SK hynixは2026年10月28日、7〜9月期の売上高が104兆6155億ウォンとなり、四半期として初めて100兆ウォンを超えたと発表した。営業利益も83兆3338億ウォンに達し、売上高とともに過去最高を更新した。営業利益率は80%に達している。
記録的な業績を背景に、同社は長期供給契約の拡大と生産能力の増強を進めている。7月時点で約10社だった長期供給契約の顧客は14社に増え、2027年と2028年の総生産能力の50%超に相当する契約量を確保したという。ただし、供給量の確保と販売価格の固定は別の問題だ。契約には、顧客と合意した価格帯の範囲内で市況を反映する仕組みが盛り込まれている。
一方、HBM4の増産や新工場の立ち上げには巨額の投資が必要になる。SK hynixはこうした設備投資を進めながら、2026年度に約100兆ウォンの株主還元を目指す方針も示した。長期契約によってどこまで将来の需要を見通せるのか、そして生み出した利益と資金を設備投資と株主還元にどう配分するのか。今回の決算発表は、その両立を考えるうえで重要な材料となる。
売上高104兆ウォン、過去最高益でも純利益は前期比58%減
第3四半期の売上高は前期の79兆3187億ウォンから32%増加し、営業利益も60兆5426億ウォンから38%増えた。前年同期比では、それぞれ328%、632%という大幅な増加である。いずれも韓国採用国際会計基準(K-IFRS)に基づく暫定連結決算の数値であり、今後の監査によって変更される可能性がある。
ただし、過去最高を更新したのは売上高と営業利益であり、純利益は減少している。第3四半期の純利益は39兆7756億ウォンで、前期の93兆9226億ウォンから58%減少した。営業利益が本業の収益性を表すのに対し、純利益には営業外損益や税金なども反映される。今回の発表では純利益が減少した具体的な要因は説明されておらず、特定の投資や費用に原因を求めることはできない。
SK hynixは増収増益の背景として、AI向けメモリー需要の拡大に伴う主要製品の価格上昇と、高付加価値製品の販売増加を挙げている。DRAMではサーバー向けDDR5の売上が大きく伸び、HBM4の出荷も本格化した。NANDでは321層TLCを採用した企業向けSSD(eSSD)の売上が拡大し、データセンター向け高付加価値製品が好調だった。ただし、HBM4単独の売上高や利益への寄与は公表されていない。今回の好業績は、複数の製品の販売拡大と価格上昇によって支えられたと捉えるのが妥当だ。
長期供給契約は約10社から14社へ、価格調整の仕組みも明らかに
SK hynixの長期供給契約は、この3カ月で約10社から14社へと拡大した。さらに今回の発表では、契約対象となる生産能力の割合に加え、販売価格を調整する仕組みも明らかになった。7月29日の第2四半期決算発表と10月28日の第3四半期決算発表を比較すると、開示内容の変化は次のようになる。
| 比較項目 | 7月29日の発表 | 10月28日の発表 |
|---|---|---|
| 契約顧客数 | 約10社 | 14社 |
| 契約対象量 | 長期契約の説明では未記載 | 2027年と2028年の総生産能力の50%超に相当 |
| 価格調整 | 長期契約の説明では未記載 | 合意した価格帯の範囲内で市況を反映 |
ここで注意したいのは、10月に示された契約対象量が、HBMだけではなくSK hynix全体の生産能力に対する割合だという点だ。また、7月の発表で契約量や価格調整の詳細に触れていなかったからといって、その時点でこうした条件が存在しなかったとは限らない。今回の発表によって、長期契約の規模と価格に関する仕組みが、より具体的に把握できるようになったということである。
一定の供給量を長期契約で確保することは、SK hynixにとって中長期の需要を見通しやすくする効果がある。一方、価格については事前に合意した範囲内で市況を反映するため、将来の販売価格を一律に固定する契約ではない。価格帯の上下限や顧客ごとの対象製品、需要が減少した場合の条件などは明らかにされていない。そのため、契約量の大きさだけをもって将来の売上高や利益が保証されたと判断することはできない。
