Samsung Electronicsは2026年10月8日、7~9月期の連結営業利益が107.4兆ウォン(約12.5兆円)となる業績速報を発表した。前年同期比782.5%増で、売上高は195兆ウォン、営業利益率は計算上55.1%に達する。メモリを売る半導体事業には価格上昇が追い風となる一方、部品を調達してスマートフォンや家電を作る事業にはコスト増が重くのしかかる。前四半期の確定決算で表れていたこの差を踏まえると、今回の最高益を読むには、HBM4の販売拡大と全社の収益性に加え、端末側の採算を見ておく必要がある。
約9倍の利益、その中身は利益率の変化
Samsungの10月8日発表によると、営業利益は前年同期比782.5%増、売上高は126.6%増となる計算だ。利益の伸びが売上の伸びを大きく上回っている。
比較の基準をそろえるため、同じ発表に載る全社連結の数字を並べた。金額はすべて兆ウォン、会計基準はK-IFRSである。
| 期間 | 売上高 | 営業利益 | 営業利益率(計算値) |
|---|---|---|---|
| 2025年7~9月期 | 86.06 | 12.17 | 14.1% |
| 2026年4~6月期 | 171.5 | 89.49 | 52.2% |
| 2026年7~9月期・速報 | 約195 | 約107.4 | 約55.1% |
Samsungの全社営業利益率は、2025年7~9月期の14.1%、2026年4~6月期の52.2%を経て、同年7~9月期の速報で55.1%に達した。
利益率は各期の「営業利益÷売上高×100」で算出し、小数第1位に丸めた。今回なら107.4÷195×100で約55.1%となる。売上の半分以上に相当する営業利益が残る水準であり、前年の低い利益との比較だけが目立っているわけではない。すでに高収益だった前四半期からも、利益率は約2.9ポイント上昇している。
前四半期比では売上高が13.7%増、営業利益が20.0%増だ。前年との落差ほど急激ではないが、収益性はさらに高まった。ただし、この計算から価格、出荷量、製品構成のどれが利益を何兆ウォン押し上げたかまでは分からない。
また、今回の数字は確定決算ではない。Samsungは売上高194~196兆ウォン、営業利益107.3~107.5兆ウォンという推計範囲の中央値を速報として示しており、部門別の業績やHBM4単独の売上高・利益は開示していない。
HBM4の販売拡大と、通常DRAMの値上がり
SamsungのHBM4は、今回の四半期に初めて売れ始めた製品ではない。同社は2月12日に量産と商用出荷の開始を発表し、第1四半期決算ではNVIDIAのVera Rubin向けに量産品の販売を始めたと説明した。続く4~6月期にもHBM4の販売を拡大している。
HBMはDRAMを縦に積み、AIアクセラレーターの演算チップへ大量のデータを供給する広帯域メモリだ。演算器を増やしても、モデルのデータを十分な速さで運べなければ処理は待たされる。その待ち時間を減らすため、HBM4はデータを同時に運ぶ入出力を、HBM3Eの1,024本から2,048本へ増やした。
Samsungの公称仕様は、ピン当たり11.7Gbpsで安定動作し、最大13Gbpsまで対応する。コアのDRAMには1c世代の製造技術を使い、積層DRAMの下で信号を制御するロジックベースダイには自社の4nmプロセスを採用した。高速なメモリの需要を、DRAMの製造に加えてロジックの製造にも結び付けられる構成である。
一方、メモリ市況を押し上げているのはHBMだけではない。調査会社TrendForceは9月7日の調査発表で、4~6月期のDRAM業界全体の売上高が前期比59.5%増えた主因として、通常DRAMの契約価格の急騰を挙げた。同じ期間のビット出荷量、つまり出荷したメモリの総容量の伸びは小幅にとどまったという。
大量に売った効果と、高く売れた効果は違う。AIサーバーはGPU用のHBMに加えて、サーバー用DRAMやSSDも必要とするため、AI需要の影響は複数のメモリ製品に及ぶ。Samsungの巨額利益も、HBM4への世代交代だけで説明するより、サーバー向け製品の販売構成と通常メモリの価格上昇を合わせて見る方が実態に近い。もっとも、7~9月期のそれぞれの寄与は、部門別の詳細開示を待つ必要がある。
半導体の利益と、端末の赤字が同居する
