ロシアの通信大手ロステレコムが、地下データセンターの建設を検討している。露紙Vedomostiの2026年11月2日付報道によると、同社は鉱業大手ノリリスク・ニッケルと交渉を進めているという。ただし、報道は匿名の幹部や関係者の証言に基づくもので、建設の決定や契約の成立が確認されたわけではない。

同紙が伝えた構想は、データを別拠点に複製する対策と、計算資源やサービスを地理的に分散する対策に、地下化による物理的な防護を組み合わせるものだ。データを失わないことと、サービスを止めずに動かすことは、別の課題となる。また、既存の地下データセンターの事例からも、施設を地下に置くだけでは不十分で、電源や冷却設備にも冗長性が求められることが分かる。

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ノリリスク・ニッケルとの交渉が報じられる

Vedomostiによると、ロステレコムは外部からの脅威に対する防護を強化した地下データセンターを検討している。匿名の幹部が計画について説明し、ノリリスク・ニッケルとの交渉については協議に詳しい情報筋が明らかにしたという。別の情報筋も地下データセンターの配置計画を認めたとされる。ただし、建設予定地や地下の深さ、着工・稼働時期は確認されておらず、予算や施設の処理能力も不明だ。

ロステレコムは、すでに地理的に分散したデータセンター網を保有している。同社が11月2日に公表した資料によると、子会社RTK-DCのネットワークは27拠点、合計27,800ラック、総電力235MWに達する。今回報じられた地下データセンター構想は、こうした既存の分散網に加えて検討されている防護策と位置付けられる。

もっとも、拠点数や電力容量は設備の規模を表す数字にすぎない。それだけでは、特定の拠点が使えなくなった際に顧客サービスを自動的に別拠点へ切り替えられるか、施設が外部からの攻撃にどの程度耐えられるかは判断できない。

データの複製、地理的分散、地下化が担う異なる役割

Vedomostiが伝えた構想は、大きく3段階に分かれる。予備拠点にデータのコピーを保存し、計算資源とサービスを地理的に離れた複数の拠点へ分散したうえで、施設の地下化によって物理的な防護を強化するというものだ。それぞれの対策が担う役割は異なる。

段階 配置するもの・変えるもの 主な役割
予備拠点 別の拠点にデータのコピーを保存する データの消失を防ぐ
地理的分散 計算資源とサービスを離れた複数拠点に配置する 処理とサービスを分散する
地下化 データセンターを地下に設置する 施設の物理的な防護を強化する

この分類は匿名幹部が説明した構想に基づくものであり、実際に稼働しているシステムの構成や、各対策の耐障害性を実測したものではない。予備拠点にコピーが残っていれば、元の拠点を失ってもデータを保全できる。しかし、別の場所でサービスを継続するには、計算資源だけでなく、必要なソフトウェアや通信環境も確保しなければならない。地下化は、こうした仕組みのうち施設そのものを物理的な脅威から守るための対策だ。

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地下データセンターにも電源と冷却の冗長化が必要

データセンターを地下に設置しても、機器の稼働には安定した電力供給と冷却が欠かせない。その具体例が、スウェーデンの通信事業者Bahnhofが運営する地下データセンター「Pionen」だ。ストックホルムの旧民間防衛シェルターを転用した施設で、同社は電源設備や冷却システムの仕様を公開している。

Pionenの無停電電源装置(UPS)は1.1MWで、蓄電池による給電時間は最大負荷時に12分とされる。非常用電源としてディーゼル発電機2台が設置され、発電能力は1.8MWと記載されているほか、N+1の冗長構成が採用されている。N+1とは、稼働に必要な機器に加えて予備を1系統確保し、一部が故障しても運転を継続できるようにする設計方式だ。なお、12分という数字は最大負荷時の蓄電池の持続時間であり、施設全体の稼働可能時間を意味するものではない。

冷却設備についても、主冷却用に500kWのヒートポンプ2台、補助用に300kWの液体冷却装置2台を備え、それぞれN+1構成としている。地下化によって施設の物理的な防護を強化することと、電力や冷却設備を冗長化することは、別々に検討する必要がある。これらはあくまでBahnhofが公開したPionenの設備仕様であり、ロステレコムが計画する施設の仕様を示すものではない。

Bahnhofは2026年8月の四半期報告で、ウクライナで得られた教訓から、防護されたインフラと予備電源の重要性が明らかになったと説明している。また、ヨーテボリで整備を進める地下施設「Bahnhof Bunker」について、最初の区画を2027年第1四半期に稼働させる予定も示した。こちらは現時点では将来の計画である。

重要なのは拠点を失ってもサービスを継続できるか

施設の防護と並んで重要なのが、一つの拠点を使えなくなった場合でも、別の場所でサービスを継続できる仕組みだ。Microsoftは2022年11月3日、同社などがウクライナのデジタル基盤をパブリッククラウドへ分散し、欧州各地のデータセンターを通じて重要なサービスを支えたと説明している。これは施設そのものを守る対策とは異なり、計算資源やデータの配置を地理的に分散することで、サービスの継続性を高めようとした事例だ。

米Ars Technicaは、ロシアでは少数の大手事業者への集中が戦時下の脆弱性につながる一方、ウクライナの分散型サービスは比較的高い耐性を示したと論じている。ただし、これは同誌の分析であり、両国の施設やサービスを同一条件で測定した比較結果ではない。ロステレコムについても、公表されている27拠点という数字だけでは、障害発生時にどの程度のサービス継続性を確保できるのかは分からない。

地下データセンターの規模や防護性能だけで、システム全体の耐障害性を評価することは難しい。今後ロステレコムの構想が具体化した場合、注目すべきなのは、拠点の喪失時に計算資源やソフトウェア、通信経路をどのように切り替えるのか、そしてサービスの再開までにどれだけの時間を要する設計なのかという点だ。施設を物理的に守る仕組みと、障害が起きても処理を継続する仕組みの両方が明らかになって初めて、今回の構想の実効性を判断できるだろう。