ASUS、GIGABYTE、MSIが2026年第3四半期にマザーボードの流通価格引き上げを計画していると、中国の業界サイト「博板堂(Board Channels)」が報じた。背景には、民生用マザーボード向けPCB(プリント基板)と銅の値上がりがある。表面実装コンデンサーや電源部品、制御ICのコストも上昇したという。中でも「2026年に少なくとも50%上昇」という数字は大きい。ただし、これは完成品マザーボードの店頭価格ではなく、PCB価格の見通しを指す。PC購入者にとっての実際の負担は、メーカーがどこまで原価を吸収し、流通在庫がいつ入れ替わるかで決まる。

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Q3の流通価格調整と未公表の上げ幅

博板堂が伝えた計画は、3社が7月から9月までの第3四半期中に流通価格を調整し、メーカーと販売網の利益率を立て直すという内容だ。8月4日時点で四半期はすでに始まっている。したがって、全製品が同じ日に一斉改定されるという話ではなく、仕入れ条件の変更が順次流通へ届く可能性を示す。

博板堂の投稿には、完成品の具体的な値上げ率や対象モデル、実施地域が示されていない。3社共通の価格表も添付されておらず、今回示されたのは流通価格を調整する見通しまでだ。ハイエンドと普及価格帯、Intel向けとAMD向けで上げ幅が同じになる根拠もない。

それでも値上げ観測が注目されるのは、材料費の上昇と販売数量の減少が同時に起きているからである。博板堂はDIY PC需要が弱く、メーカーが上昇したコストを顧客へ十分に転嫁できていないと伝えた。販売台数が伸びない局面では、開発費や物流費をより少ない製品で回収しなければならず、メーカーは原価上昇を自社で吸収しにくくなる。

「50%」の対象は完成品ではなくPCB

少なくとも50%という数字は、2026年を通じた民生用マザーボード向けPCB価格の上昇見通しである。PCBはCPUソケットやメモリースロットを載せ、電源回路と各種コントローラーを結ぶ。それでも完成品原価のすべてを占めるわけではない。PCBが50%上がっても、店頭価格がそのまま50%上がるとは計算できない。

一方で、値上がりはPCB一品目に限られない。博板堂は、銅に加えて表面実装コンデンサーも値上がりしたと伝えた。電源部品や周辺機能を担う制御ICにも上昇が及ぶ。複数の部材が同時に上がれば、PCB以外の原価で相殺するのは難しくなる。基準となるPCB価格や仕様、50%を算定した地域が公開されていない以上、数字は完成品の予告価格ではなく、調達環境の厳しさを示す指標として読むべきだ。

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中国の銅30.5%高が2オンス銅層へ届くまで

中国工業情報化部が5月22日に公表した2026年第1四半期の統計では、中国市場の銅平均価格が前年同期比30.5%上昇した。錫は48.6%、金は62.7%、銀は167.0%上がっている。これは個別メーカーの仕入れ値ではないが、中国の基板・電子部品産業を取り巻く材料価格が前年より高い方向へ動いたことは公的統計でも確認できる。

銅価格がマザーボードに響く経路は明確だ。MSIは年次報告書で、Intel 800およびAMD AM5シリーズのマザーボードにサーバーグレードPCBと2オンス厚の銅層を採用すると説明している。GIGABYTEもUltra Durable 3で、電源層とグラウンド層にそれぞれ2オンスの銅を使う設計を公開した。同社の資料では、1オンス銅層が35マイクロメートル、2オンスが70マイクロメートルに相当する。

厚い銅層は電気抵抗と発熱を抑え、大電流を扱う電源回路の安定性を支える。電力要求の高いCPUを載せる製品では、銅を減らせば同じ設計目標を維持できるとは限らない。メーカーには材料を薄くして原価を戻すより、設計を保ったまま価格へ反映する選択肢が残る。もっとも、中国市場の銅平均価格30.5%高からPCBの50%高を直接導くことはできない。樹脂やガラス繊維、加工費、歩留まりもPCB価格を動かすためだ。

在庫が価格転嫁の時期をずらす

流通価格が変わっても、店頭表示は同時には動かない。販売店に旧条件で仕入れた在庫があれば、その在庫が尽きるまで価格を維持できる。反対に在庫が薄いモデルや、新しい仕入れ契約へ早く切り替わる地域では、改定が先に表れやすい。世界共通の希望小売価格より、地域別の卸値と在庫回転が当面の価格差を作る。

需要が弱ければ、値上げによって購入者がさらに離れかねない。しかし販売数量が落ちたまま部材費が上がれば、利益を守るには製品構成を高価格帯へ寄せるか、流通価格を改定する必要が出てくる。博板堂は、コストを十分に転嫁できず、メーカーと流通の利益率が圧迫されているとみている。

AIデータセンターの建設は銅や電子部品の需要を増やす一因だが、今回のコスト高をAIだけで説明するのは正確ではない。金属相場と部品供給が原価を押し上げ、そこへ物流費と製品ごとの在庫状況が重なる。購入時に確認すべきなのは「50%」という見出しの数字ではなく、候補モデルの実売価格が新規入荷分で変わったかどうかだ。第3四半期が終わる9月30日までに3社が対象製品と改定幅を示すか、流通価格が先に動くかが、報道の実態を測る基準になる。