Samsung Electro-Mechanicsガラスコア基板計画が、覚書から量産拠点づくりへ進む段階に入った。韓国IT Chosunは2026年7月2日、同社が住友化学グループ傘下のDongwoo Fine-Chemと、次世代パッケージ基板に使うガラスコアを生産する合弁会社の設立で本契約を結んだと報じた。2025年11月の公式発表では持株比率や社名、事業日程は未確定だった。今回の報道で、それらが投資額約4800億ウォン、Samsung Electro-Mechanics 66%、Dongwoo Fine-Chem 34%、2027年後半稼働という形で具体化したことになる。

ガラスコアは、AIチップを支えるパッケージ基板の前提を変える材料として扱われている。GPU、ASIC、HBMを大きな面積で高密度に接続するほど、有機基板では反り、熱膨張、信号品質の管理が難しくなるためだ。Samsung Electro-Mechanicsはすでに世宗事業場のパイロットラインでガラスパッケージ基板の試作品を作っている。新会社が実際に稼働すれば、試作ラインの技術を量産供給へ移すための材料側の足場ができる。

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MOUで残った空欄が埋まった

Samsung Electro-Mechanicsは2025年11月5日、住友化学グループとガラスコア製造の合弁会社を設立する覚書を結んだと発表していた。当時の発表では、本社と初期生産拠点をDongwoo Fine-Chemの京畿道平沢事業場に置く計画を示した。一方で、持株構成、事業日程、社名などの詳細は、2026年に本契約を結ぶ段階で詰めるとしていた。

IT Chosunの報道は、この空欄を埋める。新会社の仮称はGlaSSEM、総出資規模は約4800億ウォン、持株比率はSamsung Electro-Mechanicsが66%、Dongwoo Fine-Chemが34%とされた。本社と生産拠点はDongwoo Fine-Chemの平沢事業場内に置き、必要な手続きを経て2026年中に法人設立を終え、2027年後半から本格稼働する計画だという。

資本参加よりも意味があるのは、材料と基板設計を同じ生産計画に束ねる点だ。Samsung Electro-Mechanicsはパッケージ基板の設計と製造を持つが、ガラスコアでは材料物性、ガラス加工、平坦性、穴あけとめっき工程の管理が量産性を左右する。Dongwoo Fine-Chemは住友化学グループの韓国子会社で、平沢に製造インフラを持つ。Samsung側の基板設計と、住友化学グループ側の材料技術を同じ拠点で接続するところに、このJVの狙いがある。

ガラスコアは大型パッケージの反りを抑える

Samsung Electro-Mechanicsは、ガラスコアを次世代半導体パッケージ基板の中核材料と説明している。従来の有機基板に比べて熱膨張係数が低く、平坦性に優れるため、高密度で大面積の先端パッケージ基板を作りやすい。同社は2025年9月のKPCA Showでも、ガラスコアパッケージ基板を次世代技術として展示し、従来基板に比べて厚さを約40%減らしながら、大面積基板の反り制御と信号性能を改善すると説明していた。

この説明は、AI向けパッケージの変化とつながる。Samsung Electro-Mechanicsの製品説明によれば、パッケージ基板は半導体とメインボードの間で電気信号を伝え、外部応力から半導体を守る。FCBGAは高集積チップとメインボードを接続する高密度基板で、サーバーCPU、AIアクセラレータ向けASIC、ネットワークASIC、自動車SoCなどに使われる。

AIアクセラレータでは、ロジックチップとメモリの周囲に、電源系と高速信号配線が密に集まる。面積が広がるほど、基板がわずかに反るだけでも実装精度や信号品質に跳ね返る。ガラスは有機材料より寸法安定性を取りやすく、平坦性を確保しやすい。だからこそ各社は、ガラスコアを「より大きなAIパッケージ」を成立させるための材料候補として追っている。

