Googleの次期スマートフォン「Pixel 11」が、TSMCの2nm工程を使う最初のスマートフォンになる可能性が出てきた。台湾の経済日報は2026年7月13日、8月中旬に登場するPixel 11の「Tensor G6」をTSMCが2nm工程で製造すると報じた。別に流出した仕様は、7コアのArm C1 CPU、PowerVR GPU、MediaTek製モデムへの変更を指す。Googleはどの仕様も発表していない。ただ、公開資料を重ねると、G6はCPUとモデムを更新しながらSoC全体の電力配分を見直す設計として輪郭が見えてくる。
新しいのは2nm量産ではなく、Pixelへの採用時期
TSMCのN2が量産に入ったこと自体は新情報ではない。同社は技術ページで、2025年第4四半期に予定どおり量産を始めたと説明している。2026年5月にはAMDも、サーバー向けEPYC「Venice」がTSMC 2nmで量産立ち上げに入ったと公表した。Pixel 11が先頭に立つとしても、それはTSMC 2nmを使う最初の製品ではなく、最初のスマートフォンという意味になる。
経済日報によると、Googleは米国時間8月12日に「Made by Google」イベントを開き、Pixel 11シリーズを披露すると見込まれている。同紙は、Appleの次期iPhoneより先にTSMC 2nmを採用するスマートフォンが出ると報じた。ここが今回の報道で最も強い変化だ。TSMCの最新工程を搭載したスマートフォンはAppleが先陣を切る例が続いてきたが、その順番が入れ替わる可能性がある。
ただし、GoogleもTSMCもTensor G6の製造工程を確認していない。N2の「最初の顧客」と「最初に発売されるスマートフォン」も別の話である。Mystic LeaksはN2と記す一方、経済日報は2nmとだけ報じ、派生工程を明示していない。MediaTekは2025年、改良版のN2Pを使う旗艦SoCの設計完了を公表しており、2026年末の量産を予定している。G6の工程が確定するまで、N2Pの性能値を当てはめることはできない。
3nmのTensor G5から、電力をもう一段削る
GoogleはTensor G5で製造をTSMCの3nm工程へ移した。公式発表では、G5のCPUは前世代比で平均34%高速になり、TPUの性能は最大60%向上した。新しい画像処理回路とセキュリティ回路も組み込み、Pixel 10のオンデバイスAIとカメラ機能を支えている。G6がN2を採るなら、TSMCでの製造は2世代目になる。
TSMCが基本版N2に示した目標は、N3Eと比べて同じ消費電力なら10〜15%高速、同じ速度なら消費電力を25〜30%削減し、チップ密度を15%超高めるというものだ。FinFETからナノシート型トランジスタへ切り替え、電流の流れをより細かく制御する。Mystic LeaksのいうN2が正しければ、Googleは同じ処理を短時間で終えるか、速度を保って電池を節約するか、回路を増やすかを選べる。
もっとも、この数字はPixel 11の性能予告ではないし、G6が基本版N2を使うことも未確認だ。クロックを上げれば電力削減分を使い切り、TPUや画像処理回路を広げれば面積の余裕も減る。メモリとモデムも電力を使い、画面と放熱設計は電池持ちや表面温度を左右する。2nm採用が確かでも、製品として何を得たかは端末の測定まで分からない。
1+4+2のCPUは、小型コアを使わない
リーク情報を発信するMystic Leaksは、Tensor G6のCPUを7コア構成としている。内訳はC1-Ultraが1基で4.11GHz、C1-Proが4基で3.38GHz、さらにC1-Proが2基で2.65GHzだ。8コアだったとされるG5から1基減らす一方、すべてをArmのC1世代へ更新する設計になる。
Armによれば、C1-Ultraは前世代のCortex-X925より単一スレッド性能が25%高い。C1-ProはCortex-A725と同じ周波数で持続性能を16%高め、同じ性能なら動画やウェブ閲覧などの消費電力を最大12%減らす。C1クラスタ全体では、日常的なモバイル処理に使う電力が平均12%減ったという。いずれもArmの基準環境で得た値であり、G6で同じ差が出るとは限らない。
興味深いのは、低消費電力向けのC1-Nanoを使わず、2基のC1-Proを低い周波数で動かす点だ。この構成では、軽い処理も低クロックのC1-Proが受け持つ。一方、待機時の消費電力や長時間負荷の発熱は、電圧設定とキャッシュ、TSMC向けの物理設計に左右される。コア名と周波数だけで省電力化を断定することはできない。
C1世代には、CPU上の行列演算を加速するSME2も入る。Armは対応するソフトウェア環境でAI処理を最大5倍高速化し、効率を最大3倍にしたと説明する。Googleのアプリも一部がSME2へ対応済みだ。ただし、Pixelの主要AI処理は独自TPUも担う。リークにある新TPU「Santafe」とCPUへ仕事をどう割り振るかが、体感速度と電力を決めることになる。
GPUは「旧世代への後退」とまだ決められない
同じリークは、GPUを「PowerVR C-Series CXTP-48-1536」としている。名称だけを見れば、Imagination Technologiesが2021年に発表したCXT系列に近い。同社のCXT-48-1536 RT3はレイトレーシング用回路を3基備え、最大1.3GRay/sを掲げていた。その翌年に登場したDXTは、CXTより面積当たり性能を20%高め、消費電力も減らしたとされる。
だが、ここからG6のGPUをG5より古い、あるいは性能が下がると結論するのは早い。Imaginationの公開資料には、リークにある「CXTP」という派生名の構成が見当たらない。クロックと演算器数は不明で、レイトレーシング回路やドライバー機能も分かっていない。G5に搭載されたとされるDXT-48-1536と数字の後半が同じでも、実装面積や動作周波数が同じとは限らない。
むしろ、CPUとモデム、TPUへ割く電力を増やすため、GPUのピーク性能を抑える設計もあり得る。反対にN2の効率改善を使い、同じ規模のGPUを高い周波数で動かすこともできる。どちらを選んだかを示す証拠はまだない。3Dゲームの持続フレームレートとGPUの消費電力を実機で測るまで、評価は保留すべきだ。
FCC文書がMediaTekへの変更を補強する
モデムについては、リークより強い手掛かりが出た。Android Authorityは、Googleの型番「GZDQ6」に関する米連邦通信委員会(FCC)のSAR試験報告を調べ、30ページにMediaTekの送信電力制御アルゴリズムが記載されていることを見つけた。文書は折りたたんだ状態と開いた状態の試験を含み、次期Pixel Foldとみられている。
FCC文書はMediaTek製の無線技術が入る可能性を高めるが、モデム名をM90とは書いていない。M90という型番はMystic Leaksの情報にとどまる。MediaTekが公表したM90は、最大12Gbpsの下り通信に対応し、sub-6GHzとミリ波の両方を扱う。デュアルSIM同時待受と衛星通信にも対応する。前世代モデムより平均消費電力を最大18%減らすというが、これもMediaTekの基準による値で、Pixel 11の電池持ちを保証しない。
Tensor G6の報道を一つの部品だけで読むと、2nmなら高性能、CXT系なら低性能という単純な評価に陥る。報道とリークどおりなら、2nm工程とC1 CPUにMediaTekの無線技術を組み合わせ、TPUや画像処理回路も一つの電力枠へ収める設計になる。8月の発表で確認したいのは工程名と部品名に加え、Googleがどの処理へ電力を振り分けたのかだ。その答えは発売後の持続性能と通信時の発熱に表れ、オンデバイスAIの速度と電池持ちも判断材料になる。