Samsungが7月30日に公表した4~6月期の確定決算には、全社の高収益だけでは見えにくい事業間の差が出ている。半導体を担うDevice Solutions(DS)部門の営業利益は89.2兆ウォンだった一方、スマートフォンを担うMobile eXperience(MX)と通信ネットワーク事業の合算は7,000億ウォンの営業赤字となった。テレビ・家電事業も小幅な営業赤字を計上した。
これは7~9月期の部門別実績ではなく、直前の四半期に確認済みの数字である。また、DSにはメモリ以外の事業も含まれ、MXと通信の赤字額をスマートフォン単体の損失として扱うことはできない。それでも、全社の記録的な利益と端末事業の好調が、必ずしも同時に起きていないことは分かる。
会社の説明によれば、Galaxy S26やGalaxy Aシリーズの販売は堅調で、MX・通信事業の売上高は前年同期より増えた。それでも業界全体の部品コスト上昇が利益を圧迫した。売れていても、採算は悪くなる。
メモリメーカーが限られた供給を高い価格で売れる局面では、その部品を使う端末メーカーは仕入れコストの上昇を受ける。製品価格に転嫁できれば負担を吸収しやすいが、値上げが販売を鈍らせるなら、利益率を削るか、製品構成を変える必要がある。半導体と完成品の両方を持つSamsungには、市況の恩恵と負担が同時に表れる。
このため、107.4兆ウォンという全社営業利益だけから、Galaxyや家電の採算回復を読み取ることはできない。7~9月期の端末事業が部品高をどこまで吸収できたかは、確定決算で改めて確認する項目になる。
増産を決めても、供給不足はすぐ解けない
TrendForceは9月30日付のDRAM市場レポートの公開要旨で、HBM生産が通常DRAMの生産能力を圧迫し、供給側の在庫を低い水準にとどめていると説明した。クラウド事業者がサーバー向けDRAMを追加調達する一方、PCやスマートフォンのメーカーにはコストと供給の両面で圧力がかかっている。
PCやスマートフォンの需要が弱まっても、メモリ全体がすぐ余るとは限らない。メーカーが限られた生産能力をAI向けやサーバー向けへ振り向ければ、消費者向け製品に回る供給は絞られる。買い手側の需要だけでなく、供給がどこへ向かっているかが価格を左右する。
Samsung自身も4~6月期決算で、モバイルやPCの需要が一部落ち着く一方、サーバー中心の需要は強く、増産を進めても供給制約が続くとの下半期見通しを示していた。メモリの好採算が増産を促しても、工場を拡張し、製造工程を立ち上げ、出荷できる量を増やすまでには時間がかかる。
その時間差を示すのが、競合Micronの9月30日の決算説明原稿だ。同社の計画では、米国のID1工場は暦年2027年半ばにウェハーの生産を始め、日本で拡張するDRAM工場は2028年後半に生産を始める予定だ。さらに、新工場の生産が本格的に効いてくるのは、生産開始から数四半期後だと説明している。
これはMicronの計画であり、Samsungの増産時期を示すものではない。ただ、設備投資の発表と、市場へ十分なメモリが届く時期を同一視できないことは伝わる。Micronは2027年、2028年も供給が不足する見通しを示しており、端末メーカーが部品価格の正常化をすぐ見込める状況ではない。
確定決算で見るべきは部門別の回復
HBM4の販売が増えれば、Samsungにはメモリだけでなくベースダイの製造需要も生まれる。4~6月期決算では、ファウンドリ事業も賞与関連の引当を計上する前の段階で業績が大きく改善し、その要因にHBM向けベースダイの需要と米国顧客からの受注を挙げた。ただし、この説明はファウンドリの黒字化や、HBM4単独の利益を確定するものではない。
7~9月期の詳細では、HBMの出荷拡大がどれだけ売上に結び付いたかに加え、通常DRAMの価格上昇による収益が続いているかを確かめたい。端末事業については、販売額を伸ばすだけでなく、部品高の中で利益を残せたかが問われる。半導体の巨額利益が続いても、完成品側の損失が膨らむなら、Samsungの業績は依然としてメモリ市況に強く依存する。
Samsungは7月時点で、端末の高価格帯製品を増やし、コスト増の影響を抑える施策を進める方針を示している。こうした施策で端末事業の採算も回復すれば、全社の最高益は、メモリの値上がりに支えられた記録から、より幅広い事業が利益を生む状態へ近づく。



