Googleは2026年11月5日、米ワイオミング州で初めてとなるデータセンターの建設に、長期で170億ドルを投資すると発表した。プロジェクトはRelated Digitalなどの提携企業と共同で進める。電源には天然ガスを燃料とする計702MWの燃料電池を採用し、発電に伴って生じる二酸化炭素(CO₂)の大半を回収して地下に貯留する計画だ。ただし、燃料電池による発電とCO₂の回収・貯留は別の工程であり、それぞれの設備が同時に稼働するとは限らない。

電力会社との契約自体は2026年10月に公表されており、今回の発表ですべての計画が初めて明らかになったわけではない。また、電力供給の開始と燃料電池の全面稼働には異なる時期が設定されている。今回の投資が実際の電力供給能力につながる時期を見極めるには、各設備の稼働計画とCO₂回収技術の導入状況を分けて確認する必要がある。

AD

天然ガス燃料電池にCO₂回収・貯留技術を組み合わせる

GoogleがAmerican Electric Power(AEP)と契約したのは、Bloom Energy製の燃料電池702MW(70万2000kW)分だ。この燃料電池は天然ガスを使った電気化学反応によって発電するもので、Googleは発生するCO₂の大半を回収し、Tallgrass Energyの「Eastern Wyoming Sequestration Hub」で地下に永久貯留する計画を示している。CO₂回収・貯留(CCS)を組み合わせることで、天然ガスを利用した発電に伴う排出量を削減する狙いがある。ただし、燃料電池そのものがCO₂を回収するわけではなく、発電と回収・貯留にはそれぞれの設備が必要となる。

Googleは燃料電池に加え、Tallgrass EnergyとBlack Hills Energyから天然ガス発電による電力も調達する。Tallgrass Energyの複合サイクルガスタービンについては、CCSを追加できるかどうかを基本設計調査で検討する段階だ。つまり、燃料電池に組み合わせるCO₂回収計画と、ガスタービンへのCCS導入に向けた調査では、具体化の程度が異なる。今回の発表は、すべての電源にCCSが導入済みであることを意味しない。

CO₂回収の実際の効果についても、まだ不明な点が残る。The Next Webの11月5日付記事は、GoogleがCO₂の大半を回収すると説明しながら、具体的な回収率を示していないと指摘している。Googleの公式発表にも回収率の数値はなく、天然ガスの調達から発電、CO₂の回収・貯留までを含めたライフサイクル全体の排出量も明らかにされていない。そのため、この計画によって温室効果ガスの排出量をどれだけ削減できるかを定量的に評価するには、追加のデータが必要だ。

Googleは今回の契約により、CCSに関連する契約済みの発電容量が累計で約1GWに達したとも説明している。ただし、これはCCSを組み合わせる計画がある発電設備の容量を示すもので、実際に回収できるCO₂の量ではない。発電設備の容量とCO₂の回収性能は、別の指標として評価する必要がある。

電力供給は2027年後半、燃料電池の全面稼働は2028年末

今回のプロジェクトでは、電力の供給開始から燃料電池の全面稼働、データセンターの電力需要が最大に達するまでに、複数の段階が設けられている。Black Hillsが2026年10月6日に公表した契約内容によると、電力サービスの開始は2027年後半、プロジェクトがピーク負荷に達するのは2030年の予定だ。一方、AEPが10月14日に発表した計画では、702MWの燃料電池設備が全面稼働するのは2028年末とされている。同じワイオミング州シャイアンのGoogle向けプロジェクトでも、それぞれの時期が指す工程は異なる。

予定時期 主な工程 発表主体・発表日
2027年後半 電力サービスの開始 Black Hills、2026年10月6日
2028年末 702MWの燃料電池設備が全面稼働 AEP、2026年10月14日
2030年 プロジェクトがピーク負荷に到達 Black Hills、2026年10月6日

これらは各社が公表した将来の予定を時系列で整理したものであり、日付の違いが工事の遅延を意味するわけではない。また、Googleはデータセンターの建物全体の完成時期を明らかにしていない。電力供給開始時に各電源がどの程度の割合を占めるのか、CCS設備がいつ稼働するのかについても、今回の発表だけでは判断できない。

