SK hynixのKwak Noh-Jung(郭魯正)CEOは、2027年がメモリ業界史上で最も深刻な供給不足の年になるとの予測を示した。Reutersが2026年7月10日に報じた単独インタビューで、同氏は顧客需要が増え続ける一方、自社の生産能力には限界があり、需要が供給能力を上回る状態は2030年を越えても続くと述べている。これはAIアクセラレーター向けHBMに限った警告ではない。SK hynixの決算資料と増産計画を重ねると、一般サーバー用DRAMとデータセンター向けSSDに需要が広がる速さに、新しい製造設備の稼働が追いつかない時間差が見えてくる。

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2026年分を売り切った先に、2027年の不足が待つ

Kwak CEOの予測は、遠い将来の悲観論から突然出てきたものではない。SK hynixは2025年10月の決算発表で、主要顧客との2026年分のHBM供給協議を終え、DRAMとNANDについても翌年の全生産分に相当する顧客需要を確保したと説明していた。2026年4月の決算でも、需要が供給能力を上回る環境が続いていると明記している。

つまり、2027年は逼迫が始まる年ではない。すでに割り当てが埋まった2026年の次に、需要と生産能力の差がさらに開くとSK hynixは見ている。Kwak氏の「供給面で業界史上最悪の年」という表現は、需要の絶対量に対して増産が間に合わない度合いを指す。製品別の不足率は示されておらず、すべてのメモリが同じ強さで不足するという意味ではない。

需給の強さは業績にも表れた。SK hynixの2026年第1四半期は売上高52兆5763億ウォン、営業利益37兆6103億ウォン、営業利益率72%となった。同社はAIインフラ投資の拡大でHBM、高容量サーバーDRAM、企業向けSSDの販売が増えたと説明し、DRAMとNANDの価格環境も当面良好だと予測した。供給不足は、メモリメーカーに強い価格決定力を与えている。

AI推論はHBMの外側でもメモリを使う

今回の逼迫をHBM争奪戦として捉えると、需要の広がりを見誤る。大規模モデルの学習ではGPUの隣に積むHBMが目立ったが、AIサービスが推論へ移ると、処理を制御するCPUサーバーのDRAMと、長い文脈や検索用データを置くSSDも増える。SK hynixは2025年10月時点で、AIの計算負荷が一般サーバーへ分散し、高性能DDR5と企業向けSSDを含む製品群全体に需要が広がると説明していた。

2026年第1四半期には、この見方をさらに進めた。AIエージェントが多様な環境で推論を繰り返せば、必要なメモリはDRAMからNANDまで増えるという。AIサーバー1台を増やすとき、アクセラレーター用HBMだけを用意すれば済むわけではない。CPU側の主記憶と、モデルや検索データを収めるストレージも一緒に必要になる。

製造側では、HBMへの配分が汎用DRAMの供給力と結び付く。Micronは2026年3月の決算資料で、HBMに多くのウェハーを振り向けること、HBMの成長率が高いこと、微細化で1枚のウェハーから増やせるビット数の伸びが鈍っていることをDRAM供給の制約に挙げた。NANDでも、一部のクリーンルームがDRAMへ転用され、空間が限られると説明している。HBMと汎用DRAMの増産は同じ製造資源を奪い合う。

Micronの2026年6月時点の見通しも方向は同じだ。同社はDRAMとNANDの需給が2027年を越えて逼迫すると予測し、2026年の業界出荷量をビット換算でDRAMは前年比20%台前半から半ば、NANDは約20%増と見込む。それでも需要を十分には満たせないという判断である。SK hynixだけが極端な見方を示しているわけではない。

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新工場は2027年に開くが、供給は段階的に増える

SK hynixは増産を急いでいる。清州のM15Xではすでに装置を導入し、先端DRAMの生産を早期に増やす。龍仁半導体クラスターの第1ファブには総額約31兆ウォンを投じ、2棟に6つのクリーンルームを設ける計画だ。最初のクリーンルームは当初の2027年5月から同年2月へ前倒しされた。

ただし、クリーンルームの開設日は供給不足の解消日ではない。製造装置を搬入して生産工程を立ち上げ、歩留まりを高め、顧客認証を終えてから、ようやく出荷量が増える。龍仁への追加施設投資は2030年末まで続く予定で、6つのクリーンルームが一斉に能力を出す計画ではない。2027年は新設備が動き始める年であると同時に、需要の増加を既存工場と立ち上げ途中の設備で受け止める年になる。

NANDの供給増にはさらに時間がかかる。SK hynixは2026年7月、清州に総額100兆ウォンを投じる計画を発表した。内訳は新しいNAND工場M17に約80兆ウォン、先端パッケージ施設P&T7などに約20兆ウォンである。P&T7は2027年末の完成を予定するが、M17は2027年に着工し、稼働は2029年前半を目指す。2027年の不足に対して、M17は即効薬にならない。

競合の増産予定も同じ時間軸に並ぶ。Micronはアイダホ州のID1で最初のウェハーを出す時期を2027年半ば、ID2を2028年末としている。台湾・銅鑼の既存工場から意味のある量を出荷するのも2027年半ば、シンガポールの新しい先端パッケージ能力がHBM供給に寄与し始めるのは2027年前半の予定だ。各社の新能力は2027年から2029年へ段階的に加わる。だからこそ、2027年に供給が急増して需給が反転する見通しは立てにくい。

長期契約が守る供給と、次の循環への備え

供給不足はメモリの買い方も変え始めた。Micronは2026年6月までに16件の戦略顧客契約を結び、多くを2026年から2030年までの5年契約とした。最低数量と最低価格に基づく残存履行義務は約1000億ドル、顧客から受け取る預託金などのコミットメントは220億ドルに達するという。顧客は工場完成後の調達競争を待たず、数年先の数量を契約で押さえ、メーカーの設備投資を資金面から支えるようになった。

長期契約は顧客に供給の見通しを与え、メーカーにとっては投資回収の確度が高まる。それでも、メモリ事業の循環そのものが消えたわけではない。SK hynixは2023年に7兆7300億ウォンの営業損失を計上し、営業利益率はマイナス24%だった。それが2026年第1四半期には72%へ反転している。AI投資が想定より減速すれば、いま建設している巨大工場の稼働が進んだ後に供給過剰へ振れる危険は残る。

Kwak CEOの2030年超という予測は、製品別の需要量や価格を伴わない企業側の長期見通しである。消費者向けRAMやSSDが何年、どの程度値上がりするかまでは導けない。確かめるべきなのは、2027年2月以降の龍仁でウェハー投入と歩留まりがどの速度で上がるか、M17が2029年前半の稼働予定を守れるか、そして5年契約で押さえられた需要が実際の出荷へ結び付くかである。これらの進捗に需要の伸びと競合各社の増産ペースを重ねれば、2030年を越えるというSK hynixの予測を検証できる。