2025年12月30日、ゲーム業界とテクノロジー市場を揺るがす衝撃的なレポートが駆け巡った。信頼性の高いインサイダー情報で知られるTom Henderson氏(Insider Gaming)が、PlayStation 6(PS6)および次世代Xboxの発売が、当初想定されていた2027-2028年のウィンドウから大幅に遅延する可能性を報じたのだ。

その元凶は、開発の遅れでも半導体の歩留まり問題でもない。現在進行形でテクノロジー業界全体を窒息させつつある「RAM(メモリ)の供給危機」である。

本稿では、AIブームの裏で深刻化する「メモリ争奪戦」の実態と、それがなぜ次世代コンソールの運命を狂わせているのか、そして我々ユーザーにとって何を意味するのかを見ていきたい。

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衝撃のスクープ:2027年発売説の崩壊

業界で最も信頼されるリーカーの一人であり、Insider GamingのオーナーでもあるTom Henderson氏がもたらした情報は、コンソール市場のロードマップを根本から書き換えるものだった。レポートによれば、SonyとMicrosoftの両社内では現在、「次世代機の発売を延期すべきか否か」という極めて重大な議論が高レベルで行われているという。

「法外な価格」への懸念

この議論の核心にあるのは、次世代機のパフォーマンス不足ではなく、製造コストの暴騰だ。Henderson氏は以下のように指摘している。

「コンソールは伝統的にある程度の助成(逆ざや販売)が行われてきたが、RAMの可用性と価格上昇により、次世代コンソールは以前の世代よりもはるかに高価格になると考えられていたものが、『法外な価格(extortionate)』になる可能性がある」

つまり、現状のメモリ価格のまま次世代機(PS6やXbox Next)を製造しようとすれば、消費者が許容できる価格帯(例えば500ドル600ドル)を遥かに超え、下手をすれば1000ドル近い価格設定を強いられるリスクがあるということだ。

メーカーの苦渋の決断

こうした現状を受け、SonyとMicrosoftは現在、以下の二者択一を迫られている。

  1. 予定通り発売するが、価格を大幅に引き上げる(普及率の低下を招くリスク)
  2. 発売を2028年以降に延期し、メモリ市場の正常化を待つ(ハードウェアサイクルの長期化)

Insider Gamingの情報によれば、両社は後者の「延期」を真剣に検討しており、メモリメーカーの設備投資が進み、供給能力が回復することで価格が下落するのを待つ姿勢を見せている。

なぜ今、「RAMの黙示録」が起きているのか?

この事態を理解するには、単なる「部品不足」という言葉では不十分だ。現在起きているのは、生成AIの爆発的な普及に伴うメモリ市場の構造的なパラダイムシフトである。

1. AIデータセンターによる「爆食」

現在、NVIDIAのH100や次世代AIアクセラレータを稼働させるためのデータセンター需要が、世界のDRAM供給を飲み込んでいる。
AIの学習と推論には、広帯域メモリ(HBM)や大容量のDDR5が不可欠だ。Google、Microsoft、Metaなどのハイパースケーラーは、価格を問わず在庫を確保しており、コンソールやPC向けのメモリが市場から蒸発している。

2. メーカーの戦略転換と「Crucial」の消失

Samsung、SK hynix、Micronという世界3大メモリメーカーは、利益率の低い消費者向けメモリから、莫大な利益を生むAI向けメモリ(HBM3eなど)へと生産ラインを劇的にシフトさせた。
最も象徴的な出来事は、Micronが消費者向けブランド「Crucial」を事実上終了させ、企業向けビジネスに特化したことだ。これは、自作PCユーザーやゲーマーにとっての「安価なメモリ」の時代の終わりを告げる決定的なシグナルとなった。

3. 設備投資のラグ

メモリメーカーは増産体制を敷いているものの、新しい製造工場(Fab)が本格稼働するのは2027年から2028年になると予測されている。つまり、少なくとも今後2〜3年は、供給不足が解消される見込みが薄いということだ。

