2025年11月、PCゲーミングの世界において、大いなる変化が着実に続いている事がValveが毎月公開している「Steamハードウェア&ソフトウェア調査」の最新データから明らかになった。

長年、Windowsの独壇場であったPCゲーム市場において、Linuxがついにシェア3.20%という歴史的な高水準に達した。同時に、CPU市場ではAMDIntelのシェアを猛追し、GPU市場ではNVIDIAの最新アーキテクチャ「Blackwell」世代、特にGeForce RTX 5070が急速に普及し始めているのだ。

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Linuxゲーミングの覚醒:3%の壁を超え、新たな標準へ

かつてLinuxでゲームを動かすことは、高度な技術を持つ一部の愛好家だけの趣味であった。しかし、2025年11月の調査結果は、その時代が完全に終わったことを告げている。

史上最高値「3.20%」が持つ意味

Linuxのシェアは前月から0.15ポイント上昇し、3.20%という過去最高記録を更新した。一見すると小さな数字に見えるかもしれないが、数億人規模のSteamユーザーベースを考慮すれば、これは数百万人のゲーマーがLinux環境を選択していることを意味する。さらに重要なのは、macOS(2.02%)を大きく引き離し、Windowsに次ぐ「第2のゲーミングOS」としての地位を盤石にした点だ。

1年前の2024年11月時点では2.03%、10年前の2015年にはわずか0.98%であったことを踏まえると、この成長曲線は指数関数的であり、構造的な変化を示唆している。

推進力としてのSteam Deckと「脱Windows」の動き

この躍進の最大の立役者が、Valveの携帯型ゲーミングPC「Steam Deck」であることは疑いようがない。Linux分布の内訳を見ると、Steam Deckに搭載されているSteamOS Holo26.4%でトップを独走している。

しかし、注目すべきはそれだけではない。「Bazzite」や「CachyOS」といった、ゲームプレイに特化したカスタムLinuxディストリビューションもシェアを伸ばしている点だ。これには以下の複合的な要因が絡んでいると分析できる。

  1. Windows 11への反発: Microsoftによる厳格なハードウェア要件、強制的なAI機能(Copilot)の統合、スタートメニューへの広告表示などに対するユーザーの疲弊感が、選択肢としてのLinuxを魅力的にしている。
  2. Windows 10のサポート終了(EOL): 2025年10月にWindows 10がサポート終了を迎えたことで、ハードウェア要件を満たさないPCを持つユーザーの一部が、Windows 11ではなく、軽量で高効率なLinuxへと移行した可能性がある。
  3. Protonの成熟: Windows用ゲームをLinuxで動作させる互換レイヤー「Proton」の精度が飛躍的に向上し、多くのタイトルでネイティブ並みのパフォーマンスが出るようになったことが、移行のハードルを劇的に下げている。

Phoronixの報道によれば、Valveは将来的に新たな「Steam Machine」や「Steam Frame」といったハードウェアを計画しているとの観測もあり、Linuxゲーミングのエコシステムは今後さらに拡大する公算が大きい。

CPU市場の激変:AMDがIntelの牙城を崩す目前に

プロセッサ市場における勢力図の変化も劇的だ。長年続いたIntelの支配体制に対し、AMDがそのシェアを奪い続けている。

シェア50%へのカウントダウン

今回の調査で、AMD製CPUのシェアは前月から0.52ポイント上昇し、42.61%に達した。対するIntelは57.30%となり、その差は急速に縮まっている。2025年を通じてAMDはほぼ一貫してシェアを拡大させており、このペースが続けば、2026年中にもシェアが逆転する「フリッペニング(Flippening)」が現実のものとなる可能性がある。

Linux環境におけるAMDの圧倒的優位

特筆すべきは、OSごとのCPU採用率の違いだ。Windows環境下では接戦が続いているものの、Linux環境下に限定すると、AMD製CPUのシェアは約70%に達している。これは、AMD製APUを採用するSteam Deckの普及が大きく影響しているが、オープンソースドライバへの積極的な貢献など、AMDが長年Linuxコミュニティと良好な関係を築いてきた成果とも言えるだろう。

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GPU市場:NVIDIA RTX 50シリーズの急速な浸透とAMDの苦境

グラフィックボード部門では、NVIDIAの圧倒的な強さと、最新世代への移行の速さが浮き彫りになった。

RTX 5070がトップ10入り:ハイエンドへの渇望

NVIDIAの最新世代「Blackwell」アーキテクチャを採用したGeForce RTX 5070が、全体の2.23%のシェアを獲得し、早くもSteamトップ10(専用GPUとして)に食い込んだ。前月比+0.35%という伸びは、高価格帯の製品としては異例の普及速度である。

RTX 50シリーズ全体の動向を見ても、ユーザーの移行意欲は高い。

  • RTX 5070: 2.23%
  • RTX 5060: 1.62%
  • RTX 5060 Ti: 1.20%
  • RTX 5070 Ti: 1.14%
  • RTX 5080: 1.06%
  • RTX 5090: 0.36%

これらの数字は、PCゲーマー層において「高価であっても最新の性能を手に入れたい」という需要が依然として底堅いことを証明している。一方で、全体のトップは依然としてラップトップ版のRTX 4060(4.44%)であり、ミドルレンジのノートPCがゲーミングの主要なエントリーポイントとなっている現状も変わっていない。

不気味な沈黙を続けるAMD Radeon

NVIDIAの好調とは対照的に、AMDのGPU部門には懸念材料がある。調査結果には、AMDの次世代アーキテクチャ「RDNA 4」に関する有意なデータが現れていないのだ。発売から数ヶ月が経過しているにもかかわらず、統計上の存在感が希薄であることは、AMDがGPU市場のハイエンド〜ミドルハイレンジにおいて、NVIDIAに対して競争力を失いつつある可能性を示唆している。CPUでの躍進とは裏腹に、GPU戦略の再考が迫られていると言えるかもしれない。

メモリ事情:16GBが標準、しかし32GBへの移行にブレーキ?

システムメモリ(RAM)に関しては、16GB40.94%で最多層を維持しており、現在のPCゲームの「スイートスポット」であることを示している。次いで32GB36.96%と肉薄している。

しかし、データセンター需要の急増に伴うDRAM価格の高騰が、32GB以上への移行ペースを鈍化させる懸念がある。メモリ価格の上昇は、ユーザーのアップグレードサイクルに直接的な影響を与えるため、今後の数ヶ月でこの「16GB vs 32GB」のバランスがどう変化するかは、半導体市場全体の供給状況を映す鏡となるだろう。

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2026年に向けた展望

2025年11月のSteamハードウェア調査は、単なる統計データ以上の物語を語っている。

  1. OSの多様化: Windows一強時代の終わりと、Steam Deckが切り拓いたLinuxゲーミングの実用化。
  2. CPUの勢力逆転: ゲーミングCPUとしてのAMD Ryzenのブランド確立。
  3. GPUの二極化: NVIDIAの最新技術への追従と、他社の不在。

これらのトレンドは一過性のものではなく、不可逆的な構造変化である可能性が高い。特にLinuxシェアの3%超えは、ゲーム開発者に対して「Linux(およびSteamOS)への対応」を無視できないものにさせつつある。2026年、新たなハードウェアの登場やOS市場の動向次第では、PCゲーミングの定義そのものがさらに拡張されていくことになるだろう。


Sources