テクノロジーと科学の最新の話題を毎日配信中!!

Intel「Nova Lake-S」は最大52コア搭載か?コア数戦争の再燃とAI時代への布石

Y Kobayashi

2025年6月17日6:10AM

2026年の登場が噂されるIntelの次世代デスクトップCPU「Nova Lake-S」。その詳細なスペックに関する新たなリーク情報が報じられた。それによれば、最上位モデルは、これまでの常識を覆す最大52コア構成(16P+32E+4LP)を擁し、TDP(熱設計電力)150Wで登場するというから驚きだ。この数字の裏には、AMDとの熾烈な覇権争いはもちろん、AI時代におけるパーソナルコンピューティングのあり方を再定義しようとするIntelの壮大な戦略が透けて見える。もし現実のものとなれば、IntelのデスクトップCPU戦略に大きな転換点をもたらすことになりそうだ。

スポンサーリンク

リークされたNova Lake-Sの衝撃的なスペック:3種類のコアが織りなす新世界

今回、信頼性の高いリーカーとして知られる複数の情報源(Jaykihn金猪升级包)らから、Nova Lake-Sの具体的なSKU構成が明らかにされた。その内容は、デスクトップCPU市場のパワーバランスを根底から覆しかねない、まさに衝撃的なものだ。

フラッグシップは異次元の52コア(16P+32E+4LP)構成

リーク情報によれば、最上位モデル(Core Ultra 9 385K? と推測される)は、以下の驚異的な構成を誇るという。

  • Pコア(高性能コア): 16コア
  • Eコア(高効率コア): 32コア
  • LP-E コア(低消費電力Eコア): 4コア
  • 合計: 52コア / 52スレッド
  • TDP(Processor Base Power): 150W

現行のArrow Lake-S最上位モデル「Core Ultra 9 285K」が8P+16Eの合計24コア構成であることと比較すると、コア数は2.16倍に達する。特に、高性能を担うPコアが8から16へ、マルチスレッド性能を支えるEコアが16から32へと、それぞれ倍増している点は注目に値する。

さらに興味深いのは、新たに4つのLP-Eコアが加わったことだ。これはノートPC向けのMeteor Lakeで採用されたSoCタイル内の省電力コアと同様の役割を担うものと考えられる。OSのバックグラウンドタスクや超低負荷時の処理をこのLP-Eコアにオフロードすることで、システム全体の消費電力を劇的に引き下げ、「常時接続・常時応答」といった新しいPCの利用シーンをデスクトップにもたらす狙いがあるのだろう。

Core Ultra 9から3まで、全方位をカバーするSKUラインナップ

リークされたラインナップは、ハイエンドからエントリーまで、市場のあらゆるセグメントをカバーする構成となっている。

モデル(推測)コア構成 (P+E+LP)合計コア数TDP (PBP)
Core Ultra 9 (385K?)16 + 32 + 452150W
Core Ultra 7 (365K?)14 + 24 + 442150W
Core Ultra 5 (345K?)8 + 16 + 428125W
Core Ultra 5 (335?)8 + 12 + 424125W
Core Ultra 5 (325?)6 + 8 + 418125W
Core Ultra 34 + 8 + 41665W
Core Ultra 34 + 4 + 41265W

特筆すべきは、全SKUに4つのLP-Eコアが標準搭載されている点だ。これはIntelがLP-Eコアを単なる付加機能ではなく、次世代アーキテクチャの根幹をなす要素と位置づけていることの証左である。

ハイパースレッディング廃止の戦略的意味

Arrow Lake-Sに続き、Nova Lake-SでもPコアのハイパースレッディング(HT)はサポートされない見込みだ。かつてIntelの代名詞であったHT技術を廃止する背景には、いくつかの戦略的意図が考えられる。

  1. シングルスレッド性能の最大化: 1つの物理コアのリソースを1つのスレッドに集中させることで、遅延が重視されるゲームやアプリケーションでの応答性を極限まで高める狙いがある。
  2. セキュリティリスクの低減: 過去にサイドチャネル攻撃の標的となったHTの脆弱性を構造的に排除する。
  3. アーキテクチャの簡素化: EコアとLP-Eコアという「本物のコア」を大量に搭載することで、仮想的なコアであるHTに頼る必要性が薄れた。アーキテクチャをシンプルにすることで、電力効率や設計の最適化を図っている可能性も否定できない。

「体験」を支えるプラットフォームの大幅刷新

Nova Lake-Sの進化は、CPUコアだけに留まらない。それを支えるプラットフォームもまた、次世代の名にふさわしい飛躍的な進化を遂げる。

ネイティブDDR5-8000対応:AIとクリエイティブを加速するメモリ帯域

wccftechの報道によると、Nova Lake-SはネイティブでDDR5-8000 MT/sという超高速メモリをサポートする。これはArrow Lake-SのDDR5-6400 MT/sから25%の向上であり、プラットフォームの根幹をなすメモリ帯域が大幅に強化されることを意味する。

