Samsung ElectronicsとAppleが、折りたたみディスプレイの中央部分だけを薄くしたカバーガラスを、2028年の製品に採用する方向で検討していると、ZDNet Koreaが11月4日に報じた。両社はそれぞれ協力会社と仕様を協議している段階で、採用はまだ決まっていない。検討されているのは、折り曲げる中央部分を約40μm、曲がらない周辺部分を100μm以上とする、場所によって厚さを変えたガラスだ。

対象となるのは、折りたたみディスプレイの表面を覆う超薄型ガラス(UTG)である。中央部分の柔軟性を確保しながら、周辺部分の保護性能を高めることが狙いだ。ただし、ガラスを部分的に薄くするだけでは完成せず、加工によって生じるくぼみや厚さの境界をどう処理するかという課題も残されている。また、OLEDの下に配置する支持構造とは役割が異なり、両者の改良は分けて考える必要がある。

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中央40μm、周辺100μm以上という役割分担

今回の報道で注目されるのは、ガラス全体を均一な厚さにする従来の設計とは異なり、折り曲げる部分と曲がらない部分で厚さを変えるという考え方だ。中央部分は曲げやすさを優先して約40μmまで薄くし、周辺部分は100μm以上の厚さを残す。画面全体を一律に薄くするのではなく、それぞれの部分に求められる役割に応じて厚さを調整する設計である。

ZDNet Koreaによると、厚い周辺部分では表面硬度の向上も狙っているという。ただし、100μm以上という数値は現在協議されている仕様であり、傷の付きにくさや落下時の破損しにくさを実測した結果ではない。同様に、中央部分の約40μmという厚さも今回の検討値であり、折り曲げられるガラスの物理的な限界を示すものではない。ガラスの硬度や耐久性は厚さだけで決まるわけではなく、材料の組成や強化処理、ディスプレイ全体の支持構造などにも左右される。

ZDNet Koreaは8月4日の報道でも、中央部分だけをエッチングによって薄くする技術を「CTG」として紹介していた。エッチングとは、薬液などを使って材料の一部を除去する加工技術である。今回の設計では、中央部分を選択的に削ることで厚さに差を付けることになるが、加工後の表面には段差やくぼみが生じる。そのため、厚さの調整と同時に、ディスプレイの表面を平らに仕上げる技術も重要になる。

削ったくぼみを埋め、平らな画面に仕上げる技術

8月の報道によると、開発では薄くした中央部分に充填材を入れて表面の高さをそろえるとともに、充填材と周囲のガラスの光学特性を近づける取り組みが進められていた。11月の報道でも、削った領域の充填と光学特性の調整が課題として挙げられている。つまり、ガラスの中央部分を薄くできても、それだけで製品として完成するわけではない。異なる材料が接する部分の反射や境界の見え方を抑え、表示品質を損なわないように仕上げる必要がある。

こうした厚さの違いを作り出す加工技術の一例が、Chemtronicsを出願人とする公開特許KR20250039870Aである。2025年3月21日に公開されたこの特許には、ガラス基板に貼り付けた保護フィルムを剥がしながらエッチングすることで、厚い平面部分、傾斜部分、薄い平面部分を形成する方法が記されている。保護フィルムの剥離速度などを調整することで、厚い部分と薄い部分をつなぐ傾斜の形状を制御する仕組みだ。

特許には、折り曲げる部分をガラスの中央に配置する実施形態も示されている。また、厚さが変化する部分の傾斜形状は、光の反射や境界の見え方にも関係すると説明されている。単純にガラスを削るだけでなく、厚さが変化する部分を滑らかにつなぐことも、表示品質を確保するうえで重要だと分かる。

もっとも、この特許がSamsung ElectronicsやAppleの検討している製品に採用されるという証拠はない。あくまで、部分的に薄いガラスを製造する際に利用できる加工技術の一例であり、特許の公開を量産技術の確立や製品への採用決定と結び付けることはできない。今回の報道と合わせて読み取れるのは、ガラスの厚さを調整する工程に加え、加工後の段差や光学特性を整える工程も、実用化に向けた重要な課題になっているという点だ。

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表面ガラスとOLED下の支持構造は別の技術

ガラスの曲げやすさや耐久性は、厚さだけでなく材料自体の特性にも左右される。ガラスメーカーのSCHOTTは、超薄型ガラスの柔軟性や強度を高めるうえで、材料組成と化学強化が重要だと説明している。中央と周辺で厚さを変える設計は、ガラスのどの部分を薄くするかという問題であり、材料や強化方法の選択とは異なる技術的な課題である。

また、Samsungが2026年7月15日に公式発表した「Flex Titanium」は、OLEDの下にチタン合金フィルムとチタンプレートを配置する構造だ。同社によると、これらの部材でディスプレイを内側から支えることで、薄さと柔軟性、強度の両立を図っている。中央部分だけを薄くするカバーガラスとは改良する場所が異なり、両者は同じ技術の後継・代替関係にあるわけではない。

各技術が対象とする部分と、その役割を整理すると次のようになる。

対象 変更内容 狙い・課題 現時点で確認できること
表面ガラスの厚さ 中央約40μm、周辺100μm以上 中央の曲げやすさと周辺の保護性能の両立 ZDNet Koreaが報じた検討案。製品仕様は未確定
厚さの境界と充填 傾斜形状の制御、くぼみへの充填材の使用 表面の平坦化、反射や境界の見え方の改善 Chemtronicsの公開特許は加工技術の一例。8月報道では充填技術の開発状況を紹介
ガラス材料 材料組成と化学強化 柔軟性と強度の向上 SCHOTTの技術解説。今回の採用材料を示すものではない
OLED下の支持構造 チタン合金フィルムとチタンプレート ディスプレイを内側から支える Samsungが発表したFlex Titaniumの構成

これらは異なる部分や工程に対する技術改良であり、表に挙げた資料も同一製品の性能を比較したものではない。例えば、OLED下の支持構造を強化しても、表面ガラスの充填材や光学特性に関する課題まで解決するとは限らない。また、CTGをFlex Titaniumの後継技術や代替技術と捉えるのも適切ではない。折りたたみディスプレイの耐久性を評価するには、各部材が担う役割と、それぞれの改良によって何が改善されるのかを区別する必要がある。

2028年採用に向けた今後の焦点

採用時期については、8月と11月の報道で見通しが変化している。8月には早ければ2027年にも適用されるとの期待が伝えられていたが、11月の報道では、2028年の採用を目指して仕様の協議が進んでいるとされた。最終的な採否は2027年10〜12月に決まるとの業界関係者の見方も紹介されている。また、2027年の製品には引き続き、厚さが均一な従来型UTGが使用される見通しだという。

ただし、これらはSamsung ElectronicsやAppleが正式に発表した製品計画ではなく、開発動向に関する業界関係者の見通しである。そのため、採用時期が2027年から2028年へ正式に延期されたと断定することはできない。現時点では対象機種や価格も明らかになっておらず、量産時の歩留まりや耐久性に関する具体的な測定結果も公表されていない。

今後の焦点は、中央と周辺の厚さを変えたガラスを、表示品質と耐久性を損なわずに製品化できるかどうかだ。特に、充填材とガラスの境界がどの程度目立つのか、繰り返し折り曲げた場合にどのような影響が生じるのかを、具体的な試験条件とともに確認する必要がある。厚さを部分的に変える設計が、実際の製品で見やすさや保護性能の向上につながるかどうかが、採用を判断するうえで重要になる。