2025年第2四半期、半導体市場の勢力図に関する新たなデータが市場調査会社Mercury Researchから発表された。長年Intelが絶対的な支配を続けてきたx86プロセッサー市場において、AMDがデスクトップおよびサーバーセグメントで歴史的なシェアを獲得。特に、高収益な市場におけるAMDの躍進は、単なるユニット数の競争から「価値」を巡る戦いへと、ゲームのルールそのものが変化しつつあることを鮮烈に示している。

しかし、物語はAMDの圧勝という単純なものではない。Intelはモバイル市場で着実にシェアを奪い返し、逆襲の機会をうかがっているのだ。

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デスクトップ市場の地殻変動:Ryzenが築いた金字塔

今回の調査で最も衝撃的だったのは、デスクトップCPU市場におけるAMDの躍進だろう。かつては「Intelの安価な代替品」というイメージがつきまとったAMDだが、今やその姿はない。性能と価値の両面で市場の主導権を握りつつある。

ユニットシェア32.2% – 歴史的な大台を突破

2025年第2四半期、AMDのデスクトップCPUにおけるユニット(出荷数)シェアは32.2%に達した。これは前期比で4.2ポイント、前年同期比では実に9.2ポイントもの増加であり、AMDにとって過去最高の記録となる。市場のおよそ3分の1をAMDが占めたという事実は、この変化が一時的なものではなく、構造的なものであることを物語っている。

この数字が持つ歴史的な重みは、過去との比較でより鮮明になる。2016年頃のIntelとAMDの販売比率は「9対1」と、Intelが圧倒的だった。それが今や「2対1」にまで縮小しているのだ。これは、AMDのZenアーキテクチャ登場以降の粘り強い製品開発と戦略が、ついに市場の常識を覆した瞬間と言えるだろう。

収益シェアはさらに加速 – 「価値」の戦いを制するX3D

さらに注目すべきは、ユニットシェア以上に収益シェアが伸びている点だ。AMDの同セグメントにおける収益シェアは39.3%にまで上昇。前年同期比で20.5ポイントという驚異的な伸びを記録した。これは、AMDが単に出荷数を増やしているだけでなく、より高価で利益率の高いハイエンド製品の販売で成功していることを明確に示している。

この成功の立役者は、間違いなくゲーマーから絶大な支持を受ける「Ryzen X3D」シリーズだろう。独自の3D V-Cache技術により、ゲーム性能を飛躍的に向上させたこれらのプロセッサーは、パフォーマンスを最優先するエンスージアスト層の心を掴んだ。WCCFTechが報じているように、Ryzen X3Dや最新のAM5プラットフォーム製品は、世界中の多くのオンライン小売業者でベストセラーチャートの常連となっている。

かつてAMDは低価格帯でIntelの製品ラインナップの隙間を突く戦略を取っていたが、今は違う。ゲーミングやコンテンツ制作といった、最も要求が厳しく、そして最も付加価値の高い領域で、Intelと正面から渡り合い、勝利を収め始めているのだ。これは、AMDがブランドイメージの転換に成功し、「高性能」の代名詞としての地位を確立した証左に他ならない。

サーバー市場の攻防:EPYCが収益の4割を掌握

デスクトップ市場がコンシューマーの動向を映す鏡だとすれば、サーバー市場はテクノロジー業界全体の潮流を決定づける、より巨大で戦略的な戦場だ。そして、この最も重要な戦場においても、AMDはIntelの牙城を大きく揺るがしている。

収益シェア41% – データセンターのパワーバランスに変化

AMDのサーバー向けプロセッサー「EPYC」は、2025年第2四半期に収益シェア41.0%という金字塔を打ち立てた。前年同期比で7.2ポイント増というこの数字は、データセンターという巨大な収益源のパワーバランスが、今まさに変化していることを示している。クラウドプロバイダーや大企業のエンタープライズ需要が、EPYCの優れたコア数、電力効率、そして総所有コスト(TCO)を評価し、採用を拡大していることがこの数字に直結している。

Intelにとって、データセンター事業は長らく「金のなる木」であった。しかし、その聖域にAMDが深く切り込み、収益の4割以上を奪い取ったという事実は、Intelの経営戦略に深刻な影響を与える可能性がある。

