IntelとFortinetは2026年7月21日、Fortinet Security Processor 6(SP6)を共同開発すると発表した。Fortinetが20年以上続けてきた用途特化型セキュリティチップの設計に、Intelの半導体設計、先進パッケージ、製造を組み合わせる。IntelはTom's Hardwareへの回答で、SP6をIntel 4プロセスで製造すると明らかにした。2023年に量産へ入ったIntel 4が、初めて社名を公表できる外部顧客を得たことになる。
FortinetにとってSP6は、自社ASICを中核に据えたまま、開発と供給の担い手を広げる案件である。Intelにとっては、自社のCore Ultraで使ってきた工程を外部の量産製品へつなぐ機会だ。ただし、SP6の仕様も生産開始時期も発表されていない。契約の価値を実製品で測るには、まだ埋まっていない情報が多い。
Intel 4で初めて名前が出た社外案件
共同発表は、IntelがSP6の設計、パッケージ、製造を支援すると説明している。一方、製造プロセス名は記していない。IntelはTom's Hardwareの取材にIntel 4の採用を認め、同媒体はSP6をこのプロセスで初の公表済み外部案件と報じた。ここでいう「初」の範囲は、Intel Foundry全体ではなくIntel 4である。
Intel 4は、Intelが極端紫外線(EUV)露光を初めて採用したプロセスだ。アイルランドのリークスリップにあるFab 34は2023年9月29日にIntel 4の量産を始め、Meteor Lake世代のCore Ultra向けコンピュートタイルを生産してきた。プロセス開発と初期量産は米オレゴン州の開発工場で進められた。SP6は、約3年の量産実績を持つ工程へ外部設計を載せる案件となる。
ただし、Fab 34がSP6を製造するとは発表されていない。Intel 4の既存量産拠点とSP6の生産地は分けて考える必要がある。供給網の強靱化を掲げる契約だけに、どの工場でウェハーを処理し、どこでパッケージするかは実効性を左右する条件になる。
SP5の7nmから、SP6が引き継ぐ仕事
FortinetのASICは、通信の転送や暗号処理、コンテンツ検査を専用回路へ振り分け、汎用CPUの負荷を減らす。ファイアウォールは暗号化された通信の中身を検査すると処理量が増えやすい。そこでFortinetは、FortiOSと専用チップを一体で設計し、装置の性能と消費電力を管理してきた。
2023年に発表した前世代のFortiSP5は、7nmの第5世代システム・オン・チップ(SoC)である。Fortinetは比較対象に選んだ標準CPUに対し、ファイアウォール性能17倍、次世代ファイアウォール(NGFW)性能3.5倍を公称した。暗号処理は32倍、消費電力は88%少ないとしている。SSLディープインスペクションの公称処理性能は2.5Gbpsだった。
これらはFortinet自身の比較値であり、SP6の性能予告ではない。それでも、世代更新で何を測るべきかは分かる。SP6が暗号通信を検査しながらどれだけスループットを保てるか、同じ消費電力で何種類のセキュリティ機能を同時に動かせるかが、FortiGate製品の実力へ直結する。
最先端競争より量産実績とコスト
両社はSP6に、IntelのエコシステムIPと分割型半導体設計の知見を持ち込む。先進パッケージについては、AI対応用途とコストを重視する用途の双方に合わせると説明した。ただし、この表現からSP6をチップレット構成とは断定できない。ダイの数も接続方式も未公表である。
Intel 4を選んだ理由も明かされていない。確定しているのは、Intel 4が2023年から量産され、Core Ultraで製品実績を積んだEUV世代だということだ。セキュリティASICでは、最新世代のトランジスタを使うことより、必要な専用回路を予算と電力の範囲でまとめ、長期に安定供給することが製品価値につながる。SP6は、Intelが量産済みの工程とパッケージ技術を組み合わせ、そうした要求に応える試金石になる。
なお、Intel 4とFortiSP5の7nmは、数字だけで製造技術の優劣を決められない。半導体各社のプロセス名は物理的な同一寸法を表しておらず、性能や密度は設計ライブラリと用途にも左右される。比較すべきなのは名称ではなく、完成したSP6の電力、処理性能、コストである。
仕様と量産時期が採用判断を分ける
Fortinetは今回の協業で、SP6開発を速めるとともに、世界の供給網を多様化すると説明した。Intelは外部のセキュリティ製品で、設計支援から製造までを担う実績を作れる。両社は将来の半導体技術や製造でも協業機会を探るとしているが、SP6以降の製品契約までは約束していない。
供給元の変更についても線引きが要る。FortinetはSP5を7nm製品として発表したものの、その製造受託先を明示していない。従って、SP6を特定のファウンドリーからIntelへ移す案件だと断定する材料はない。現時点で確認できる変化は、IntelがSP6の設計、パッケージ、製造へ加わることだ。
SP6のアーキテクチャと性能、消費電力はこれから開示を待つことになる。サンプル出荷や量産開始、最初に搭載するFortiGateの時期も分からない。Intel 4初の社外案件という看板が製品上の成果に変わるのは、FortinetがSP5と比較できる測定条件を示し、Intelが顧客の必要量を予定通り供給できたときである。



