Amazonは2026年10月29日、7〜9月期の決算を発表した。クラウド事業のAWS(Amazon Web Services)は売上高が前年同期比39%増の459.8億ドルとなり、同社によれば約5年ぶりの高い成長率を記録した。一方、Amazon全体の営業キャッシュフロー(営業CF)は前年同期から69億ドル増えたものの、設備投資にあたる有形固定資産の購入額は422億ドル増加した。営業CFの増加額は設備購入額の増加分の約16%にとどまり、AWSの急成長によるキャッシュの増加が、設備投資の拡大に追いついていないとみられる。本稿では決算資料からこの資金収支を検証するとともに、5,780億ドルに達したとされるAWSの受注残が、先行投資を正当化する根拠となるかを考察する。
AWSの成長率は5四半期連続で加速
AWSの7〜9月期売上高は459.8億ドルとなり、前年同期の330.1億ドルから39%増加した。営業利益も前年同期の114.3億ドルから177.7億ドルへと55%増加している。為替の影響を除いた売上成長率は、2025年4〜6月期の17%を起点に、20%、24%、28%、37%、39%へと5四半期連続で上昇した。AI需要の拡大を背景に、AWSの成長が加速していることは数字からも明らかだ。
Amazon全体の売上高は前年同期比12%増の2,019.4億ドル、営業利益は280.8億ドルで、営業利益率は13.9%だった。大型セール「Prime Day」の開催時期が前年の7〜9月期から今年の4〜6月期に移った影響があり、Amazonはこの変更がなければ売上成長率は約4ポイント高かったと説明している。純利益は206.9億ドルとなり、前年同期の211.9億ドルをわずかに下回った。同社は減益の主因として、前年同期の利益に含まれていたAI企業Anthropicへの出資に伴う95億ドルの評価益(税引前)を挙げている。
一方、小売事業の成長は比較的緩やかだった。オンラインストアの売上高は684.7億ドルで、前年同期比2%増にとどまった。広告事業の売上高は196.4億ドルとなったものの、為替の影響を除いた成長率は前四半期の26%から12%に鈍化した。AmazonはPrime Dayの開催時期の変更などが影響したと説明しており、10〜12月期には成長率が10%台後半に回復すると見込んでいる。
設備投資については、2026年の現金支出ベースで約2,200億ドルとする見通しを維持した。さらに、CNBCによると、CEOのAndy Jassyは決算説明会で、2027年には2026年を「かなり上回る額を支出する」(spend meaningfully more)と述べている。AWSの成長に合わせて投資をさらに拡大する方針だが、それに伴う資金負担も増している。
営業キャッシュフローの増加額は設備投資の増加分の約16%
今回の決算で特に注目すべきなのが、営業キャッシュフローと設備投資の増加ペースの違いだ。7〜9月期の連結営業CFは前年同期の355億ドルから424億ドルへ69億ドル増加した。一方、設備投資にあたる有形固定資産の購入額は、351億ドルから773億ドルへ422億ドル増加している。つまり、営業CFの増加額は設備購入額の増加分の約16%にすぎなかった。いずれも連結キャッシュフロー計算書に記載された3か月間の数値であり、購入額は資産の売却収入などを差し引く前の総額である。
営業CFと設備購入額の総額を比較すると、前年同期は営業CFが購入額の約101%を占めていたのに対し、今期は約55%まで低下した。前年同期には営業CFが設備購入額を約4億ドル上回っていたが、今期は逆に約348億ドル下回っている。なお、約16%という数字はあくまで前年同期からの増加額同士を比較したものであり、営業CF全体で設備投資の16%しか賄えていないという意味ではない。
ただし、AmazonはAWS単独のキャッシュフローを開示していないため、この資金不足の全額をAWS向け設備投資によるものと断定することはできない。それでも同社は、設備投資の増加が主にAIへの投資を反映したものだと決算資料で説明している。AIインフラの拡張が、連結ベースのキャッシュフローを圧迫していることは確かだ。
この構図は、Amazonが開示するフリーキャッシュフロー(FCF)にも表れている。同社のFCFは、営業CFから有形固定資産の購入額を差し引き、売却収入やインセンティブを反映した指標だ。直近12か月のFCFは、前年同期の148億ドルの黒字から424億ドルの赤字に転落した。前四半期末時点では76億ドルの赤字だったため、わずか3か月で赤字額が5倍以上に膨らんだ計算になる。
設備投資による負担は、今後の損益計算書にも影響する。設備を取得した時点では購入額の全額が営業費用になるわけではなく、減価償却を通じて数年間にわたり費用として計上されるためだ。すでに7〜9月期の減価償却費などは前年同期の168億ドルから209億ドルへ約25%増加しており、過去の設備投資が費用として表れ始めている。