伸び悩むユニットシェア – Intelの反撃と次なる戦場

一方で楽観一辺倒ではいられない側面もある。AMDのサーバー市場におけるユニットシェアは27.3%と、前期比ではわずか0.1ポイントの微増に留まっているのだ。これは、Intelが最新の「Xeon 6」シリーズなどで価格と性能のバランスを取り、一部の顧客を繋ぎ止めることに成功している可能性を示唆している。

物語は単純なAMD圧勝劇ではない。Intelは依然として出荷数では7割以上のシェアを維持しており、その巨大な顧客基盤とエコシステムは健在だ。AMDのユニットシェアの伸びが鈍化したことは、競争が新たなフェーズに入り、Intelの反撃が始まっている兆候とも見て取れる。AMDは次世代の「Turin」や、その先の「Venice」「Verano」といったロードマップでさらなる性能向上を計画しており、今後、両社の技術開発競争は一層激化するだろう。

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モバイル市場:Intel、逆襲の狼煙

AMDがデスクトップとサーバーで快進撃を続ける中、IntelはノートPCを中心とするモバイル市場で反撃に転じている。このセグメントでの動きは、Intelが依然として強力な競争力を持っていることを示している。

Intelが奪い返したユニットシェア

2025年第2四半期、AMDのモバイルCPUのユニットシェアは20.6%へと後退した。これは前期比で1.9ポイントの減少であり、2四半期連続のシェア低下となる。対照的に、Intelはこのセグメントでシェアを79.4%まで回復させた。

この結果は、Intelが持つOEM(PCメーカー)との強固な関係性、ブランド力、そして広範な製品ポートフォリオの強さを改めて浮き彫りにした。ノートPC市場は、個々の性能だけでなく、プラットフォーム全体としての魅力やメーカーとの協力関係が販売を大きく左右する。Intelはこの領域で長年のアドバンテージを活かし、AMDの猛追を食い止めた形だ。

AMDの課題とRyzen AIへの期待

AMDにとって、モバイル市場は今後の成長に向けた重要な課題となる。ユニットシェアは減少したものの、収益シェアは21.5%と、前年同期比では3.9ポイント増加している。これは、AMDが比較的高価格帯の製品で健闘していることを示唆するが、市場全体での存在感を高めるには、より広い価格帯での浸透が必要となる。

今後の鍵を握るのは、AI処理能力を大幅に強化した「Ryzen AI 300」シリーズだろう。現在、この新プロセッサーはまだ市場への供給が本格化していない段階にある。AI PC時代が本格的に到来する中で、Ryzen AI 300シリーズが市場に広く受け入れられれば、モバイル市場の勢力図を再び塗り替える可能性は十分に残されている。

x86市場は新たな競争フェーズへ

2025年第2四半期の市場データが示すのは、単なるシェアの数字の変動ではない。それは、長らく続いたIntel一強時代が終わりを告げ、AMDという強力なライバルとの真の競争時代に突入したという、x86市場の構造的な変化である。

AMDの成功は、Zenアーキテクチャという優れた技術革新を基盤に、デスクトップではエンスージアストの心を掴み、サーバーでは企業のTCO削減という現実的なニーズに応えるという、的確な製品戦略の賜物だ。特に、収益性の高いハイエンド市場でIntelからシェアを奪っている点は、今後の利益成長において大きな意味を持つ。

一方、Intelはモバイル市場での反撃に見られるように、依然として巨大な企業体力と市場での影響力を保持している。Hothardwareが伝えるように、同社は現在、組織再編や経営陣の刷新といった大きな変革の最中にある。この変革が成功し、開発中の3D V-Cache対抗技術「bLLC」のような革新的な製品を市場に投入できれば、再び競争の主導権を握る可能性もある。

この激しい競争は、我々ユーザーにとっては朗報だ。両社が互いに切磋琢磨することで技術革新は加速し、より高性能で多様な選択肢が生まれるだろう。x86市場の新たな競争フェーズは、まだ始まったばかりだ。巨人たちの次の一手が、テクノロジーの未来を左右する。


Sources