Googleは2025年3月19日、AIツール「NotebookLM」にマインドマップ作成機能と出力言語選択機能を追加すると発表した。この新機能により、学生や専門家は、より効率的に情報を整理・理解し、複数言語での作業がより容易になる。
NotebookLM新機能の詳細:マインドマップと多言語出力
NotebookLMに追加された主要な機能は2つある。1つ目は「マインドマップ」機能で、ユーザーが複雑なトピックを視覚的に整理し、情報間の関連性をより簡単に把握できるようにするものだ。2つ目は「出力言語セレクター」機能で、NotebookLMが生成するテキストの言語を選択できるようになった。
マインドマップ機能は、ユーザーがアップロードした資料の内容を分析し、枝分かれした図として視覚化する。これにより、数多くの情報源から重要な概念やテーマを素早く特定し、それらの関連性を理解しやすくなる。例えば、法律を学ぶ学生がプライバシー規制に関する事例研究をアップロードすると、「データ保護法」「消費者の権利」「政府の監視」「企業の説明責任」などの主要テーマを示すマインドマップが表示される。
一方、出力言語セレクターは、NotebookLMが生成する学習ガイド、ブリーフィング文書、チャット応答などのテキストを、ユーザーが選択した言語で出力できるようにする機能だ。これにより、多言語環境での共同作業がより簡単になる。
これらの新機能は主に学生向けに設計されているが、エンジニア、開発者、著者など、様々な専門家や生産性向上を求めるすべての人にとっても価値がある。
マインドマップ機能の使い方と実用例
NotebookLMのマインドマップ機能は、比較的長い文書または複数のソースがある場合に特に効果的だ。使用方法は非常にシンプルで、ユーザーは新規または既存のノートブックを開き、処理したいソースを追加してアップロードするだけで良い。その後、チャットパネルのマインドマップボタンをクリックすると、数秒以内にスタジオパネルのノートセクションにインタラクティブなマインドマップが表示される。
NotebookLMのマインドマップはObsidianのGraph Viewに似たものになっており、すべてのノートを視覚的にマッピングする。これにより、アイデア間の関連性を一目で確認できる。マインドマップの各ノードの横にある矢印アイコン(>)をクリックすると、サブノードが表示され、より詳細な情報を見ることができる。

Googleの公式発表では、生物学を学ぶ学生の例が紹介されている。サンゴ礁生態系の衰退に関する研究論文をアップロードすると、「海洋酸性化」「海水温度の上昇」「汚染」「乱獲」といったテーマのマインドマップが生成される。これにより、複雑な環境問題の主要因とその相互関係を視覚的に理解できる。
マインドマップは情報の視覚化だけでなく、ノードをクリックすることで概念の要約を生成したり、特定のテーマについて追加質問を行ったりすることも可能だ。さらに、他のNotebookLM機能と同様、AIツールはクエリに回答する際にユーザーのソースからのみ情報を抽出するため、不正確な情報生成のリスクが最小化されている。完成したマインドマップはダウンロードや他ユーザーとの共有も可能で、共同研究や学習におけるコラボレーションを促進する。
NotebookLMの利用可能性と展開スケジュール
新機能はGoogle Workspaceユーザーおよび他のNotebookLMとNotebookLM Plusのエンドユーザーが利用可能だが、ロールアウトは段階的に実施されるため、全ユーザーへの展開完了までには最大15日を要する見込みだ。Googleの発表によれば、展開は2025年3月19日から開始された。
NotebookLMとNotebookLM PlusはGemini APIが利用可能な180以上の地域でサービスを提供し、現在35以上の言語をサポートしている。ただし、音声概要機能については、多言語ソースのアップロードは可能であるものの、音声出力は現時点では英語のみに限定されている。
サービス提供形態としては、NotebookLMはGoogle Workspaceのコアサービスとして、Business Starter、Frontline Starter and Standard、Essentials Starter、Enterprise Essentials、Enterprise Essentials Plus、Nonprofitsなどのプランで利用可能だ。また、Education Fundamentals、Standard and Plusでは追加サービスとして導入できる。
一方、より高機能なNotebookLM PlusはBusiness Standard and Plus、Enterprise Standard and Plusといった上位プランのコアサービスとして提供され、教育機関向けには、Gemini EducationやGemini Education Premiumなどのアドオンを通じて追加サービスとして利用可能となっている。
NotebookLMがもたらす学習と生産性への影響
NotebookLMの新機能、特にマインドマップ機能は、学習方法や情報処理の手法を根本から変革する可能性を秘めている。従来の学習プロセスでは、大量の情報を読み込み、重要な概念や関連性を手作業で特定する必要があったが、マインドマップ機能の導入により、この労力を要する作業がAIによって自動化される。
特にNotebookLMは、不正確な情報を生成したり、間違った回答を提供したり、不必要に物事を複雑化したりしない点で、他のAIツールと一線を画している。これは、NotebookLMがユーザー提供のソースのみを情報源とし、事実の捏造を回避するよう設計されているためだ。
具体的な活用シーンを考えると、例えば医学生が解剖学の試験勉強をする場合、教科書や講義ノートをNotebookLMにアップロードするだけで、人体系統ごとに整理されたマインドマップが自動生成される。これにより、骨格系、筋肉系、神経系などの関連性や相互作用を視覚的に把握でき、複雑な医学知識の構造化と記憶定着が格段に容易になる。
また、学際的な研究に取り組む大学院生や研究者にとっては、異なる分野の論文や資料をNotebookLMに取り込むことで、分野横断的な概念や方法論の関連性を発見するツールとなりうる。例えば、AIと倫理に関する研究では、コンピュータサイエンス、哲学、法律、社会学など多岐にわたる文献を統合的に分析する必要があるが、マインドマップ機能によってこうした複雑な学際的概念の整理が大幅に効率化される。
プライバシーとデータセキュリティの面でも、Googleは重要な保証を提供している。同社の公式発表によれば、「アップロード、クエリ、モデルの応答は許可なくモデルのトレーニングに使用されず、人間のレビュアーによってレビューされることもなく、製品の改善に使用されることもない」とされている。また、「データはユーザーのものであり、アップロードされたファイル、クエリ、応答は組織の信頼境界外で共有されない」という点も強調されている。これにより、機密性の高い研究や企業プロジェクトでも安心して利用できる環境が整備されている。
出力言語セレクター機能は、国際的な教育機関や多国籍企業など、多言語環境での学習や協働作業を飛躍的に改善する。例えば、国際共同研究チームが英語の論文を分析し、その結果を各メンバーの母国語で共有したい場合、NotebookLMを介することで翻訳作業の手間を大幅に削減できる。これにより、言語の壁を低減し、グローバルな知識共有や共同研究がより円滑に進行するようになる。
NotebookLMのこれらの機能強化は、AIが単なる質問応答ツールから、より高度な知識管理および情報処理プラットフォームへと進化していることを示している。今後こうした機能がさらに発展すれば、教育研究の方法論や知識創造のプロセスそのものが大きく変容する可能性を秘めている。
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