OpenAIが企業評価額1兆2500億ドル(約198兆円)の資金調達ラウンドで、第1弾となる110億ドル(約1兆7440億円)を調達したと、BloombergとReutersが2026年11月6日に報じた。評価額は3月の8520億ドルから約47%上昇したが、売上高に対する評価倍率はむしろ低下している可能性がある。3月にOpenAIが公表した月間売上高20億ドルと、Bloombergが伝えた9月末時点の年換算売上高約500億ドルを基に計算すると、倍率は約35.5倍から約25倍に下がる。ただし、OpenAIは今回の資金調達を正式発表しておらず、比較に使った売上高の算出方法が同じかどうかも確認できていない。

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第1弾で110億ドルを調達、評価額は当初目標の約1.4兆ドルから1.25兆ドルへ

Reutersの11月6日付報道によると、OpenAIは評価額1兆2500億ドルの資金調達ラウンドで、最初の110億ドルを確保した。Bloombergは、資金が同日までに払い込まれ、残りの調達も数週間以内に完了する見通しだと伝えている。調達総額は最大約200億ドルに達する可能性があり、日本経済新聞も残り約90億ドルの調達を目指すと報じた。Bloomberg日本語版の円換算額から逆算した1ドル=約158.5円を用いると、110億ドルは約1兆7440億円、評価額1兆2500億ドルは約198兆円に相当する。

今回の資金調達にはソフトバンクグループとアラブ首長国連邦(UAE)の投資会社MGXが参加したという。Reutersは投資家2人の証言として両社の参加を伝えているが、報道の根拠となっているのはいずれも匿名の関係者だ。OpenAI自身は調達完了を公表しておらず、TechCrunchも同社にコメントを求めている段階だと報じている。

今回の評価額に至るまでには、目標の引き下げが続いていた。Bloombergは9月29日、約1.4兆ドルの評価額で300億ドルを調達する計画を報じた。その後、CNBCは10月22日に調達前評価額1兆2500億ドルで最大300億ドルの調達を目指していると伝え、Financial Times(FT)は10月30日、目標調達額を約200億ドルに引き下げたと報じた。一方、Reutersが取材した投資家2人は、OpenAIが当初求めていた評価額を1.5兆ドルと説明しており、初期の目標水準にも報道による違いがある。また、CNBCは1兆2500億ドルを調達前評価額としているが、11月6日の報道では調達前と調達後のどちらを指すのか明確になっていない。

比較対象となる3月の評価額は、OpenAI自身が公表した数字だ。同社は2026年3月31日の発表で、1220億ドルの出資約束を確保し、調達後評価額8520億ドルで資金調達ラウンドを完了したと説明した。ただし、この1220億ドルは出資約束額であり、全額が発表時点で払い込まれていたことを意味するわけではない。

つまり、今回の1兆2500億ドルという評価額は、9月に報じられた当初目標の約1.4兆ドルを下回る一方、3月の8520億ドルからは約47%上昇している。比較する時点によって評価額の変化は正反対に見えるが、企業の成長に対して投資家がどれほどの価格を付けているのかを判断するには、売上高との関係を調べる必要がある。出資約束額と実際の払い込みの違いや、UAE投資家の役割については、XenoSpectrumの先行記事とUAE関連の記事でも詳しく取り上げている。

年換算売上高に対する評価倍率は35.5倍から約25倍に低下

年換算売上高(Annualized Revenue Run Rate)は、直近1カ月などの売上実績を基に、同じペースが1年間続いた場合の売上高を推計した指標だ。例えば、月間売上高が20億ドルであれば、12倍した240億ドルが年換算売上高となる。急成長する新興企業の事業規模を把握するためによく使われるが、実際の年間売上高とは異なり、計算対象の期間や売上の計上方法によって数字が変わる。Reutersも、年換算売上高は場合によって誤解を招きかねない指標だと指摘している。

