SK hynixが中国・大連のNANDフラッシュ生産を2027年に50%増やす計画が浮上した。SEDailyによれば、月間ウェハー生産量を現在の約10万枚から約15万枚へ引き上げ、200層を超えるフローティングゲート(FG)型QLC NANDを企業用SSD(eSSD)へ振り向ける。同社はこの数値を公式には公表しておらず、7月時点では大連第2工場の再開について「具体的な日程はまだ確定していない」と説明していた。一方、過去4カ月に報じられた設備発注と試験ラインをつなぐと、新規ラインの月5万枚を既存の月10万枚へ足す計画と整合する。
大連の増産が予定どおり進めば、SK hynixは韓国の新NAND工場を待たずに供給量を増やせる。ただし、月5万枚の設備を入れることと、同じ比率で製品出荷を伸ばすことは同義ではない。2027年に月15万枚へ届くかどうかは200層台FG製品の歩留まりに左右され、翌年にも米国製製造装置の追加搬入が必要なら、2027年分の年次ライセンスも条件に加わる。
月5万枚の上積みが埋める2027年の空白
SEDailyが8月11日に報じた増分は月5万枚である。これは4月にSeoul Economic Dailyが伝えた大連第2工場の増設規模と一致する。5月にはThe Bellが、2026年第3四半期に200層台中盤のFG NANDを検証する試験ラインを設け、2027年下半期の本格量産を目指すと報じた。さらにNewsTomatoは7月、2026年下半期から2027年上半期にかけて設備を順次入れる計画だと伝えている。
大連第2工場は2022年に着工式を開いたものの、その後のNAND不況で投資が暫定的に止まった。再始動を支えるのは、AIデータセンター向けeSSDの需要である。SK hynix自身も2026年第1四半期と第2四半期の決算発表で、顧客需要が供給能力を上回っていると説明した。第2四半期にはNANDを含む高付加価値製品の販売が伸び、DRAMとNANDの価格も前四半期から大きく上昇した。
時間も大連に味方する。SK hynixは8月7日、韓国・清州の新NAND工場M17へ19兆1000億ウォンを投じると発表したが、最初のクリーンルームが開くのは2028年12月である。しかも装置は需要に合わせて段階的に入れる。既存建屋を使う大連第2工場なら、それより1年以上早く追加供給を始められる可能性がある。
321層とは別系統、200層台FGを大連で伸ばす
SK hynixが韓国で進める主力技術は、321層のチャージトラップフラッシュ(CTF)である。同社は2026年第2四半期、321層製品がNAND生産で最大の比率になり、年末までに韓国内の生産能力の約50%を占める計画だと明らかにした。CTFは絶縁体に電荷を保持し、セル間の干渉を抑えやすい構造だ。
これに対し、大連で準備しているとされる製品はFG構造を使う。FGは導体に電荷を蓄える方式で、Intelから引き継いだ技術系統に当たる。大連第1工場では144層と192層のFG NANDを生産してきた。The Bellによれば、第2工場では200層台中盤へ積層を増やした新製品について、まず「ワンパス」と呼ばれる試験ラインで工程の安定性と量産性を確かめる。
同じ会社が二つの構造を並行して伸ばすのは、狙う製品が異なるためだ。大連の新製品には、1セルへ4bitを記録するQLCを組み合わせる。QLCは記憶密度を高められるため、大容量eSSDと相性がよい。SK hynixも第1四半期決算で、Solidigmが強みを持つ高容量QLC eSSDをAIデータセンターへ展開すると説明している。大連の200層台FGは、韓国の321層製品を置き換えるのではなく、Solidigmの企業向け製品群を増やす役割を担う。
50%という数字はウェハー枚数を指す
月10万枚から15万枚への増加率は50%である。ただし、この数字はウェハーの処理規模を表す。最終的に出荷できる記憶容量は、ウェハー1枚から取れる良品ダイの数、積層数、1セル当たりのbit数、工場の稼働率で変わる。新工程の立ち上げでは歩留まりも効く。
SK hynixの米証券取引委員会(SEC)提出書類も、積層技術の進歩がウェハー当たりのbit生産量を増やすと説明している。200層台FGとQLCの組み合わせが安定して量産できれば、ウェハー枚数の増加に加えて、1枚から得られる記憶容量も動く。反対に、試験ラインで歩留まりが上がらなければ、設備上の月15万枚と市場へ出る製品量の間に差が生じる。
市場シェアへの換算にも注意が要る。SK hynixは2026年第1四半期、NANDの世界売上シェアで18.5%を占め、2位だった。これは売上高の比率であり、大連のウェハー枚数を5万枚増やしたからといって、シェアが一定幅で上がるわけではない。製品単価と構成、他社の供給量も同時に変わるからだ。
2027年に追加搬入するなら、年次許可が要る
米商務省産業安全保障局(BIS)は2025年、SK hynixの無錫拠点と、当時Intel名義だった大連拠点を「検証済みエンドユーザー(VEU)」から外した。VEUの下では対象装置を一般認可で搬入できたが、認可の終了後は輸出ライセンスが必要になる。SK hynixがSECへ提出した目論見書によると、同社は年間の装置需要計画を提出する制度へ移り、2025年12月に2026年分の年次ライセンスを取得した。
この仕組みでは、2027年に米国製装置を追加搬入するなら、次の年次許可が必要になる。SK hynixは、必要なライセンスを適時に得られなければ中国の製造へ重大な影響が及ぶ可能性があると投資家へ説明している。2027年分の取得はまだ公表されていない。一方、大連第2工場が2026年中に搬入できる装置だけで月15万枚まで立ち上がるのか、翌年の追加搬入が必要なのかも不明である。
増産の進捗は、まず2026年第3四半期のワンパス稼働と、2027年下半期とされるFG QLCの量産開始で測れる。立ち上げに翌年の装置搬入が必要だと分かれば、2027年分の輸出ライセンスも確認項目になる。試験ラインの歩留まりと装置導入の工程が明らかになった時点で、月15万枚が計画値から実際の生産へ移る時期も見えてくる。



