中国の半導体製造装置大手AMEC(中微公司)は2026年8月1日、今後5年で高性能な半導体製造装置の品種を少なくとも60%カバーする計画を打ち出した。目標は市場シェア60%ではなく、扱える装置の種類を100超へ増やすという意味である。2025年売上の約8割をエッチング装置が占める同社にとって、薄膜形成や計測・検査に加え、CMPを含む湿式工程へ広がる総合メーカーへの転換宣言だ。成否は、増えた製品名ではなく、何機種が顧客の認証を通り、再注文を得るかで決まる。
60%は市場シェアではなく、100種類超の品種計画
AMECの尹志尭会長は、上海臨港で開いた創立22周年と本社ビル竣工の式典で、5年以内に高性能装置の品種を少なくとも60%カバーすると表明した。対象には大部分のプラズマエッチング装置や薄膜形成装置、湿式装置が入り、製品数は100種類を超えるという。2035年までには、規模、製品競争力、顧客満足度で世界の第1グループに入る目標も示した。
この数字は、2024年時点の計画をかなり前へ進めたものだ。AMECは2024年半期報告で、今後5〜10年をかけて集積回路の重要分野にある装置の50〜60%を、自社開発と提携先との協業でカバーするとしていた。今回の発言では期限を5年に縮め、60%を下限に置いた。2031年ごろまでに製品群を一気に広げる計算になる。
生産能力も同じ時間軸で増やす。上海の臨港と金橋に加え、南昌、成都、広州に置く研究開発・生産拠点の延べ床面積を、2026年の60万平方メートルから5年以内に90万平方メートルへ拡大する。計画上の年間生産能力は700億元以上だ。ただし700億元は工場が生産できる能力の計画値であり、5年後の売上予想や受注額ではない。
尹氏によると、AMECは世界170超の顧客の生産ラインに8,800超の反応台を設置している。反応台は反応室内でウエハーを支え、冷却・吸着する装置を指すため、完成した装置システムの台数とは一致しない。既存設備が入った顧客ラインは、新製品の工程評価を始める足掛かりになる。
売上の79.4%を支えるエッチング
2025年の売上高123.85億元のうち、エッチング装置は98.32億元を占めた。比率は79.4%で、売上の大半を一つの装置群に依存している。エッチング売上は前年比35.12%増え、会社全体の売上も36.62%増となった。既存事業が成長している今こそ、次の柱に投資できる。
主力装置の量産実績は厚い。2025年末までに、CCP(容量結合型プラズマ)エッチング装置は累計5,000反応台を超え、同年だけで1,000反応台以上を出荷した。ICP(誘導結合型プラズマ)装置も50超の顧客の生産ラインで使われ、累計1,800反応台に達した。AMECはこの二方式を揃え、先端ロジックから3D NAND、DRAMまで工程を広げてきた。
薄膜形成は小さいながら、伸びが速い。LPCVD装置の2025年売上は5.06億元で、前年比224.23%増だった。累計出荷も300反応台を超えた。一方で、複数工程の装置をまとめて提案できる総合メーカーになるには、ALDとEPIを量産売上へ育てる必要がある。PECVDやPVDに加え、計測・検査と、CMP以外の湿式装置も揃えなければならない。
研究開発には2025年に37.44億元を投じた。前年比52.65%増で、売上高の30.23%に相当する。大きな支出を続けられる収益基盤はあるが、販売先は集中している。上位5顧客が年間売上の75.00%、最大顧客だけで39.99%を占めた。顧客名は開示されていない。製品の幅を広げる計画には、同じ顧客から受注できる工程を増やす効果と、新しい顧客へ入る効果の両方が求められる。
2026年第1四半期も売上高は前年同期比34.13%増の29.15億元となった。研究開発支出は9.08億元で、売上高の31.14%を占める。四半期の伸びを維持しながら、既存製品の改良と新しい装置群の開発へ売上の3割前後を振り向けている。総合化は将来構想というより、現在の費用配分を左右する経営計画である。
自社開発とCMP買収を並走
AMECは2025年末時点で6種類、20超の新装置を開発していた。同社は、以前は1機種に3〜5年かかった開発期間を2年以下へ短縮できるようになったと説明する。だが、設計と試作を終えてから売上になるまでには、試作機での工程評価、顧客工場での認証、量産ラインへの導入という段階が残る。
2026年第1四半期の開示には、その時間差がよく表れている。次世代の90:1超高アスペクト比・低温CCPエッチング装置は顧客検証中だ。第2世代ICP装置「Primo Angnova」は3D DRAM向けに140:1の加工結果を得て、中国の主要メモリー顧客へ認証用に出荷した。化学気相エッチング装置「Primo Domingo」は、SiGeとSiの選択比700:1超を実験室で確認した段階にある。高い数値が並ぶが、量産採用済みの製品と一括りにはできない。
製品群を5年で広げるには、買収も使う。AMECは2026年5月29日、CMP装置メーカー杭州衆硅の株式64.69%を約15.76億元で取得し、連結子会社にした。CMPは薬液と研磨材でウエハー表面を平坦化する工程であり、今回の買収はAMECが持つプラズマエッチングなどの乾式工程に、湿式工程の一角を加える。7月時点で必要な承認と資産移転は完了している。
買収の完了で製品の種類は増えた。顧客にとっての価値が生まれるのは、エッチング、薄膜形成、CMPをまたぐ工程条件を短期間で詰め、立ち上げ時間や装置停止時間を減らせたときだ。AMECが掲げる60%は、100種類を開発する速度と、それぞれを量産品質へ上げる速度の掛け算になる。
中国最大市場と輸出規制という競争条件
SEMIによると、2025年の世界半導体製造装置売上は1,351億ドルに達し、前年比15%増えた。中国向けは493億ドルで世界最大であり、全体の36.5%に相当する。中国、台湾、韓国を合わせると世界売上の79%を占める。AMECは世界最大の需要地を本拠地に持つため、新装置を顧客ラインで試す機会を得やすい。
同時に、米国の輸出規制が装置の競争条件を変えている。米商務省産業安全保障局(BIS)は2024年12月、半導体製造装置24種類と開発・製造ソフト3種類を新たな規制対象に加えた。エッチングから成膜、露光までの一部が対象となり、イオン注入にも及ぶ。計測・検査や洗浄装置の一部も含まれる。中国の装置メーカーには輸入品を置き換える商機が生まれる一方、米国由来の部品、ソフトウェア、技術を調達する条件も厳しくなり得る。
したがって、対中規制がAMECの60%達成を保証するわけではない。2025年売上の79.4%を占めたエッチングの比率が下がり、薄膜、CMP、計測・検査が継続的な売上を生むか。開発中で段階が混在する20超の装置から何機種が顧客認証を通って再注文へ進み、上位5顧客への75.00%という依存が薄まるか。2031年までの進捗は、製品数より、この三つの数字にはっきり表れる。