ただし、材料を変えればすぐ量産できるわけではない。ガラスは絶縁材料であり、上下方向に信号を通すにはTGV、つまりガラス貫通ビアを安定して形成し、めっきや接続信頼性を量産水準に持ち込む必要がある。TrendForceは6月の市場整理で、ガラス基板の本格量産は2030年以降に広がるとの見方を紹介しつつ、2027年から初期商用化が始まるとした。Samsung Electro-Mechanicsの2027年後半稼働計画は、この初期商用化の入口に合わせた動きになる。

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AIサーバー向けFCBGAの追い風

この投資が出てきた背景には、Samsung Electro-Mechanicsのパッケージ基板事業そのものの伸びがある。同社の2026年第1四半期発表によれば、Package Solution事業の売上高は7250億ウォンで、前年同期比45%、前四半期比12%増加した。AIアクセラレータ、サーバーCPU、ネットワーク向けの高付加価値パッケージ基板が伸びたことが要因として挙げられている。

Samsung Electro-Mechanicsは同じ発表で、第2四半期もAI、サーバー、ネットワーク向けFCBGAの需要が強いとの見通しを示した。同社はAIアクセラレータとサーバーCPU向けに、高多層、大面積、部品内蔵型の次世代製品を供給して売上を伸ばす方針を掲げている。つまり、ガラスコアは遠い研究テーマではなく、同社がすでに売上を伸ばしている高性能基板事業の次の材料選択に入っている。

生産拠点の意味も大きい。同社の製品ページでは、BGAの生産拠点は韓国の世宗事業場、FCBGAは韓国の釜山事業場とベトナム拠点とされている。2025年11月の公式発表では、ガラスパッケージ基板の試作品を世宗パイロットラインで生産中と明かした。今回報じられた平沢のJVは、既存の基板工場を置き換えるというより、ガラスコアという前工程寄りの材料供給を外部パートナーと固定する役割を担う。

この構造なら、Samsung Electro-Mechanicsは自社の基板設計、顧客対応、FCBGA量産経験を維持しながら、ガラスコアの材料製造をJVで積み上げられる。住友化学グループ側にとっても、材料と韓国の製造インフラをSamsungの基板ロードマップに直接接続できる。AIサーバー向け部材では、性能仕様と供給時期が同時に見られる。66対34という持株比率の報道は、Samsung Electro-Mechanicsが主導権を握りつつ、材料側の知見を内側に取り込む設計を示している。

2027年から始まる量産技術の選別

ガラス基板をめぐる競争には、TSMC、Intel、韓国の基板メーカーも入っている。TrendForceは6月、AIチップの大型化と高密度化でガラス基板への関心が高まり、2027年に初期商用化、2029年ごろに立ち上げ、2030年以降に本格量産という時間軸を紹介した。同じ記事では、TSMCのCoPoS、Intelのガラス基板試作、韓国勢の顧客評価も並べられている。

TSMC側の動きは、Samsungにとって見逃しにくい。TrendForceの7月記事は、TSMCが6月のJPCA Show 2026でCoWoS向けガラス基板ロードマップを供給網に示したと伝えている。TechNewsも、TSMCが日本と台湾の供給網と組み、ガラス基板パッケージの検証結果を示したと報じた。ここで扱われるガラスインターポーザやガラスコアは同じものではなく、CoPoSとCoWoSも工程上の役割が異なる。それでも、大型AIパッケージの反り、電源品質、配線密度を改善するために、ガラスを使う選択肢が現実のロードマップへ入ってきた点は共通する。

Samsung Electro-Mechanicsの新JV計画は、この競争の中で「いつ、どの材料を、どの拠点から出せるか」を前に出す。2027年後半の稼働が実現しても、ただちにガラス基板がAIアクセラレータの主流になるとは限らない。TGV形成、めっき、歩留まり、パネルサイズ、顧客認定はまだ確認が必要だ。むしろ最初の焦点は、2026年中にGlaSSEMが予定通り法人化され、2027年後半にガラスコアを安定して出せるかにある。そこが見えれば、ガラス基板競争は試作品の優劣から、供給能力と顧客採用の競争へ移る。