Samsung ElectronicsとBroadcomは、メモリとファウンドリを横断する協業を2030年までの5年間で2000億ドル超と見込む覚書(MOU)を結んだ。署名は2026年7月24日、米サンフランシスコで開かれたAI Summitで行われた。対象はHBMの供給から2nm以下の製造、2.3D・2.5Dパッケージまで広い。ただし、2000億ドルは確定した受注額として公表された数字ではない。AIアクセラレータを構成するメモリ、ロジック、実装を一つの協業枠に入れたことが今回の変化である。

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「2000億ドル超」が表すもの

Samsungの発表は、両社がメモリとファウンドリで進める協業の規模を、2030年までの5年間で2000億ドル超と見積もっている。発表形式はMOUであり、Broadcomが同額を発注済みとも、Samsungが売上として確保したとも説明していない。製品分野ごとの金額と最低購入額は公表されず、単価や数量も分からない。

この違いは見出しの但し書きでは済まない。5年間の見積額には、HBMの供給とBroadcom製品の受託製造が含まれる一方、Samsungの英語発表は金額の対象を「memory and foundry」と記す。韓国語発表は先端パッケージまで含む協業全体を強調しているが、契約上の内訳は示していない。したがって、2000億ドルをファウンドリ単独の受注や、現時点で保証された売上へ置き換えることはできない。

一方で、数字の大きさが空疎という意味でもない。両社は既存の取引を、次世代AIインフラ向けの長期的な開発・供給枠へ広げる。Broadcomの次世代製品に対し、Samsungがメモリと製造工程を同時に提案できる関係を2030年まで置いた点に、MOUの実務的な重みがある。

HBMと2nmを同じ開発計画に束ねる

メモリ分野では、SamsungがBroadcomの次世代AIアクセラレータ向けにHBMを供給する協業を進める。ファウンドリ分野では、BroadcomのWireless Broadband Communications(WBC)製品などにSamsungの2nm以下のプロセスを使う計画だ。Broadcomの顧客名やアクセラレータの製品名は明かされていない。

BroadcomのAI半導体事業は、供給枠を早期に固める理由を数字で示している。同社の2026年度第2四半期には、AI向け半導体売上高が108億ドルに達し、前年同期比143%増えた。第3四半期は160億ドル、同200%超の増加を見込む。成長を支えているのはカスタムAIアクセラレータとAIネットワーキングだ。演算チップだけを用意しても製品にはならない。HBMと先端製造を同じ時間軸で確保する必要がある。

Samsung側にも、協業を始めるための製造基盤がすでにある。同社は2026年2月にHBM4の量産出荷を始め、5月29日には12層HBM4Eのサンプル出荷を発表した。HBM4Eの量産開始は、顧客のスケジュールに合わせ、サンプル評価と最適化を終えた後になる。ファウンドリでは第1世代2nm製品の量産を2025年第4四半期に開始し、2026年第2四半期には第2世代2nmのモバイル製品を立ち上げる計画を示している。今回のMOUは、未完成のロードマップを約束したものではない。量産または顧客評価へ進んだ技術をBroadcomの製品計画へ結び付ける枠組みである。

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2.3Dと2.5Dがメモリとロジックをつなぐ

先端パッケージは、HBMと2nm製造を一つのAI半導体へまとめる工程に当たる。Samsungは、2nmプロセスを基礎にした2.3Dと2.5Dの実装技術を協業対象に挙げた。微細化したロジックとHBMを近接配置し、チップ間の帯域を広げながら消費電力と発熱を抑えるには、パッケージの設計を製造工程と並行して詰めなければならない。

2.5D Cube-Sは、シリコンインターポーザ上にロジックとHBMを水平に配置し、高帯域・低遅延の接続を作る。2.3Dには、細かな配線ができるシリコンブリッジをRDLインターポーザへ埋め込むCube-Eと、有機RDLインターポーザを使うCube-Rがある。Samsungは、Cube-Eを大型化した際のコスト効率、Cube-Rをより低コストで大型化しやすい選択肢として説明している。

つまり2.3Dと2.5Dは、同じ実装方式の呼び分けではない。Broadcomが必要とする帯域、実装面積、コストに応じ、インターポーザの構造を選べる。Samsungがメモリ、2nmロジック製造、パッケージをまとめて受け持てれば、部門や外部企業をまたぐ設計調整を減らせる可能性がある。Samsungは設計とプロセスの協調最適化から量産までをつなぎ、開発期間の短縮を狙うとしている。

金額より先に確かめたい3つの条件

MOUが実際の供給へ移る過程は、3つの条件で追える。第1は、2000億ドル超の対象として明記されたメモリとファウンドリへの配分だ。内訳が出れば、Samsungの両事業にどれだけ売上が立つのかを判断しやすくなる。先端パッケージは協業対象に含まれるが、発表は2000億ドルの配分先として明記していない。料金や数量などの商務条件は別に確かめる必要がある。

第2は顧客評価と量産時期である。HBM4Eはサンプル段階にあり、Broadcom製品向け2nmチップのテープアウト、認定、量産開始日は公表されていない。Samsungの2026年第1四半期決算資料は、同年下半期に先端ノードの生産ラインがフル稼働になるとの見通しを示したが、Broadcom向けの割当量までは分からない。

第3は、最低購入量などの発注条件が開示されるか、個別の供給契約が確認できるかだ。今回の発表からはキャンセル条件が分からず、独占性や生産拠点も示されていない。これらが開示されない限り、2000億ドル超を協業の上限や確約額とは扱えず、両社が見込む5年間の規模として読む必要がある。次の節目は金額の再提示ではない。HBMの認定、2nm製品の量産、具体的な発注条件が同じ製品計画の中で結び付くかどうかだ。