この広大なメモリ帯域は、ローカル環境で大規模言語モデル(LLM)を動かすようなAIワークロードや、高解像度ビデオ編集、3Dレンダリングといったクリエイティブ作業において、ボトルネックを解消し、処理能力を劇的に向上させるだろう。オーバークロックメモリや次世代のCUDIMM/LPCAMM2モジュールと組み合わせれば、10,000 MT/sを超える領域も見えてくるはずだ。

PCIe 5.0レーン倍増:未来の拡張性への盤石な布石

プラットフォームのもう一つの柱であるI/Oも強化される。Nova Lake-Sは合計36レーンのPCIe 5.0をサポートすると報じられている。CPUから直接、2つのPCIe 5.0 x16スロット(例:次世代GPUの2枚刺し)や、GPU用のx16スロットに加えて最大4つのPCIe 5.0 x4 NVMe SSDをフルスピードで稼働させることが可能になる。

これは、将来登場するであろう、さらに広帯域を要求するGPUやストレージ、AIアクセラレータを見据えた、盤石な布石と言える。IntelはCPU単体の性能だけでなく、エコシステム全体のパフォーマンスを引き上げることで、競合に対する優位性を確立しようとしているのだ。

スポンサーリンク

なぜ今、52コアなのか?Intelの巨大戦略を読み解く

この衝撃的なコア数の増加は、単なるスペックシート上の見栄えを良くするためではない。そこには、Intelが描くデスクトップPCの未来像と、それを実現するための明確な戦略が存在する。

AMDとの終わらないコア数競争、再び

かつてRyzen Threadripperでコンシューマ市場に多コアの波をもたらしたAMDに対し、IntelはAlder Lake以降、ハイブリッドアーキテクチャで「性能と効率の両立」という新たな価値を提示してきた。しかし、AMDもZenアーキテクチャの改良を続け、コア数と性能で優位性を保っている。

今回のNova Lake-SにおけるPコアとEコアの倍増は、AMDの得意とするマルチスレッド性能の領域で、再び真っ向から勝負を挑むというIntelの強い意志の表れだ。これは、長年にわたる両社の競争が、新たなステージに突入したことを意味する。

AI時代の並列処理性能への明確な回答

現代のコンピューティングは、AIの台頭によって大きく変わりつつある。特に、クラウドだけでなく個人のPC上でAI処理を行う「エッジAI」や「AI PC」が次の主戦場だ。これらのAIアプリケーションは、膨大なデータを並列処理する能力を要求する。

52もの物理コアを持つNova Lake-Sは、まさにこのAI時代の要求に対するIntelからの明確な回答と言えるだろう。大量のEコアがAI推論などの並列タスクを効率的に処理し、強力なPコアがユーザーの操作に対する即時応答性を確保する。このアーキテクチャは、バックグラウンドで常にAIが動作するような未来のPC環境において、圧倒的なアドバンテージを発揮する可能性を秘めている。

新たな価値軸「常時接続・低消費電力」

全モデルに搭載されるLP-Eコアの存在は、IntelがデスクトップPCに新たな価値軸をもたらそうとしていることを示唆している。これまでのデスクトップPCは「使用時に電源を入れる」のが常識だったが、LP-Eコアによって極めて低い消費電力でシステムをアクティブに保つことができれば、スマートフォンやノートPCのように、スリープから瞬時に復帰し、常に最新の情報に同期されている、という体験がデスクトップでも可能になる。

これは、PCの役割を単なる「作業ツール」から、生活に溶け込む「インテリジェントなハブ」へと進化させる、大きなパラダイムシフトの第一歩なのかもしれない。

Nova Lake-Sが示すデスクトップPCの新たな地平

リークされたIntel Nova Lake-Sの情報は、PC業界の未来を占う上で非常に重要な示唆に富んでいる。最大52コアという大胆な構成は、Intelが性能の限界を押し広げ、特にAI時代のマルチスレッド性能要求に応えようとする強い意志の表れだろう。DDR5-8000ネイティブサポートやPCIe 5.0 x32レーンといったプラットフォームの強化は、このモンスターCPUの性能を余すことなく引き出すための基盤となるだろう。

しかし、新たなソケットへの移行、そしてそれに伴うユーザーの買い替え負担、さらに増大するTDPに対する冷却ソリューションの課題など、乗り越えるべきハードルも存在する。そして何よりも、ライバルAMDが2026年までにどのような対抗馬を市場に投入するのか、その動向も今後の競争環境を大きく左右する要因となる。

Nova Lake-Sが市場に登場するのは2026年後半とされており、まだ先の話ではある。しかし、このリークは、PCが単なる情報処理装置から、AI処理のハブへと進化する過渡期において、Intelがどのようなビジョンを描いているのかを垣間見せてくれた。この次世代CPUが、我々のPC体験をどのように変革し、市場の勢力図を塗り替えるのか楽しみだ。


Sources

Follow Me !

\ この記事が気に入ったら是非フォローを! /

フォローする
スポンサーリンク

コメントする