3月31日の発表で、OpenAIは月間売上高が20億ドルに達したと説明した。これを12倍すると年換算売上高は240億ドルとなり、当時の調達後評価額8520億ドルを割ると約35.5倍になる。一方、Bloombergが10月9日に報じた9月末時点の年換算売上高は約500億ドルだ。Reutersも、OpenAIが投資家に約500億ドルという数字を説明したと伝えている。

この500億ドルを今回報じられた評価額1兆2500億ドルで割ると、倍率は約25倍となる。3月の35.5倍と同じ水準になるには年換算売上高が約352億ドルあればよく、報道された500億ドルはその水準を大きく上回る。つまり、報道値が比較可能であるならば、評価額は3月より約47%上昇したものの、売上高に対する評価倍率は約30%低下したことになる。

比較時点・条件 評価額 年換算売上高 評価倍率
2026年3月31日 8520億ドル(調達後) 240億ドル(月20億ドル×12) 約35.5倍
2026年11月6日 1兆2500億ドル(報道値) 約500億ドル(9月末時点) 約25倍
参考:9月29日の報道値 1兆2500億ドル 700億ドル近く 約18倍
3月と同じ倍率になる条件 1兆2500億ドル 約352億ドル 約35.5倍

※3月の数字はOpenAIの公式発表を基に編集部が計算。11月の評価額はReutersなどの報道、500億ドルはBloombergなどが伝えた9月末時点の数字を使用。700億ドル近くという参考値はAxiosとReutersの9月29日付報道に基づく。

ただし、9月末の年換算売上高については、報道機関によって数字が異なる。Axiosは9月29日、企業向け売上の急拡大を背景に年換算売上高が700億ドルに近づいたと報じ、Reutersも同様の数字を伝えた。この数字を使えば評価倍率は約18倍まで低下するが、今回は評価倍率が高くなる約500億ドルを基準とした。500億ドルと700億ドルのどちらを使っても、3月の35.5倍を下回る計算になる。

なお、評価額の比較には調達前と調達後の違いもある。調達前評価額は新たな出資金を含まない企業価値であり、調達後評価額は出資金を加えた金額だ。3月の8520億ドルは調達後評価額だったのに対し、今回の1兆2500億ドルはCNBCが調達前評価額と報じている。仮に今回の第1弾110億ドルを加えた1兆2610億ドルを調達後評価額とみなしても、500億ドルに対する倍率は25.0倍から約25.2倍に変わるだけで、差は1%未満にとどまる。この違いだけでは、3月より評価倍率が低いという計算結果は変わらない。

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売上高の定義、AnthropicのIPO、AI株安が評価を左右

もっとも、この比較には3つの重要な留意点がある。第一に、年換算売上高の定義が一致しているとは限らないことだ。3月の240億ドルはOpenAIの公式発表を基にした編集部の計算だが、9月末の500億ドルは匿名の情報源に基づく報道値である。両者が同じ会計上の基準や算出方法を使っているかは確認できていない。

実際、Reutersの10月8日付報道によると、500億ドルと700億ドルという数字の違いは、競合するAnthropicとの比較を目的とした売上高の計上範囲の調整が主な原因だという。OpenAIはAWSやGoogle Cloudなどのクラウドパートナーを通じた販売額を一定の形で売上に含めない一方、Anthropicは異なる方法で計上している。こうした違いがある以上、年換算売上高を単純に比較するだけでは、実際の事業規模や成長率を正確に判断できない。

また、FTが入手したOpenAIの社内資料によると、2026年通年の売上高予測は360億ドルで、Reutersもこの数字を伝えている。これは先ほどの352億ドルという基準を約8億ドル上回るにすぎない。ただし、通年の売上予測と特定時点の年換算売上高は別の指標であり、360億ドルをそのまま評価倍率の計算に使うことは適切ではない。したがって、約25倍という評価倍率は500億ドルという報道値に依存した試算であり、実際に3月より低下したと断定するには、比較可能な売上データが必要となる。

