Appleが来年発表すると噂される新型iPhone、「iPhone 17 Air」(あるいはiPhone 17 Slim)。その最大の特徴は、驚異的な薄さにあると言われる。しかし、そのスリムなデザインを実現するために、バッテリー持続時間という重要な要素が犠牲になる可能性が浮上してきた。情報筋によると、Appleはバッテリーが一日もたないという問題を解決するため、かつて販売していたバッテリー内蔵ケースを復活させる計画を進めているという。
なぜiPhone 17 Airは「バッテリーがもたない」懸念を抱えるのか?
今回の報道の中心にあるのは、iPhone 17 Airのバッテリー持続時間に関するApple社内の評価である。複数の情報源が指摘するように、この問題の根源は、iPhone 17 Airが目指すとされる「超薄型」デザインにある。
驚異の薄さ「5.5mm」への挑戦が生むトレードオフ
噂やダミーモデルによれば、iPhone 17 Airの厚さはわずか5.5mm(0.2インチ)になる可能性があるとされる。これは現行のiPhone 16の厚さ7.8mm(0.3インチ)と比較しても、際立って薄い設計となる。この薄さを実現するためには、内部コンポーネントの小型化や配置の工夫が不可欠となる。
しかし、スマートフォンの内部で最も大きな容積を占める部品の一つがバッテリーだ。物理的なサイズが小さくなれば、必然的にバッテリー容量も小さくならざるを得ない。これが、iPhone 17 Airのバッテリー持続時間に対する懸念の直接的な原因となっている。
Apple内部テストが示す「1日もたない」ユーザーの割合
The Informationが報じた内容によると、Appleが実施した内部テストの結果は、決して楽観視できるものではないようだ。
テストによると、iPhone 17 Airを1日中、途中で再充電することなく使い続けられるユーザーの割合は、60%から70%程度にとどまると推定される。これは、他のiPhoneモデルで通常想定される80%から90%という数値と比較すると、明らかに低い水準だ。
もちろん、これはあくまで内部テストの推定値であり、実際の利用状況はユーザーごとに大きく異なる。どのような使い方を想定したテストなのか、具体的な内容は明らかにされていない。しかし、Apple自身が、現行モデルよりもバッテリー持続時間が短くなる可能性を認識し、対策を検討していることは注目に値する。
解決策は「原点回帰」? 専用バッテリーケース開発の背景
バッテリー持続時間の短縮という課題に対し、Appleが用意しているとされる解決策が、専用のバッテリー内蔵ケースである。
Apple純正バッテリーケース、その歴史と現在
Appleが純正のバッテリーケースを販売するのは、これが初めてではない。2015年にはiPhone 6および6s向けに「Smart Battery Case」を発売した。その後、iPhone 11シリーズまで同様のケースを提供していたが、2021年にMagSafeバッテリーパックが登場すると、従来のケース型は販売を終了した。

MagSafeバッテリーパックは、MagSafe規格を利用してiPhoneの背面に磁力で吸着するタイプで、着脱が容易な点が特徴であった。しかし、従来のケース型もMagSafeバッテリーパックも、「iPhoneが分厚くなる」「かさばる」といった点が指摘されていた。
なぜ今、バッテリーケースなのか?
