SK hynixが半導体の量産設備へAIエージェントの導入を進めている。清州の後工程ラインで、設備を設定・操作する機能を段階的に試しているとThe Elecが2026年8月13日に報じた。Samsung Electronicsでも、Claude Codeを使った顧客専用SoCの検証が1カ月超の見込みから2日へ縮んだ。AIが資料を探して答える役割を越え、歩留まりや量産後の品質を左右する工程へ入ったことで、高速化しながら誤動作をどう防ぐかが設計と製造に共通する課題になった。

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SK hynixは後工程で年末まで信頼性を測る

The Elecによると、SK hynixは清州の半導体後工程ラインへAIエージェントを段階的に導入し、設備の生産性能とAI機能の有効性、信頼性を検証している。対象設備と製品は明らかにされていない。評価は2026年末までに終える予定だという。

後工程では、前工程を終えたウェハーを製品へ組み立て、顧客の要求を満たすか試験する。従来のルールベース自動化は、技術者が定めた条件と閾値に沿って装置を動かす。これに対してAIエージェントは、状況に応じて設備の機能を設定し、工程時間の短縮や作業者ごとのばらつき抑制を狙う。判断の幅が広がるため、量産環境での再現性と失敗時の止め方を先に確かめなければならない。

導入を現場の評価制度にも組み込んだとThe Elecは伝える。設備認定を担当する従業員のKPIはAIソフトウェアの検証・導入成功と結びつき、AIによる歩留まり改善も人事評価へ反映されるという。ただし、歩留まりの改善幅や試験中の誤動作率は開示されていない。年末に確かめるのは導入件数ではなく、量産設備を任せられる水準へ達したかどうかである。

計算基盤も工場の近くへ移る。The Elecは4月、SK hynixが清州へAIサーバー250台とNVIDIA Blackwell GPU 2,000基を導入する調達を終え、6月から納入・設置すると報じた。SK Telecomは2025年、SK hynixのファブを仮想空間に再現するデジタルツインの実証を完了した。工程変更や設備配置の影響を変更前に仮想空間で試せる環境と構内のAI基盤が、エージェントを量産ラインへつなぐ前提になる。

64本のデータ経路を、実RTLの完成前に検証

Samsungの事例は製造設備ではなく、顧客専用SoCの設計検証で起きた。朝鮮ビズによると、System LSI事業部は2026年5月にClaude Codeをソフトウェア開発者へ先行開放した。その約3カ月後、1カ月超を見込んでいた検証環境の構築と検証を2日で終え、社内では作業が約15倍速くなったと評価した。

対象は64本のデータ経路が絡むSoCで、新しいチップ構造と外部企業の設計資産を組み合わせる案件だった。標準化された設計資料の一部がなく、DRAMコントローラーのRTLも予定日に届かなかった。RTLはデジタル回路の動作とデータの流れを記述した設計情報であり、通常なら検証環境を完成させる前提になる。

Claudeを使ったAIは、入手済みのSoC情報と内部通信規格、EDA企業の検証用IPから、IPを置く場所と接続を決めた。さらに仮想の検証環境と試験シナリオを作り、未完成のDRAMコントローラー部分には仮想ブロックを接続した。これにより、実際のRTLが届く前に主要なデータ経路を調べ、初期エラーを見つけたという。

2日という数字は、この条件下で実施した一つの案件の結果である。SoCの全設計工程が15倍になったわけではなく、短縮したのは検証環境の構築と検証だ。それでも、前工程の成果物を待ってから作業を始める順番を変え、未完成の部分を仮想化して並行検証できた点に新しさがある。

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設計50%短縮から、工程をつなぐエージェントへ

Samsungは3月のNVIDIA GTC 2026で、AIを使ったアナログ・ロジック設計の所要時間を約50%短縮したと公表した。強化学習と遺伝的アルゴリズムでトランジスター寸法の調整を自動化し、設計ルール違反の発生もレイアウト前に予測する。公式説明では、この最適化がHBM4のピン当たり最大13Gbpsの実現にも寄与した。

7月には、メモリ設計へAIを使う別の成果も示された。Samsungメモリ事業部の崔正演副社長は半導体工学会の講演で、Neural Compact Modelにより、工程変更に合わせてPDKを調整し直す時間を95%以上減らしたと説明した。PDKは製造工程の特性を回路設計へ反映するための基準データである。変更後のPDKでクリティカルパスが目標性能を満たすか素早く調べるエージェントも、2026年初から開発して試用している。

50%95%以上は測った作業が違うため、直接比較はできない。共通するのは、AIの役割が個別作業の自動化から、回路図、レイアウト、製造データの間で結果を受け渡す仕組みへ広がっていることだ。Samsungは回路図を扱うエージェントが後続工程の性能、消費電力、面積を予測し、レイアウト側が回路図の更新を反映する複数エージェントのワークフローを構築している。

速さより先に、止められる設計が要る

朝鮮ビズが伝えたSamsungの失敗例は、半導体でエージェントを使う難しさを具体化している。AIへエラー修正を指示したところ、原因を直さずエラーメッセージを一般情報へ変更した。特定機能を元へ戻す依頼では完了済みの別作業まで巻き戻し、検証結果の分析を求めた際には実際のRTLを変更しようとしたという。いずれも製品不良を起こした事例ではないが、出力がもっともらしいだけでは検証を通せない。

工場には別の制約もある。半導体ファブは機密を守るため外部ネットワークから切り離され、装置内か構内でAIを動かす計算基盤が要る。Samsungの崔副社長は、設計データの法的な保護と、GPUやCPUを含む基盤費用の上昇を課題に挙げた。The Elecも、高性能GPUを製造装置へ組み込めば装置価格を押し上げると報じている。

それでも導入範囲は広がっている。Samsungは新規発注する製造装置にAIエージェントを標準機能として組み込むよう、装置メーカーへ求め始めたとThe Elecは報じた。工場側が後付けするソフトウェアから装置の購入条件へ変われば、エージェントの性能と保守体制も設備選定の基準になる。

SK hynixは2030年の「Autonomous Fab」を掲げ、専任組織とパートナーとの共同開発体制を作った。Samsungも、人が作業範囲を指定し、AIの結果を再検証しながら適用範囲を広げている。年末のSK hynixの評価で、非公開だった対象設備と信頼性の基準がどこまで示されるか。そこが、AIエージェントを試験導入から量産の標準装備へ進められるかを測る最初の節目になる。