Samsung Electronicsの2026年利益は、もはや「好決算」という言葉では捉えにくい規模で語られ始めた。韓国紙JoongAngは、同社半導体部門であるDevice Solutionsの金容官社長が社内タウンホールで、今年の営業利益が半導体事業開始後40年間の累計利益を上回るとの趣旨を語ったと報じた。証券業界では、2026年通期の営業利益が300兆ウォン前後に達するとの見方が出ている。2026年7月6日の為替レートで約31.8兆円だ。
これはSamsungが公式に出した通期予想ではない。7月7日に予定される2Q暫定実績を前にした市場コンセンサスと、社内発言として報じられた見立てである。ただし、荒唐無稽な数字として片付けるには、公式の1Q実績がすでに大きすぎる。Samsungは2026年1Qに売上高133.9兆ウォン、営業利益57.2兆ウォンを計上し、四半期として過去最高を更新した。利益の主役はスマートフォンではない。AIインフラ向けメモリである。
2Qだけで8.97兆円という試算
JoongAngによると、AI投資情報プラットフォームEpicAIが集計したSamsungの2026年2Q営業利益コンセンサスは84兆5994億ウォンだ。円換算では約8.97兆円になる。この水準に届けば、JoongAngが比較対象に置いたNVIDIAの2026年1Q営業利益535億3600万ドル、同紙換算で約81兆7600億ウォンを上回る。AIブームの象徴であるNVIDIAと、メモリ供給側のSamsungが同じ利益表で比較される段階に入ったことになる。
通期300兆ウォンという数字は、2Qだけの上振れでは説明できない。1Qの営業利益57.2兆ウォンを起点に、2Qが84兆5994億ウォン前後へ伸びるなら、年後半も高い水準を保つ必要がある。Samsungの公式資料は、その前提をメモリの需給に置いている。1Q決算発表で同社は、AI関連需要、高付加価値製品の販売拡大、業界全体の平均販売価格上昇を利益拡大の要因として挙げた。
この数字は、1社の業績予想を超えてメモリ業界全体の再評価につながる。JoongAngは、SK hynixの2Q営業利益コンセンサスも64兆4448億ウォンに達すると伝えている。両社の予想がそろって実現すれば、韓国メモリ大手2社の四半期営業利益は合計で約149兆ウォン、円換算で約15.8兆円に近づく。AIデータセンターの投資が、GPUメーカーからメモリ供給側へも大きな利益を移している。
利益を動かしたのはDSとMemory
Samsungの1Q決算を分解すると、利益の偏りははっきり出る。全社営業利益57.2兆ウォンに対し、Device Solutions部門の営業利益は53.7兆ウォンだった。全社利益の大半を半導体が稼いだ計算である。同部門の売上高は81.7兆ウォンで、前年同期の25.1兆ウォンから大きく伸びた。なかでもMemory事業の売上高は74.8兆ウォンとなり、前年同期の19.1兆ウォン、前四半期の37.1兆ウォンを大きく超えた。
Samsungは公式発表で、Memory事業が高付加価値AI需要に対応し、供給制約が残るなかで四半期売上記録を更新したと説明した。AI向けメモリは、GPUやアクセラレータの稼働率を左右する供給制約になっている。Samsungは1Qに、NVIDIAのVera Rubinプラットフォーム向けにHBM4とSOCAMM2の量産品販売を始め、PCIe Gen6 SSDも開発したとしている。2Qには最初のHBM4Eサンプルを出荷する予定だ。
スマートフォン事業の存在感は薄くなっている。MX/Networksの1Q売上高は38.1兆ウォン、営業利益は2.8兆ウォンだった。Galaxy S26シリーズの発売で売上は伸びたが、全社利益を決める規模ではない。Samsungの業績は、消費者向け端末の販売台数よりも、AIサーバーが必要とするDRAM、HBM、SSDの価格と供給量に強く連動するようになった。
価格上昇より契約と生産能力
メモリ市況はもともと循環が激しい。価格が上がれば投資が増え、供給が増えれば価格が下がる。ただ、今回の利益観測を短期の価格上昇だけで説明するのは難しい。AIデータセンターでは、GPUやCPUと並んでメモリ、ストレージ、ネットワーク装置も一体で調達される。メモリが不足すれば、計算資源全体の投入時期が遅れる。買い手はスポット価格よりも、必要な容量を何年分確保できるかを重視する。
金容官氏はJoongAngの報道で、堅調なフリーキャッシュフローに触れ、Samsungが毎年40兆ウォン以上を投資してきたこと、今後も投資規模を増やす考えを示したとされる。40兆ウォンは約4.24兆円にあたる。公式1Q資料でも、Samsungの有形固定資産取得は17.13兆ウォンに達している。HBMや先端DRAMの供給を増やすには、前工程に加えて先端パッケージとベースダイをそろえ、検査と顧客認証も通さなければならない。投資額の大きさは、その工程の長さを映している。
月末の正式決算で見るべき数字は営業利益に限られない。長期供給契約の規模と期間、HBM4/HBM4Eの顧客別進捗、3Q以降のDRAMとNANDの価格見通しが、通期300兆ウォン観測の耐久性を決める。Samsung自身も1Q時点で、ハイパースケーラーのAIサービス拡大と企業のLLM導入を背景に、下期もサーバーメモリ需要が強いと見ている。
7月決算で試されるメモリサイクル
7月7日の2Q暫定実績は、300兆ウォン観測の最初の関門になる。暫定値は通常、売上高と営業利益の大枠を示すもので、事業別の内訳や契約の詳細は月末の正式発表を待つ必要がある。SamsungのIRページでも、執筆時点で2026年2Qの決算PDFはまだ掲載されていない。したがって、今の段階で確定できるのは、1Qの公式実績と、2Q以降に対する市場の期待との差である。
市場が見ているのは、AIメモリの利益が一過性かどうかだ。JoongAngは、JPMorganが2Q決算シーズンをメモリサイクル再評価の分岐点と見ているとも伝えた。Samsungが2Qで市場予想に届き、かつ長期契約や下期価格の説明を出せるなら、投資家はこの利益水準を短命な天井として扱いにくくなる。逆に、価格や契約期間に不透明さが残れば、300兆ウォンという数字は期待先行として割り引かれる。
Samsungにとっても、これは過去最高益の競争では終わらない。AIインフラの投資額が増えるほど、メモリメーカーは供給力を増やすための資本支出を先に積まなければならない。利益が過去40年の累計を超えるかという見出しは派手だが、次の勝負はその利益をどれだけ長期契約と量産能力へ変えられるかに移る。7月の決算は、その答え合わせの始まりになる。