MagSafeバッテリーパックがあるにも関わらず、なぜAppleはiPhone 17 Air向けに再びケース型のバッテリーアクセサリーを開発するのか。
一つ考えられるのは、iPhone 17 Airの薄さを最大限に活かしつつ、必要な時だけバッテリー容量を補うというコンセプトである。バッテリーケースは、iPhone本体を保護する役割も兼ね備えている。また、ケースとiPhone本体を同時に充電できる利便性も考えられる。USB-CまたはMagSafe経由で接続すれば、個別に充電する手間が省けるだろう。
しかし、最も大きな理由は、やはり「薄型化によるバッテリー容量の犠牲を補う必要性」にあると考えられる。Apple自身が、相当数のユーザー(推定30〜40%)が1日の途中でバッテリー切れを起こす可能性があると判断しているからこそ、追加のバッテリー供給手段を用意する必要に迫られているのではないだろうか。
薄さとバッテリー、避けられないジレンマ
ここで大きなジレンマが生じる。せっかく手に入れた「驚異的な薄さ」というiPhone 17 Air最大の魅力を、バッテリーケースを装着することで、ある程度打ち消してしまうことになるからだ。
ケースがどれほどの厚みと重さを加えるかは現時点では不明だが、5.5mmの本体に装着すれば、結局は現行のiPhoneと同等か、それ以上の厚みになる可能性も否定できない。そうなると、「Air」や「Slim」といった名称が持つ軽快なイメージと、実際の使用感との間にギャップが生まれるかもしれない。
Appleとしては、バッテリーケースをあくまで「オプション」と位置づけ、終日充電なしで使えるユーザーには薄さを、そうでないヘビーユーザーにはバッテリー持続時間を提供するという、二段構えの戦略なのかもしれない。このケースが別売りとなる場合、ユーザーは追加のコストも負担することになる。
バッテリーだけじゃない? iPhone 17 Airの他の特徴とトレードオフ
iPhone 17 Airの超薄型デザインは、バッテリー以外にもいくつかの仕様変更を伴う可能性が指摘されている。
カメラ、スピーカー、SIMスロットも「スリム化」?
報道によると、iPhone 17 Airはリアカメラがシングルレンズ(1眼)のみとなり、スピーカーも1つだけになる可能性があるとのことだ。また、物理的なSIMカードスロットを廃止し、全世界でeSIMのみに対応するモデルになるという情報もある。これらも、内部スペースを確保し、薄型化を実現するためのトレードオフと考えられる。
一方で期待される性能向上も
もちろん、妥協点ばかりではない。iPhone 17シリーズ全体として、メモリ帯域幅の向上による処理能力アップや、標準で12GBのRAM搭載など、性能面での進化も期待される。プロセッサについては、iPhone 17 Airは標準のA19、Proモデルはより高速なA19 Proを搭載するという差別化が行われる可能性も報じられている。
市場はどう反応する? 不透明な需要と今後の展望
全く新しいコンセプトのモデルとなるiPhone 17 Airに対して、市場がどのように反応するかは未知数だ。
サプライヤーは慎重姿勢? 初期生産は限定的か
The Informationのレポートによると、Appleのサプライチェーン関係者は、このユニークなフォームファクターを持つ新モデルに対する需要がどれほどになるか、確信を持てていないようだ。そのため、初期段階では、iPhone 17シリーズ全体の生産能力のうち、約10%のみをiPhone 17 Airに割り当てる計画だと伝えられている。これは、Apple(あるいはサプライヤー)が、市場の反応を見極めながら生産調整を行う、慎重なアプローチを取る可能性を示唆している。
「薄さ」と「実用性」のバランス、ユーザーの選択は?
最終的に、ユーザーはiPhone 17 Airの「驚異的な薄さ」と、「バッテリー持続時間やその他の機能制限」というトレードオフをどう評価するだろうか。バッテリーケースという解決策が用意されるとはいえ、それは追加のコストと、薄型デザインのメリットを一部相殺するものである。
スマートフォンの進化において、薄型化・軽量化は常に追求されてきたテーマだが、それがバッテリー持続時間という基本的な利便性を損なうレベルにまで達した場合、ユーザーの支持を得られるかは不透明だ。筆者としては、技術の粋を集めた薄型化への挑戦には大いに期待したい一方で、多くのユーザーにとって最も重要な要素の一つであるバッテリー持続時間とのバランスを、Appleがどのように取ってくるのか、今後の情報に注目していきたいところだ。
なお、iPhone 17シリーズおよびiPhone 17 Airの発表は、例年通りであれば2025年の秋頃(9月)と予想される。それまでに、さらなる詳細情報や、バッテリーケースに関する具体的な仕様、価格などが明らかになることを期待したい。
Source
- The Information: Apple Plans iPhone Release Schedule Shakeup, New Styles