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次期iPhone SE 4に搭載予定の独自開発5GモデムはQualcomm製には及ばないがAppleは3年かけて追い抜くことを計画している

Y Kobayashi

2024年12月7日

Appleが長年取り組んできた独自の5Gモデム開発計画の詳細が明らかになった。Bloomberg誌のMark Gurman氏の報道によると、同社は2025年の次期iPhone SEを皮切りに、3年かけて段階的に自社開発モデムへの移行を進める計画だという。これはQualcommへの依存度を下げ、最終的にはその性能を上回ることを目指す野心的な取り組みである。

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3段階で展開される移行計画の全容

Appleの5Gモデム採用計画は、製品カテゴリーと性能要件に応じて入念に設計された3つのフェーズで構成されている。

第1フェーズは2025年に開始され、iPhone SEとエントリーレベルのiPad、そして「iPhone 17 Air」と呼ばれる新モデルに最初の自社開発モデムが搭載される。このモデムは理論値で最大4Gbpsの通信速度を実現するとされており、Qualcommの現行モデムと比較すると若干低速ではあるものの、実際の使用環境では十分な性能とされる。また、このモデムはデュアルSIMスタンバイに対応し、2つのSIMカードを同時にアクティブな状態で使用できる機能を備える。さらに、Appleの自社設計チップとの緊密な統合により、省電力性能の向上や効率的なセルラーサービススキャン、衛星ネットワークとの接続性向上といった利点も期待される。

第2フェーズは2026年に移行し、より高度な要件が求められるiPhone 18 ProシリーズとiPad Proに、ミリ波対応の第2世代モデムが採用される。この新型モデムは理論値で最大6Gbpsの高速通信を実現する計画だ。ミリ波対応により、都市部における超高速通信が可能となり、より高度なデータ通信要件を持つプロフェッショナル向け製品のニーズに応える。

最終フェーズは2027年に予定されており、社内で「Prometheus(プロメテウス)」のコードネームで開発が進められている第3世代モデムの導入が計画されている。このモデムは、AI機能や次世代衛星通信網への対応など、現時点では明らかにされていない革新的な機能の実装が見込まれている。Appleは、この最終フェーズでQualcommの製品を性能面で上回ることを目指しており、その実現後には自社モデムをiPhoneのAシリーズチップに統合することも視野に入れているという。

これら3つのフェーズは、各製品カテゴリーの要件と技術的な成熟度を慎重に見極めながら進められる計画となっている。特に注目すべきは、各フェーズでの技術的な到達目標が明確に設定されており、かつ製品カテゴリーごとの要求性能に応じて段階的な展開が計画されている点である。この周到な計画は、Appleが過去にIntelプロセッサーからM1チップへの移行で実証した、慎重かつ確実な技術移行の手法を踏襲するものと言える。

技術的課題と戦略的意義

だが、初期のモデムには技術的な制約も存在する。現行のQualcommモデムが対応する6キャリアアグリゲーションに対し、Appleの第1世代モデムは4キャリアまでの対応となる。また、Verizonなどの通信事業者が一部都市部で展開するミリ波にも当初は対応しない。

しかし、これらの制約は戦略的な判断に基づくものと見られる。モデム開発は極めて複雑で、通話の切断や通知の欠落などの問題は製品の致命的な欠陥となりうる。そのためAppleは、比較的リスクの低い入門レベル製品から段階的に展開を始める慎重なアプローチを選択したと考えられる。

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Xenospectrum’s Take

Appleの自社モデム開発計画は、同社のシリコン戦略における次なる重要なステップと言える。2019年のIntelモデム部門買収から約6年を費やしての製品化は、モデム開発の技術的困難さを物語るものと言えるだろう。

興味深いのは、2027年3月に期限を迎えるQualcommとの特許ライセンス契約の更新を見据えた計画的な移行タイムラインだ。これはM1チップの導入で実証された、Appleお得意の段階的移行戦略の踏襲でもある。

ただし、通信技術の世界ではQualcommの技術的優位性は揺るぎなく、Appleが2027年までに本当にその壁を越えられるかは未知数だ。結局のところ、これは単なる技術競争ではなく、スマートフォン産業における覇権を賭けた長期的な戦略の一手なのかもしれない。


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