第二の留意点は、評価額の引き下げが何を意味するのかという問題だ。投資情報サイトinvestingLiveはCNBCやReutersの報道を基に、当初目標の約1.4兆ドルを下回る評価額について、投資家が価格に慎重になった結果とも、OpenAIが資金調達の迅速さと確実性を優先して評価額で譲歩した結果とも解釈できると指摘している。Reutersは、OpenAIがAnthropicの11月中旬のIPOを前に出資確約を急いでいると報じた。また、FTの報道を取り上げた記事では、調達額を減らせば新たな投資家に譲る持分も小さくなるという見方が示されている。

これらは評価額が引き下げられた理由についての見方であり、売上高に対する評価倍率が低下したという計算とは矛盾しない。今回の数字だけで、投資家がOpenAIの成長性を以前より低く評価していると判断することはできない。確認できるのは、報道された評価額と売上高を用いる限り、売上高に対する倍率が3月より低くなるという点までだ。

第三は、AI関連株を取り巻く市場環境の変化である。FTが資金調達目標の引き下げを報じた10月30日には、ナスダック市場が2.9%下落し、10月6日に付けた最高値からの下落率は7.8%に達した。Reutersによると、一部の投資家はAnthropicのIPO時の評価額を約1.5兆ドルと見積もっており、従来の約2兆ドルという期待を下回っている。AI企業への投資姿勢が慎重になるなかで今回の評価額が決まったのであれば、市況が回復した際に残りの資金調達条件が変化する可能性もある。今回の評価倍率は、あくまで11月6日時点で報じられた条件に基づくものとして捉える必要がある。

今後の焦点は残り約90億ドルの調達条件と売上高の開示

今回の評価倍率に関する見立てを検証するうえで、注目すべき条件は2つある。第一は、OpenAIの年換算売上高が約352億ドルを上回っているかどうかだ。評価額を1兆2500億ドルとした場合、同じ基準で算出した年換算売上高が約352億ドルを下回れば、評価倍率は3月の約35.5倍を上回る。逆に、報道されている約500億ドルという水準が確認できれば、3月より評価倍率が低下したという見方を裏付けることになる。

OpenAIは2026年6月にIPOの申請書類を非公開で提出したと報じられたが、Sam Altman CEOは年内の上場を否定している。上場は2027年以降になるとの報道もあり、詳細な財務情報が一般に公開されるまでには時間がかかる可能性がある。それまでは、投資家向け資料や関係者の証言に基づく報道が、売上高の動向を判断する主な材料となる。

第二は、残り最大約90億ドルの資金調達がどの評価額で成立するかだ。Bloombergによると、今回のラウンドは数週間以内に完了し、調達総額は最大約200億ドルに達する見通しだ。仮に残りの資金が当初目標の約1.4兆ドル以上の評価額で調達されれば、当初目標から評価額が引き下げられたという見方は修正が必要になる。ただし、その場合でも、売上高に対する評価倍率が3月より低いかどうかは、最終的な評価額と比較可能な年換算売上高によって決まる。

日本の投資家にとって重要な接点となるのが、ソフトバンクグループの保有するOpenAI株式だ。同社は2026年10月1日の発表で、最終回となる100億ドルの追加出資を実行し、累計出資額が646億ドル、持分比率が約13%になったと明らかにした。今回報じられた評価額1兆2500億ドルに13%を掛けると、保有持分の単純な評価額は約1625億ドルとなる。1ドル=158.5円で換算すれば約25兆8000億円に相当するが、これは優先株の権利や持分の希薄化などを考慮していない概算であり、ソフトバンクグループの評価益を意味するものではない。investingLiveも、同社をOpenAIの企業評価の変化が株価に反映されやすい上場企業の一つとして挙げている。

現時点では、OpenAIの評価額が3月から約47%上昇した一方、年換算売上高に対する評価倍率は低下している可能性が高いというのが、報道値に基づく試算の結論だ。ただし、売上高の算出方法が一致しているかどうかという問題は残る。今後、IPO関連書類で会計上の売上高が開示されても、それを年換算売上高と同一視することはできない。残り約90億ドルの調達条件に加え、売上高の計上基準と成長ペースがどこまで明らかになるかが、1兆2500億ドルという評価額の妥当性を判断する鍵となる。