GlobalWafersは2026年8月4日の第2四半期決算で、既存の12インチ(300mm)シリコンウェハー能力が、新たに拡張したラインを除いてフル稼働だと明らかにした。同社は、AIや先端用途の需要拡大が計算能力とメモリー容量を押し上げ、ウェハー消費も増えていると説明した。
これは、あらゆるシリコンウェハーが不足しているという話ではない。GlobalWafersは8インチも高い稼働率にある一方、6インチ品の回復は緩やかだとする。同社が示したのは既存300mm能力の稼働状況であり、製品グレード、顧客、地域まで一律に逼迫しているとは読めない。
300mmウェハーは、半導体を作る研磨済みシリコン基板だ。小径品より1枚当たりに処理できるチップ面積が大きく、先端メモリーとロジックの主力フォーマットになっている。今回見えてきたのは、AI向け半導体の投資が製造装置や後工程に加え、その前段にある基板の確保へ及び始めたことである。
300mmから始まった需給の変化
GlobalWafersの説明に加え、ほかのウェハーメーカーの開示も需給の変化を示している。信越化学工業は7月24日の決算説明会質疑応答で、2026年4〜6月の300mm市場が前年同期比で中位の1桁成長、前四半期比で高位の1桁成長となり、6月の出荷量は月間で過去最高に達したと説明した。顧客が将来の増産に備えて在庫を確保する動きと、AI需要が回復を支えたという。
同社は、300mmでは全ウェハーメーカーがフル能力で操業しているように見え、生産能力が供給を制約し始めているとの見方も示した。ただし、これは信越化学工業の市場認識であり、世界全体の不足率を測った数字ではない。製品のグレード、顧客、地域まで一律に逼迫していると読むことはできない。
Siltronicは7月30日、2026年第2四半期の300mm需要が堅調だったと説明した。2026年通年では、300mmの稼働率が高い水準にとどまる見通しだという。上期の数量成長は300mmのメモリーとロジック需要が牽引し、200mmはなお弱かった。GlobalWafersの6インチ回復が緩やかだという説明とも合わせると、回復の速さは口径と用途で異なる。
需要量を押し上げる経路も一つではない。信越化学工業は、同社の300mmウェハーのうち、現在は1割弱が2枚のウェハーを使うデバイス向けだと説明し、この比率は広がると見込む。AI向けの先端メモリーとロジックでは、工程の移行や複雑化も進む。同社の数値をHBMや先端パッケージング全体の比率とみなすことはできないが、デバイスの構成が変われば、デバイスの出荷台数だけではウェハー需要を測れないことが分かる。
GlobalWafersの2026年第2四半期の連結売上高は152億台湾ドルで、前四半期比8.8%増、前年同期比5.0%減だった。同社は半導体需要と先端用途が回復を支えたと説明する。この数字は300mm需給の世界全体を表すものではない。先端用途の引き合いと、口径ごとの回復の速さは別々に見る必要がある。
能力予約へ変わる長期契約
需給が張る局面で契約の意味も変わる。The ElecはGlobalWafersが、従来はおおむね三年だったウェハーの長期供給契約(LTA)が五〜八年へ長期化し、一部のメモリー顧客は二〜三年先の割り当てを求めていると説明したと報じた。これは報道で伝えられた契約期間と顧客行動であり、個別契約の条件や数量は公表されていない。
10年という期間を持つ事例は、一次資料でも確認できる。Micronは7月9日、テキサス州シャーマンにあるGlobalWafersの300mm原料シリコン工場を支えるため、5億米ドルの戦略的資金を提供する計画を示し、相当量の原料シリコン能力について10年の供給契約を結ぶ計画を発表した。資金提供も契約も、最終契約、承認、その他のクロージング条件を前提にしている。
したがって、この案件をすでに資金が移転し、能力が稼働済みだと扱うことはできない。それでも、供給を確保するLTAが、将来の能力を早い段階で予約する契約になりつつあることは読み取れる。信越化学工業も、このGlobalWafersとMicronの10年LTAは、顧客がAI関連デバイスの販売が長く強いとみていることを表すと述べた。
もっとも、長い契約期間から供給余力を逆算することはできない。Micronの発表は、対象となる製品グレード、正確な数量、価格の算定式を開示していない。供給契約の年数は需要の見通しを映す一方で、どの顧客がどの仕様のウェハーをいつ受け取るかまでは示さない。
スポット価格とLTA価格の動き
The Elecは、GlobalWafersが原材料費やエネルギー価格の上昇を反映した値上げを協議していると報じた。物流費と人件費も加味するという。同社は2026年下期のスポット価格が上期を上回ると見込み、既存LTAでは契約価格を維持しつつ、今後の契約には市場環境や製品構成、業界動向を反映する仕組みが入り得るとしているという。
スポット価格と既存契約の価格は、同じ動きを取るとは限らない。スポットの上昇見通しは、すべての顧客、すべてのウェハー品種に同じ値上げが及ぶことを意味しない。
SiltronicについてThe Elecは、LTA外の300mm価格が上がり始め、一部のLTAは2027〜2028年に再交渉されると報じた。これは同紙が報じたSiltronicの価格と契約更新の動きであり、業界全体の価格指数ではない。
Siltronic自身の第2四半期発表では、前四半期からの売上増は価格ではなく、販売したウェハー面積の増加によるものだった。これは同社が価格上昇を発表したことを意味しない。
増設しても直ちには緩まない
ウェハー工場は増設しても、短期間で供給能力になるわけではない。GlobalWafersはシャーマン拠点で複数のTier 1顧客の認定を得ているとし、ミズーリ州の新しい12インチSOI(Silicon On Insulator)ラインでは需要が強く、製品は量産に入りつつあると説明した。だが、新設ラインは顧客認定と需要に合わせて立ち上げる段階にある。
SEMIは、300mmメモリー工場向けの装置投資が2026年に520億米ドル、2027年に570億米ドルへ達すると予測する。300mmメモリー能力は2026年に月産410万枚、2027年に月産420万枚の見通しだ。これらはメモリー工場向け設備投資と、メモリー分野の300mm能力の見通しであり、ウェハーメーカーの出荷能力や先端ウェハーの即時供給増を直接測る数字ではない。SEMIは、技術移行と工程の複雑化が実効能力の伸びを抑えるとしている。
AI向けのHBMや先端ノードDRAMでは、技術移行と複雑な工程が重なる。したがって、SEMIの能力見通しをGlobalWafersの顧客認定や量産移行と同じものとして扱うことはできない。ウェハーの需給を判断するには、設備投資の大きさに加え、どの世代のメモリーとロジックが認定を終えて量産へ進んだかを見る必要がある。
ウェハー工場は、結晶成長から研磨・エピタキシャル処理までの工程を整えなければならない。装置の据え付け後も、顧客認定を終えて量産へ移る必要がある。高稼働率は、完成品AIチップの不足や半導体価格の上昇までを直接証明するものではない。特定の先端300mm品で供給制約が出ているという点は、The Elecが報じた内容だ。今後は、2027〜2028年のLTA再交渉がどの品種へ及ぶかに加え、シャーマンとミズーリの新ラインが認定を経てどれだけ早く量産能力へ変わるかが、需給を見極める材料になる。
