TrendForceは2026年8月25日、DRAMとNAND Flashが主要クラウドサービス事業者(CSP)の総設備投資に占める比率について、2026年の47%から2027年には68%へ上がるとの予測を公表した。AIインフラの費用を押し上げる要因がGPUの台数に限られず、メモリの価格と搭載量にも広がるという見立てである。

68%は確定した予算ではない。TrendForceの予測であり、対象企業や算定式も8月25日の発表には載っていない。それでも、同社が別に示したCSPの設備投資総額と組み合わせると、クラウド大手が直面する変化の大きさが見えてくる。価格上昇を受け入れるか、長期契約で上限を設けるか、サーバー1台当たりの搭載量を削るか。メモリは調達部門の問題から、AIシステムの設計条件へ移りつつある。

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68%を金額へ直すと約8840億ドル

TrendForceは8月3日の別資料で、世界9大CSPの2026年設備投資が8867億ドルを超え、2027年には約1.3兆ドルへ達すると予測していた。対象は次の9社で、2026年の合計額では北米5社が約90%を占める。

地域 対象企業
北米5社 Google、Amazon、Meta、Microsoft、Oracle
中国4社 ByteDance、Tencent、Alibaba、Baidu

この9社が8月25日の「主要CSP」と同じ対象だと仮定し、設備投資額に公表比率を掛ける。2026年は8867億ドル超の47%4167億4900万ドル超、2027年は約1.3兆ドルの68%で約8840億ドルとなる。概算で約2.12倍、増加率は約112%だ。設備投資総額の伸びが約50%でも、メモリ比率が21ポイント上がるため、メモリ関連額はさらに速く膨らむ。

8840億ドルはCSPが公表した購入予算ではない。設備投資に含まれるメモリ評価額が、メーカーのDRAM・NAND売上高と同じ範囲かも分からない。サーバーやストレージ機器に組み込まれたメモリをどう評価したか、流通段階の価格を含むかも開示されていない。この試算は68%の大きさを金額へ置き換えるもので、実際の発注額を確定するものではない。

予測値そのものも動いている。8月3日の資料は9社の2026年設備投資を前年比「約90%増」としたが、8月25日の発表は主要CSPについて「98%増」と記した。TrendForceは予測を上方修正したのか、集計対象を変えたのかを説明していない。したがって、8867億ドルと68%の接続には仮定が残る。

価格上昇に27%の供給増が重なる

68%への上昇は、単価と数量が同時に増えるという予測から生まれた。CSPが重点的に買うServer DRAMの契約価格は2025年下半期に累計約64%上がり、2026年にはさらに累計約270%上昇する見通しだ。Enterprise SSDも2025年下半期に約35%、2026年に約235%の上昇が予測されている。

一部の長期供給契約(LTA)は値上げを抑える。2026年第2四半期以降に結ばれた契約には価格上限が入り、契約対象の数量では供給者が価格を自由に引き上げにくくなった。それでもTrendForceは、2027年のHBM契約価格が70~140%上がる可能性を挙げる。

数量側でもAIサーバーへの集中が進む。HBMはDRAMを積層した製品で、RDIMMはサーバーCPUが使うDRAMモジュールだ。両者は2026年にDRAM供給ビットの51%を占めると見込まれている。2027年にはプロセス移行と新工場の立ち上がりにより、Server DRAMとHBMを合わせた供給ビットが27%増える予測だ。

27%増えても安くなるとは限らない。AIサーバーの出荷と1台当たりの搭載量がそれ以上に伸びれば、供給増は需要に吸収される。しかもHBMは通常DRAMより多くのウェハー能力を使うため、HBMの増産がDRAM全体のビット供給を同じ比率で増やすわけではない。68%は高騰だけを表す数字ではなく、高い単価で多くのビットを買う費用の積である。

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長期契約の外側で搭載量を削る

LTAを結んだCSPも、市場価格から完全には切り離されない。TrendForceは2026年第3四半期のServer DRAM契約価格を前四半期比13~18%増と予測し、値上げの中心がLTAを持たない顧客と、契約済み顧客による割当外の追加購入へ移るとみている。SK hynixは2026年第2四半期までに約10顧客とLTAを結んだと公表した。ただし、対象製品と数量、価格や期間の内訳は明らかにしていない。

1台当たりの搭載容量を抑える動きはすでに始まった。一部のCSPとサーバーOEMは2026年上半期から、96GB128GBのRDIMMを32GB64GBへ切り替えている。CPUの供給状況と調達費にメモリ構成を合わせる調整であり、総調達量やサーバー完成台数が増えたことを示すものではない。TrendForceは2027年のRDIMM供給ビットが前年比15~20%しか増えず、サーバーCPU出荷の伸びに追いつかないと予測する。

ただし、容量削減には計算上の代償がある。CPU用DRAMを減らせば、ホスト側で前処理に使えるメモリと同時処理の余裕が小さくなる。HBMを減らせばアクセラレーターが高速に参照できるモデルや中間データの量が細る。影響はモデルとソフトウェア構成で変わるため、32GBへ下げれば性能が何%落ちる、と一律には換算できない。

TrendForceは、将来のAIチップでHBM搭載量を調整する案や、モデル構造をシリコンへ固定した独自ASICを検討する案も挙げた。これはCSPが採用を決めたという発表ではない。汎用性を下げて特定処理の効率を上げる選択肢であり、メモリ費用を減らせても、モデル変更への追随や複数用途への転用を難しくする可能性がある。

DRAM逼迫とNAND緩和は同じ68%に入る

DRAMとNANDを合計した68%は、二つの市場が同じ方向へ進むことを意味しない。TrendForceは2026年のDRAM充足率をマイナス1~2%と見積もり、2027年には不足幅がさらに広がると予測する。新しい設備が2027年下半期に立ち上がっても、供給への大きな寄与は2028年になるという。建屋が完成してから装置を入れ、歩留まりを上げるまでには時間がかかる。

NANDは別の経路をたどる。高層化で1枚のウェハーから得られるビットを増やし、新工場も徐々に動き始める。Kioxiaは2025~2028年の供給量を年平均22%増やすため、年約4700億円を投じる計画だ。既存の四日市Y7と北上K2を使い、2029年までの需要には新たな建屋を追加せず対応できると説明している。

消費者向け機器の需要が弱いままなら、TrendForceは2027年下半期にNANDの供給制約が緩むとみる。とはいえ、企業向けSSDではQLC製品がビット需要増加の最大部分を占める見通しだ。NANDの市況が下期に緩んでも、年平均のCSP支出は前半の価格、企業向けSSDの数量、DRAMとHBMの高値に押し上げられ得る。68%予測とNAND緩和は矛盾しない。

実額が予測へ近づくかは、CSP各社が開示する設備投資総額に加え、LTAで固定した数量を超えて買う必要があるかで決まる。さらに、Server DRAMとHBMの供給ビットが需要へ追いつく時期、NANDの需給が2027年下半期にプラスへ転じるかも効く。68%を確かめる材料は、クラウド大手がメモリ容量を削った台数と、契約外で支払った価格に現れる。