TSMCは、AI半導体向けの先端パッケージ能力が逼迫し、外部のOSATと協力して供給を増やしている。台湾の中央通訊社は7月12日、CoWoS不足を背景に、IntelのEMIBや日月光半導体製造(ASE)、矽品精密工業(SPIL)、力成科技(PTI)などへ受注機会が広がっていると報じた。ただし、Intelへ移った顧客名や数量は明らかでない。AMDが台湾勢と育てるEFBも、CoWoS不足が原因だとは公表されていない。TSMCが主導権を保つ工程委託と、別方式への設計移行を分けると、各社が得る商機の中身が見えてくる。
CoWoS不足はTSMC自身が認めた
TSMCのC.C. Wei CEOは4月16日の2026年第1四半期決算説明会で、同社の先端パッケージ能力は「非常に逼迫している」と認めた。顧客需要を満たすには、OSAT(半導体後工程受託企業)との協力が必要だという。自社能力も増やしているが、なお足りないという説明である。今回の外注拡大は、二次報道だけから生まれた観測ではない。
需給差の絶対値はTSMCが公表していない。経済日報は6月15日、機関投資家の推計として、CoWoSの供給不足が当時の約20%から2026年末には約10%へ縮む可能性があると報じた。数字は会社計画ではなく外部推計だが、急速な増産を織り込んでも年内に不足が消えないという見方を示している。
需要側では、パッケージ一つが使う面積も増えている。TSMCは現在、露光装置の光罩1枚で一度に描ける面積の5.5倍に相当するCoWoSを生産中だ。2027年には9.5倍、2028年には14倍へ広げ、14倍版では大型の演算ダイ約10個とHBM(高帯域幅メモリ)20スタックを統合する計画である。生産枚数を増やしても、1製品が占めるパッケージ面積と工程負荷は同時に膨らむ。増産だけでは不足を解きにくい理由がここにある。
工程委託、別方式、顧客移管の三層
「注文の波及」は、商流と技術の違いから三つに分かれる。
| 外へ出る仕事 | 代表例 | 設計・顧客関係を握る側 | TSMCへの競争圧力 |
|---|---|---|---|
| TSMC方式の工程委託 | Amkorへの先端パッケージ・検査サービス発注 | TSMCがターンキー供給を主導 | 小さい。能力拡張として働く |
| 別方式の認定・量産 | AMDのEFBとASE、SPIL、PTI | 半導体設計会社とOSAT | 中程度。用途ごとに代替市場が育つ |
| 競合方式への顧客移管 | CoWoS候補設計をIntel EMIB-Tへ移す案件 | Intelと顧客 | 大きい。ただし公表済み大口案件は限られる |
第1の流れでは、TSMCが顧客との契約や工程設計を握ったまま、後工程の一部をOSATへ委ねる。売上の一部は外へ出ても、TSMCの3DFabricエコシステムとターンキー供給は強くなる。6月16日にTSMCとAmkorが結んだ10年契約は、この型に当たる。両社はアリゾナ州で能力を増やし、TSMCがAmkorから先端パッケージ・検査サービスを調達する枠組みを設けた。
第2と第3の流れは事情が違う。パッケージ方式が変われば、ダイ間の配線と基板構成を設計し直す必要がある。電力供給と放熱も変わり、反りや検査方法を含めて認定を取り直す。完成前の同じウエハーを空いている工場へ運ぶ感覚では切り替えられない。顧客は設計の早い段階で第2供給網を組み込み、試作と歩留まり検証を重ねる必要がある。ここで認定を取った企業は、TSMCの増産後も供給網に残りやすい。
Intel EMIB-Tはどこまで代替になれるか
IntelのEMIB(Embedded Multi-die Interconnect Bridge)は、大きなシリコンインターポーザーでパッケージ全体を覆う方式と異なる。高密度配線が必要な場所だけへ、小さなシリコンブリッジを埋め込む方式だ。EMIBは2017年から量産されており、Intelは2025年に、ブリッジへTSV(シリコン貫通電極)を加えて電力供給と帯域の拡張性を高めたEMIB-Tを導入した。2026年は、この技術を外部顧客向けに量産へ移せるかを試す年になる。
