に予定されているOracleのInvestor Dayだ。ここで同社が、Vera Rubinの増設に必要な資金を株式・債券の発行や顧客の前払いに頼らず、営業キャッシュフローで賄えると説明すれば、外部調達への依存度が高いという見方は修正が必要になる。もう一つの確認点は、次回の決算資料でRPO増加の内訳がどう説明されるかだ。顧客の前払いや持ち込み機材が増加の大半を占めるという説明がなくなれば、契約構成に変化が生じた可能性がある。ただし、単に記述がなくなっただけでは依存度の低下を証明できないため、実際の資金調達額や設備投資の内訳と合わせて判断する必要がある。

日本の利用企業にとっては、Vera Rubinを搭載したOCIの計算基盤が、国内を含む各リージョンでいつ利用できるようになるかも重要だ。今回の発表では一般提供の開始と大規模な増設計画が示されたものの、リージョンごとの具体的な提供時期は明らかにされていない。今後はOracleの資金調達と設備投資の進捗に加え、実際に利用できる計算資源の規模や提供地域がどこまで拡大するかが注目される。