電力調達契約は長期にわたる。AEPはGoogleと20年間の電力購入契約を締結し、燃料電池設備に約40億ドルを投資する計画だ。着工は2026年、全面稼働は2028年末を予定している。一方、Black Hillsとの契約は2026年9月30日に発効しており、2048年まで続く。ただし、AEPが投じる約40億ドルと、Googleが発表した170億ドルの投資額がどの程度重複するかは公表されていないため、単純に合算することはできない。

Black Hillsが今回のプロジェクト向けに確保する供給資源は、供給予備力を含めて計2.7GWとなる。内訳は、最大590MWの系統接続サービスと、約2.1GWの第三者資源だ。第三者資源は専用の小規模電力網を通じて管理する仕組みであり、2.7GWという数字は電力供給に必要な資源の規模を示している。データセンターのサーバーが実際に消費する電力が2.7GWになるという意味ではない。

さらにBlack Hillsは、2027~2029年に18億ドルを投じ、定格容量564MWの天然ガス発電設備を新設する計画だ。最大590MWの系統接続サービスとの差に当たる26MWは、市場からの調達などで補うとしている。ただし、AEPの燃料電池702MWが第三者資源の約2.1GW、あるいは供給資源全体の2.7GWにどのように含まれるかは、今回の発表からは明確になっていない。それぞれの数字を独立した発電容量として合算する根拠はない。

このように、Google向けの電力供給では調達規模と各設備の稼働予定が具体化している一方、供給開始時の電源構成やCO₂排出削減効果はまだ明らかになっていない。また、大規模な電力インフラの整備が地域の電気料金や資源利用にどのような影響を与えるかも、プロジェクトを評価するうえで重要な論点となる。

AD

電力インフラの費用負担と空冷方式で地域への影響を抑制

Reutersの11月5日付報道によると、今回の発表は、米中間選挙後にデータセンターの増設に対する政治的な抵抗が強まるなかで行われた。AIデータセンターの電力需要が急増する米国では、新たな発電設備や送電インフラの整備費用を誰が負担するのかが重要な問題となっている。Googleも今回、電力料金と地域の水資源への影響について具体的な対応方針を示した。

Googleは、データセンターで使用する電力の費用を100%負担するとともに、事業拡大によって直接必要になるインフラ整備費用も支払うと説明している。Black Hillsも、既存の電力利用者への費用転嫁を防ぐため、契約上の保護措置を設けている。具体的には、投資回収を確保する仕組みに加え、契約の早期解約に備えた対策や担保を設定し、大規模な電力需要に対応するための費用が既存顧客に転嫁されないようにする。ただし、これらは今回のプロジェクトに伴う費用負担を対象としたものであり、既存顧客の将来の電気料金全般を保証するものではない。

水資源への影響を抑えるため、Googleはデータセンターの冷却に空冷方式を採用する計画も示した。水を大量に使用する冷却方式への依存を減らす狙いがあるが、水使用量がゼロになるという説明ではない。今回の発表では設備全体の水使用量も明らかにされておらず、実際に地域の水資源へどの程度の負担が生じるかは、今後の運用実績を確認する必要がある。電力インフラの費用負担と冷却方式の選択は、地域社会への影響を異なる側面から抑える取り組みといえる。

Googleは、これまでに200人を超える地域住民と会合を開いたことも明らかにした。また、ララミー郡と学区1には、数億ドル規模の固定資産税収が見込まれるとしている。ただし、この税収が何年間の累計に相当するのかは示されていない。教育や職業訓練への支援に加え、Tallgrass Energyなどの提携企業とBloom Energyが参加する地域評議会を設置する計画もある。

今回のプロジェクトは、AIデータセンターの大規模な電力需要に対応するため、天然ガス燃料電池とCCSを組み合わせる計画として注目される。ただし、170億ドルの投資や702MWの燃料電池導入が、そのまま発電能力の確保や排出削減の実績を意味するわけではない。2027年後半の電力供給開始以降、燃料電池が予定どおり稼働するか、CO₂回収設備がいつ運転を始め、どの程度の回収率を達成するかが重要になる。加えて、既存顧客への費用転嫁を防ぐ仕組みや空冷方式による水資源への影響が実際にどうなるかを確認できれば、Googleが示した電力供給拡大と地域への配慮を、計画ではなく運用実績に基づいて評価できるようになる。