技術上の準備は進んでいる。Intelは2026年のECTC(電子部品技術会議)で、EMIB-Tの第1層接続ピッチを25マイクロメートルまで縮め、最大120×120ミリメートルのパッケージに、光罩面積の9倍を超える演算・メモリ用シリコンを統合できると説明した。2025年第4四半期の決算資料でも、2026年後半の立ち上げを望む顧客に向け、品質と歩留まりを改善しているとした。
一方で、商用実績は技術資料ほど明瞭ではない。Intelは2025年の年次報告書で、外部ファウンドリー顧客は現状「少数」だと記している。中央通訊社の報道も、Intelへ流れた顧客名、注文額、量産数量は示していない。したがって確認できるのは、EMIB-TがCoWoS不足を受け止める有力候補となり、顧客が2026年後半の量産を検討しているところまでだ。大口顧客が広く移ったとはまだ言えない。
TSMCも大型化で対抗する。Intelの発表は、EMIB-Tが演算・メモリ用シリコンを合計で光罩面積の9倍超まで載せられるとする。一方、TSMCの5.5倍、9.5倍、14倍はCoWoSパッケージのレチクルスケールを表す。対象が異なるため、この倍率を並べて優劣は決められない。局所ブリッジと全面または成形インターポーザーでは、構造も得意な製品も違う。勝敗を決めるのは最大面積ではなく、必要なHBM数と帯域を満たし、許容コストと歩留まりで量産できるかである。
台湾OSATが先に取る実需
短期の受注で先行しているのは、Intelより台湾OSATだ。AMDは5月21日、台湾の半導体・システム供給網へ100億ドル超を投じる計画を発表し、ASEとSPILとはウエハーベースの2.5D EFB(Elevated Fanout Bridge)を共同開発・認定すると表明した。PTIとはパネルベースの2.5D EFBを認定済みで、次世代EPYC「Venice」を支える技術に挙げている。
EFBは、CoWoSの空き枠をそのまま借りる話ではない。AMDが自社のチップレット設計に合わせ、複数のOSATと別の2.5Dブリッジ供給網を作る取り組みである。ウエハーベースとパネルベースを並行して認定するため、能力、コスト、供給地域を製品ごとに選べる。TSMCで先端ロジックを製造しつつ、後工程ではTSMC以外の方式を採る分業も広がっている。
TSMCとAmkorの契約、AMDと台湾OSATのEFBは、外から見ると同じ「外注」に映るかもしれない。しかし前者はTSMCのサービス能力を外側へ延ばし、後者は設計会社が別方式を育てる。OSAT各社は両方から仕事を得られる。TSMCにとって本当の競争圧力になるのは、外注量の多さではなく、後者の認定済み設計が何世代続くかだ。
2027年までに確かめる三つの数字
第1はIntelが公表できる量産顧客数と受注規模である。EMIB-Tの最大寸法や接続ピッチが優れていても、2026年後半の立ち上げが匿名の試作にとどまれば、CoWoSの市場支配を崩す力は弱い。逆に、HBMを多用するAI ASICで顧客名と量産時期が出れば、Intelの先端パッケージ事業は外部ファウンドリー拡大の突破口を得る。
第2は、約20%から約10%へ縮むとされたCoWoS需給差の実績だ。TSMCの増産とOSATへの工程委託で不足が解消へ向かえば、競合方式へ急いで移る動機は薄れる。それでも認定済みの第2供給網は、地政学リスクと需要急増に備える保険として残るだろう。
第3は大型パッケージの歩留まりと投入時期である。TSMCの9.5倍版CoWoSが2027年に予定どおり立ち上がるか、Intelが120×120ミリメートル級EMIB-Tを顧客製品で量産できるかが分岐点になる。直近では、TSMCが7月16日に開く第2四半期決算説明会で、先端パッケージの能力増強とOSAT分業について新しい説明が出るかを確かめたい。注文の波及が一時的な混雑処理で終わるのか、新しい供給網として定着するのかは、顧客名、量産数量、歩留まりの三つがそろった時に決まる。