TrendForceは2026年7月21日、NAND Flashの供給不足が2027年後半に緩和へ向かうとの予測を公表した。2026年は需要に対して供給が4〜5%不足するが、2027年後半には供給ビットの伸びが需要を上回るという。転換を生むのは、2027年中に大型新工場が一斉に立ち上がるからではない。既存ラインを高密度な世代へ切り替え、中国勢が設備を増強する一方、高値に直面したスマートフォンとノートPCの生産が縮む。したがって2027年後半は「不足解消の期限」ではなく、NAND市場全体が均衡を取り戻し始める時期として捉える必要がある。

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4〜5%の不足がプラスへ転じる条件

TrendForceの推計では、2026年のNAND市場は供給ビットが需要を4〜5%下回る。NANDメーカーの在庫は低いままで、消費市場の低迷を受けたモジュールメーカーだけが在庫を積み増している。他の買い手の在庫はおおむね管理された水準にあり、供給側に余剰がたまって需給が自然に緩む局面ではない。それでも2027年後半には、供給が需要を上回るとTrendForceはみている。

この予測が測っているのは、世界で生産・消費されるNANDの総ビット数である。エンタープライズSSDとPC向けSSDでは、採用する世代も供給の優先順位も異なる。スマートフォン向けUniversal Flash Storage(UFS)や組み込み用途も条件は同じではない。総量で供給超過になっても、すべての製品で同時に入手しやすくなるとは限らない。

価格にも同じ時間差がある。TrendForceは2026年第2四半期のNAND契約価格が前四半期比70〜75%上昇すると予測していた。メーカー在庫が低く、クラウド事業者が長期供給契約を結ぶ環境では、供給が需要を上回った瞬間に契約価格や小売SSD価格が下がるとは言えない。2027年後半という日付は、価格正常化の期限ではなく、供給不足を押し上げてきた力が弱まり始める目安である。

新工場より先に、ウエハー当たりの容量を増やす

2026年から2027年に供給を増やす中心手段は、ウエハー投入量の大幅な拡大ではなく製造プロセスの移行だ。3D NANDはメモリーセルを縦に積み、面方向の密度も高めることで、同じウエハーから取り出せるビット数を増やせる。TrendForceは、既存工場のスペースが限られ、メーカーがDRAM増産を優先しているため、韓国、米国、日本の各社が既存ラインの更新と一部工場の増強を続けると予測する。

キオクシアとSandiskは7月3日、岩手県の北上工場第2製造棟で第10世代3Dフラッシュの生産を始めた。同日サンプル出荷を発表した1Tb TLC品は332層で、218層の第8世代に比べてビット密度を59%高めた。ただし、これは機能確認用サンプルの仕様であり、量産品では変わる可能性がある。同社は2026年度の設備投資を前年度の2,800億円から4,500億円へ増やし、2027年度も同程度を投じる計画だ。第8世代の能力増強と第10世代の立ち上げを通じ、容量ベースで年平均22%の成長を支えるとしている。

韓国ではSK hynixが2025年8月、321層で1チップ当たり2Tb(テラビット)を収めるQuad-Level Cell(QLC)NANDの量産を開始した。QLCは1セルに4ビットを記録するため、同じ面積から得られる容量を増やせる。こうした高層化と多値化が進めば、新棟の完成を待たずに供給ビットは伸びる。

一方、Micronがシンガポールで着工した新しいNANDウエハー工場は、10年間で約240億ドルを投じる大型計画だが、ウエハー生産の開始は2028年後半を予定する。少なくとも同工場は、2027年後半の均衡回復を直接支える設備ではない。TrendForceが描く短期の改善は、既存資産から取り出す容量を増やす計画に依存している。

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なぜAIサーバー需要が伸びても需給は緩むのか

サーバーはすでに世界のNANDビット需要の40%超を占める。IntelとAMDの次世代サーバープラットフォームが2026年後半に立ち上がり、同年のサーバー出荷は前年比17%増えるとTrendForceは予測する。2027年にはエージェント型AIの実用化が汎用サーバー投資を支え、CPUの供給制約緩和とメモリーの長期契約も出荷の伸びを後押しする見通しだ。AI向けストレージ需要は弱まる前提ではない。

それでも市場全体が均衡へ向かうのは、スマートフォンとノートPCが合わせてNANDビット需要の約40%をなお占めるからだ。TrendForceは2026年のスマートフォン生産を前年比15〜20%減、ノートPC出荷を約10%減と見込む。2027年のスマートフォンは消費者の価格感度が上がり、ノートPCはメモリーやCPUなどの部品コストが高止まりするため、どちらも縮小が続く予測である。高価格帯のAIスマートフォンが一部を支えても、台数全体を増加へ戻すほどの力は想定されていない。

供給ビットが着実に増える一方、消費機器が使うビット数は伸びにくい。サーバー需要が拡大しても、残る大口市場の縮小が総需要を抑えるため、2027年後半には供給の伸びが追いつく。今回の需給改善は、増産と需要減の両方を前提にした予測である。

中国勢の19%と、価格が動くまでの距離

供給側でもう一つ効くのが中国勢だ。TrendForceは、新しい製造装置の稼働に伴い、中国系メーカーが世界のNANDビット生産に占める比率は2027年に約19%へ上がると予測する。公表資料は企業別の内訳を示していないが、韓国、米国、日本勢が既存設備を選別して増強するのに対し、中国勢は新規設備の投入で供給量を伸ばすという違いがある。

ただし、供給シェアの変化がそのまま消費者向けSSDの値下がりへつながるわけではない。NANDメーカーは企業向けSSDを優先し、クラウド事業者は長期契約で必要量を確保している。どの製品へ新しい供給ビットを割り当てるかによって、企業向けSSDとPC向けSSDでは改善の時期がずれる。

2027年後半に確認すべきなのは、総ビットの供給が需要を上回るかに加え、低いメーカー在庫が回復し、PCやスマートフォン向けの供給配分が増えるかどうかだ。これらが揃って初めて、NAND不足の緩和が消費者向けSSDの価格と選択肢に表れる。