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Appleが廉価版MacBookを計画中?iPhoneの「A18 Pro」を搭載したMacBookが2026年登場の可能性

Y Kobayashi

2025年6月30日

Appleデバイスに関しては、iPadOSの進化に伴いiPadとMacの境界線が曖昧になってきているが、ここにきてMacとiPhoneの境界線もまた、少しずつ薄くなりつつあるようだ。これまでMacには専用設計の「Mシリーズ」、iPhoneには「Aシリーズ」という棲み分けがあったチップ戦略だが、大きな岐路を迎えているという。著名アナリストMing-Chi Kuo氏によれば、iPhone 16 Proに搭載される見込みの「A18 Pro」チップを採用した、新たな低価格MacBookが開発中であると言うのだ。

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聖域だったMacの心臓部、iPhoneチップ搭載への「歴史的転換」

2020年、AppleはMacのプロセッサをIntel製から自社設計の「Appleシリコン」へ移行すると発表し、PC業界に衝撃を与えた。その中核を担ったのが「Mシリーズ」チップだ。iPhoneやiPadで絶大な成功を収めた「Aシリーズ」チップのアーキテクチャをベースに、Macの要求する高いパフォーマンスに応えるべく拡張されたMシリーズは、驚異的な電力効率と性能を両立させ、Macを再定義した。

この成功体験により、「Aシリーズはモバイルデバイス用、MシリーズはPC用」という明確な役割分担がAppleの戦略の根幹にあると見られてきた。AシリーズとMシリーズは、いわば同じDNAを持つ「兄弟」でありながら、決して互いの領域を侵さない「聖域」が存在していたのだ。

今回のKuo氏のレポートは、Appleがその聖域にあえて踏み込もうとしていることを示唆している。理論上は可能とされながらも、製品戦略上の理由から実現されてこなかった「iPhoneチップで動くMac」が、いよいよ現実味を帯びてきたのである。

アナリストKuo氏が描く「A18 Pro MacBook」の具体的姿

アジアのサプライチェーンに広い情報網を持つとされるMing-Chi Kuo氏によると、この新型MacBookの詳細は以下の通りだ。

  • プロセッサ: iPhone 16 Proシリーズに搭載が見込まれる「A18 Pro」チップ
  • ディスプレイ: 約13インチ
  • カラーバリエーション: シルバー、ブルー、ピンク、イエローといった、若者や学生層を意識したカラフルな展開
  • 量産開始時期: 2025年第4四半期後半から2026年第1四半期初頭
  • 販売目標: 2026年に500万〜700万台

特筆すべきは、この新型MacBookが、Appleの野心的な販売戦略の一翼を担うとされている点だ。Kuo氏は、Appleが2026年のMacBook全体の出荷台数を、コロナ禍で記録したピーク時の約2500万台まで引き上げることを目指していると指摘しており、この低価格モデルがその目標達成の鍵を握ると見ている。

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「A18 Pro」の実力は?MシリーズMacBookとの性能差を徹底解剖

では、iPhone用のA18 Proチップを搭載したMacBookは、どの程度の性能を発揮するのだろうか。これがユーザーにとって最も気になる点だろう。

複数のレポートによると、A18 Proの性能は驚くべきレベルに達している。 Geekbenchのスコアに基づけば、CPUのシングルコア性能はMac miniに搭載されているM4チップに肉薄する可能性がある。 日常的なWebブラウジングや書類作成といったタスクの多くはシングルコア性能に依存するため、多くのユーザーは現行のMacBook Airと遜色ない快適さを体験できるかもしれない。

一方で、動画編集やプログラミングといった複数のコアを同時に駆使するマルチコア性能においては、M4チップに及ばない。 しかし、興味深いことに、そのマルチコア性能は2020年に登場し、Macの歴史を変えた初代「M1」チップとほぼ同等レベルにあると見られている。 今なお多くのユーザーがM1搭載Macを快適に使用している現状を考えれば、「A18 Proで性能は不十分」と断じるのは早計だろう。

つまり、このMacBookは「プロフェッショナルな高負荷作業には向かないが、大多数のユーザーの日常的なコンピューティング需要を十分に満たす」性能を持つと位置づけられる。

Appleの狙いは何か?「2500万台」という数字が語る野心

Appleがなぜ今、低価格MacBookを投入しようとしているのか。その背景には、PC市場の構造変化と、新たな成長領域への渇望があると考えられる。

最大の狙いは、これまでAppleが取り込めていなかった価格帯の市場、特に教育市場や低価格WindowsノートPCがひしめくボリュームゾーンへの本格的な参入だろう。GoogleのChromebookが教育市場で圧倒的なシェアを誇る中、Appleはより安価なMacBookを投入することで、将来の優良顧客となる若年層を早期にAppleエコシステムに取り込みたい考えがあるのではないだろうか。

この動きは、かつて存在した「12インチMacBook」の思想の再来と見ることもできる。2015年に登場した12インチMacBookは、性能よりも極限の薄さ、軽さ、そしてシンプルさを追求した意欲的なモデルだった。 今回の低価格モデルは、その「手軽さ」という思想を受け継ぎつつ、「価格」という新たな武器を手にすることで、これまでMacを手に取ることのなかった全く新しいユーザー層を開拓する可能性を秘めている。

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残された最大の謎「価格」と、マーケティング上の課題

この挑戦的な製品が成功するか否かは、最終的に「価格」にかかっている。現在、最も安価なMacBook Airは999ドル(日本では164800円)からとなっているが、この新モデルが500万〜700万台という野心的な販売目標を掲げるからには、これを大幅に下回る戦略的な価格設定が不可欠だ。 一部の憶測では、700ドル前後の価格帯も噂されている。日本では11万円前後と言った所か。

しかし、低価格化は新たな課題も生む。一つは、iPadとのカニバリゼーション(共食い)だ。キーボードを装着したiPad Proと価格帯が重なる可能性があり、両者の棲み分けがより複雑になる。

また、「Mシリーズ搭載のMacBook」と「Aシリーズ搭載のMacBook」という2つのラインが併存することによる、マーケティング上の混乱も懸念される。Appleはこれまで、プロセッサの違いを前面に出すのではなく、「体験価値」で製品を訴求してきた。この新たなラインナップを、消費者にどう分かりやすく伝え、差別化していくのか、その手腕が問われることになるだろう。

このA18 Pro搭載MacBookの噂は、AppleがMacの定義そのものを書き換えようとしているサインかもしれない。「プロの創造性を解放する特別なツール」から、「誰もが当たり前に使える万能なコンピューティングデバイス」へ。この一手は、Appleの未来、そしてPC市場のパワーバランスを大きく塗り替える可能性を秘めた、注視すべき動きであることは間違いない。


Sources

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