資金調達面でも変化がみられる。財務活動によるキャッシュフローは489億ドルの流入となり、前年同期の約0.4億ドルの流出から大きく増加した。利息費用も前年同期の5.4億ドルから16.9億ドルへ増えている。外部から調達する資金が増えるとともに、そのコストも利益を圧迫し始めている。
5,780億ドルの受注残は巨額投資を正当化するのか
こうした資金負担に対する有力な反論は、AWSにはすでに巨額の需要があり、設備投資の先行は合理的だというものだ。GeekWireによると、Jassyは決算説明会で、AWSの受注残が5,780億ドルに達し、前年の2倍以上になったと明らかにした。これは契約済みながら、まだ売上として計上されていない将来の取引額を指す。巨額の受注残が存在するのであれば、現在の設備投資は将来の収益を確保するための先行投資と解釈できる。
需要の拡大を裏付ける数字は決算資料にもある。AWSの生成AI向けサービス「Amazon Bedrock」では、Fortune 500企業による支出が前年比で約7倍、処理されたトークン量が約17倍に増加した。また、AWSの営業利益率は38.7%となり、前年同期の34.6%を上回っている。需要が急増するなかでも、高い収益性を維持していることが分かる。
それでも、現時点での見立てを変えるには至らない。受注残は将来の売上につながる契約額であり、現金を回収する時期は契約ごとに異なる。さらに、5,780億ドルという受注残の数字は決算資料には記載されておらず、決算説明会での経営陣の発言に基づくものだ。AWSの営業利益率も前年同期からは改善した一方、前四半期の39.4%からは低下している。
今回の分析が問題にしているのは、あくまで7〜9月期における営業CFと設備投資の増加ペースの差であり、巨額投資が最終的に回収できないと主張するものではない。CNBCによると、Jassyも決算説明会で、投資から魅力的な財務リターンが得られる見通しだと述べている。ただし、その見通しが実際のキャッシュフローに反映されるまでには時間がかかる可能性がある。
日本に関係する動きとしては、音声AIサービス「Alexa+」の提供地域がオーストラリア、インドとともに日本にも拡大したことが挙げられる。もっとも、今回の決算資料にはAlexa+単独の売上高は記載されていない。そのため、このサービスの展開が営業CFにどの程度寄与しているかは判断できず、今回の資金収支の差を説明する材料にはならない。
決算後の株価は時間外で7%超下落、次の焦点はキャッシュフローの改善
決算発表日の10月29日、Amazon株の通常取引の終値は243.79ドルで、前日比4.3%安だったとFinancial Newsは伝えている。決算発表後の時間外取引では、さらに7%超下落したとCNBCとGeekWireが報じた。ただし、株価の下落は決算発表前の通常取引ですでに始まっており、値下がりのすべてを決算内容によるものとみなすことはできない。また、時間外取引の株価は通常取引の終値とは区別する必要がある。
同じ週には、Microsoftが年間の設備投資見通しを1,750億ドルから1,700億ドルへ引き下げた一方、Alphabetは1,950億〜2,050億ドルという見通しを維持したとCNBCが伝えている。これに対してAmazonは、2027年に設備投資をさらに増やす方針を示した。主要テクノロジー企業がAIインフラへの巨額投資を続けるなか、Amazonはとりわけ積極的な投資拡大を目指していることになる。
今回の見立てを検証するうえで重要なのは、次の四半期に営業CFの増加が設備投資の増加にどの程度追いつくかだ。具体的には、営業CFの前年同期からの増加額を、有形固定資産の購入額の前年同期からの増加額で割った比率を確認する。この比率が7〜9月期の約16%を明確に上回れば、営業CFの増加が設備投資の拡大に追いつき始めたと判断する材料になる。 ただし、設備購入額の増加ペースが鈍化するだけでも比率は改善し得るため、営業CF自体の増加額や設備購入額の実額も併せて確認する必要がある。
2026年1〜9月の有形固定資産の購入額は累計1,757億ドルだった。年間約2,200億ドルという設備投資見通しを単純に当てはめると、10〜12月期の支出は約443億ドルとなり、7〜9月期の773億ドルを下回る計算になる。ただし、会社が示す年間見通しは現金支出ベースであり、キャッシュフロー計算書に記載された購入額とは定義に差があるため、厳密に一致するとは限らない。
さらにAmazonは、2027年には設備投資を一段と拡大する方針を示している。2027年と2028年に40%超の成長を見込む会社の見通しに対しても、投資負担が増すなかで営業CFを十分に拡大できるかが重要になる。AWSの需要拡大と収益性の高さは確かな強みだが、それを連結ベースのキャッシュ創出力へどれだけ早く結び付けられるかが、今後の投資を評価するうえでの焦点となる。