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次世代機への具体的な影響:スペックと価格のジレンマ

この「RAM危機」は、PS6と次世代Xboxの設計思想にどのような影を落とすのか。

PlayStation 6:4K/120FPSの夢と現実

リーク情報によれば、PS6は24GB32GBのGDDR7メモリを搭載し、真の4K/120FPSゲーミングや高度なレイトレーシングを実現することを目指していた。しかし、Red94のレポートによると、現在の価格高騰下では、メモリだけで製造コスト(BOM)の大部分を占めてしまう。
ソニーが「妥当な価格」でPS6を提供するためには、メモリ容量を削減してスペックを妥協するか、コストが下がるまで発売を待つしかない。Henderson氏のレポートは、ソニーが後者に傾いていることを示唆している。

次世代Xbox:PCライクな構造の代償

一方、次世代XboxはAMDの「Magnus」APUを搭載した、よりPCに近いアーキテクチャになると噂されている。しかし、PCライクな構成は汎用DRAMの価格変動の影響をより直接的に受ける。そのため次世代XboxがPS6以上に高価になる可能性も考えられ、Microsoftにとっても延期は避けられない選択肢となりつつある。

業界全体への波及:PCと現行機も無傷ではない

今回の危機の影響は、まだ見ぬ次世代機だけの話ではない。2025年末の現在、我々は既にその影響下にいる。

  • 現行機の値上げ: SonyとMicrosoftはすでに、関税や部品コストの上昇を理由にPS5やXbox Series Xの価格を引き上げている。Insider Gamingは、2026年にはさらなる値上げの可能性があると警告している。
  • PCゲーミングの冬: CyberPowerPCなどのBTOメーカーは、RAM価格が数ヶ月で500%上昇したことを受け、PC価格の引き上げを発表した。自作PC市場では、メモリとマザーボードの「抱き合わせ販売」が常態化しつつある。
  • Steam Machineへの飛び火: Valveが計画しているとされる次世代ハードウェアも、このメモリ高騰の直撃を受けており、発売スケジュールの見直しを迫られている可能性がある。

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延期は「悪」なのか?

筆者は、この遅延の可能性を必ずしもネガティブなだけのニュースとは捉えていない。ここにはいくつかのポジティブな側面も見出せる。

1. 現行機サイクルの成熟

多くのゲーマーはまだPS5やSeries Xの性能をフルに活用したゲーム体験を十分に享受していないと感じている。「まだ買い替える必要を感じない」という層にとって、現行機のライフサイクルが延びることは、資産価値の維持を意味する。開発者にとっても、普及しきった現行ハードウェア向けに最適化を突き詰める時間が与えられることになる。

2. 真の「次世代」への準備期間

無理に2027年に発売し、高価で中途半端なスペックのマシンを出すよりも、2028年以降に、AI技術(PSSRなどのアップスケーリング)とハードウェアが完全に統合された、手頃な価格の「モンスターマシン」として登場する方が、長期的には業界のためになる可能性がある。

我々は「長い冬」をどう過ごすべきか

Tom Henderson氏のレポートは、ゲーム業界がAIという巨大な潮流に飲み込まれ、その力学に翻弄されている現状を浮き彫りにした。PS6と次世代Xboxが2027年に登場する可能性は、今や風前の灯火と言えるだろう。

しかし、悲観することはない。これは、我々が今持っているハードウェアをより長く、深く愛する時間が与えられたということでもある。そして、嵐(メモリ危機)が過ぎ去った後、2028年あるいは2029年に登場する次世代機は、待つだけの価値がある革新的な体験をもたらしてくれるはずだ。

当面の間、PCビルダーやゲーマーは、価格動向を注視し、必要なアップグレードは早めに行うか、あるいはこの高騰が落ち着くまで「待ち」の姿勢を貫くかの賢明な判断が求められる。


Sources