SandiskとSK hynixは2026年8月3日、High Bandwidth Flash(HBF)初の技術仕様をOpen Compute Project(OCP)で公開した。2月に始めた標準化作業は、約6カ月でホスト接続や電気仕様、パッケージ、ソフトウェア操作を含む共通の設計基準に進んだ。HBFはNANDフラッシュを積層し、HBMより大きな容量をAIアクセラレータの近くへ置く構想である。今回そろったのは製品そのものではなく、メモリとアクセラレータを接続するための共通仕様だ。

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約6カ月で共通化した接続と実装

最初の仕様は、システムインターフェースと電気・技術指針に加え、基本的な性能期待値を定める。対象にはxPUとHBFを結ぶホストインターフェース、HBFダイスタックの信頼性とパッケージ、読み書きのためのソフトウェアガイドも入った。CPUやGPU、専用アクセラレータからHBFをどう扱うかまで対象になる。

GoogleとTenstorrentも標準化の途中でコンソーシアムへ加わり、技術検証と仕様策定に参加した。SandiskとSK hynixの2社が主要貢献者を務める一方、AIインフラを運用する側とアクセラレータを設計する側も検証に入った。両社の発表はGoogleとTenstorrentの個別の貢献内容を明らかにしていないが、参加企業はメモリメーカー2社からシステム側へ広がった。

仕様はOCPの枠組みで業界に公開された。一方、OCPはHBFをストレージ分野のSemi-Private Workstreamに置き、共同開発への参加やフィードバックには所定の手続きを設けている。完成した仕様を閲覧することと、次の版の策定に加わることは別だ。

HBMとSSDの間を埋める補助層

SK hynixはHBFを、HBMとSSDの間に加わる新しいメモリ層と説明する。HBMは最も高い帯域が必要な処理を受け持ち、HBFはより大きなモデル重みを計算器の近くに保持する。SSDから重みを運ぶ回数を減らしつつ、HBMだけで全容量を賄う構成を避ける狙いだ。両者は置き換えの関係ではなく、同じシステム内で併用される。

HBFの中核は、NANDの記憶セルとCMOS回路を直接接合するSandiskのCBA(CMOS directly Bonded to Array)技術と、16段のダイ積層である。NANDは電源を切ってもデータを保持し、DRAMのようなリフレッシュ電力を必要としない。Sandiskはこの特性を、頻繁に書き換えないモデル重みの格納へ生かそうとしている。

ただし、SandiskはHBFがHBMより長い遅延と大きなページサイズを持つと認めている。同社の性能比較も、推論時に事前学習済みの重みを読む用途を対象にした。OCP仕様は読み書きのガイドと信頼性指針を含み、Sandiskは耐久性と高温動作に対応する技術を製品側で設計している。

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1.6TB/sと512GBはOCP規格値ではない

Sandiskが2025年7月に示した第1世代HBFの目標は、読み出し帯域1.6TB/s、1ダイ256Gb、16ダイ積層で合計512GBだった。同社はHBM4に近い設置面積、消費電力、積層高も掲げている。しかし、これらはSandisk製品の開発目標であり、今回のOCP仕様が全実装へ保証する数値ではない。

性能の根拠にも条件が付く。SandiskはLlama 3.1 405Bモデルの8ビット事前学習済み重みを読む社内シミュレーションで、HBFと容量無制限と仮定したHBMの性能差が2.2%以内だったとする。比較は一度に1つのカーネルを走らせたモデル上の結果で、実機の混合負荷や書き込み性能を測ったものではない。512GBの容量と1.6TB/sの帯域を同時に安定して出せるかは、実物で確かめる段階に残る。

この区別は標準化の進み具合を測るうえで欠かせない。今回の発表には仕様の版番号、適合試験、認証制度の説明がなく、数値要件の詳細も示されていない。共通インターフェースが決まっても、異なるベンダーのHBFとアクセラレータが交換可能になるとは限らない。

サンプル後に相互運用を測る

Sandiskは2025年8月時点で、HBFメモリの初サンプルを2026年後半、HBFを組み込んだ推論デバイスの初サンプルを2027年初頭に出す目標を示していた。仕様公開は、そのサンプルをメモリ単体で評価する段階から、ホストやソフトウェアを含むシステムとして試す段階へ移す準備になる。SK hynixはHBFを含む複合メモリの需要が2030年ごろに伸びるとの見通しを示しており、標準は市場立ち上がりより先に置かれた。

実機では、異なるホストとの接続、連続読み出し時の消費電力、高温下の信頼性、NANDの耐久性を確かめる必要がある。さらに、HBMとHBFへどのデータを置くかをソフトウェアが適切に制御できなければ、容量を増やしても応答時間は縮まらない。価格が公表されていない以上、総保有コストの低下も構成ごとに測ることになる。

GoogleとTenstorrentの参加は、こうしたシステム検証を始める入口になる。2026年後半のサンプルで仕様に沿った接続が再現され、2027年初頭の推論機器でHBMとの役割分担が機能すれば、HBFはNANDの新製品からAIメモリ階層の一部へ進める。仕様公開後の成否を決めるのは、512GBという容量ではなく、その容量を複数社の計算基盤で同じように使えるかどうかだ。