同社によると、長期契約の期間は通常5年で、複数の顧客とは契約期間の延長についても協議している。契約先には世界の大手クラウドサービス事業者(CSP)も含まれる。ただし、今回の発表は生産能力のすべてが販売先まで決まったことを意味するものではなく、製品ごとの供給割当量も明らかになっていない。
HBM4は第4四半期に主力製品へ、M15Xの生産能力を拡大
HBM4について、SK hynixは主力製品への移行時期を具体的に示した。2026年第4四半期には、HBM4の出荷量と売上高がいずれも前世代のHBM3Eを上回ると予想している。単に出荷量が増えるだけでなく、売上高でもHBM3Eを逆転し、HBM事業の中心的な製品になるという見通しだ。
同社は7月の決算発表で、第2四半期にHBM4の量産出荷を開始し、下半期に増産する計画を示していた。第3四半期には出荷が本格化しており、今後は生産規模をさらに拡大する段階に入る。その中心となるのがM15X工場で、年末までに生産能力を最大限まで引き上げ、HBM4の生産を増やす計画だ。ただし、M15Xの最大能力での稼働も、HBM4が出荷量と売上高でHBM3Eを超えることも、現時点では同社の計画と予測である。
増産の対象はHBMだけではない。NANDでは、第4四半期に321層プロセスの比率を韓国内の生産能力の過半まで引き上げ、高性能・大容量の企業向けSSDの供給を増やす方針を示した。ここでいう過半とは韓国内の生産能力に対する割合であり、世界全体の生産能力の過半を占めるという意味ではない。また、DRAMでは10nm級第6世代の1cプロセスへの移行を加速し、AIサーバー向けDDR5やLPDDR5 SOCAMMの販売拡大を進める。
2027年には龍仁(Yongin)の第1期施設が本格稼働し、韓国内外でのインフラ投資も拡大することから、SK hynixは設備投資が大幅に増えると見込んでいる。ただし、今回の発表では具体的な投資額は示されなかった。同社は顧客需要や製品競争力、収益性、投資効率を考慮しながら、投資の規模と時期を柔軟に調整する方針だ。
こうした積極投資の背景には、メモリー市場の供給不足が長期化するという同社の見通しがある。SK hynixは、先端製造プロセスの技術的な難しさや新工場の建設に必要な期間を踏まえ、メモリー需要が供給を上回る状態は2030年まで続くと予測している。ただし、これは同社による将来予測であり、市場全体で供給不足が続くことが確定したわけではない。長期契約によって需要の見通しが立っても、計画どおりに設備を立ち上げ、必要な製品を供給できるかという課題は残る。
約100兆ウォンの株主還元、従業員報酬向けの自社株買いは対象外
大規模な設備投資と株主還元の両立を考えるうえでは、四半期に計上した利益と、実際に保有する資金を区別する必要がある。第3四半期末の現金および現金同等物は114兆5000億ウォン、借入金は15兆8000億ウォンで、差し引きのネットキャッシュは98兆7000億ウォンとなった。前四半期末の現金および現金同等物は88兆ウォン、借入金は18兆6000億ウォン、ネットキャッシュは69兆4000億ウォンだった。これらは一定期間に計上した営業利益や純利益ではなく、各四半期末時点の資金残高と負債を表す数字である。
SK hynixは2026年度の株主還元について、現金配当30兆ウォン以上と、自社株取得・消却60兆ウォン以上を柱に、合計約100兆ウォンを目指す方針を示した。自社株取得・消却には、8月に発表済みの40兆ウォンも含まれる。同社はフリーキャッシュフロー(FCF)の50%以上を株主に還元するという方針の達成を目指している。ただし、約100兆ウォンは年度全体の目標であり、すべての還元が実施済みというわけではない。8月に発表した40兆ウォンの自社株買いは先週完了したものの、取得した株式の消却は今後行う予定だ。
10月28日の取締役会では、第3四半期の現金配当14兆ウォンと、新たな自社株買い20兆ウォンを決議した。ただし、20兆ウォンの自社株買いは全額が株主還元に当たるわけではない。このうち10兆ウォン分は株主還元を目的として取得後に全量消却する一方、残る約10兆ウォン分は従業員報酬に使用し、株主還元総額には含めない。そのため、現金配当14兆ウォンと自社株買い20兆ウォンを単純に合算し、34兆ウォンを今回の株主還元額とみなすのは正確ではない。
第3四半期の1株当たり配当金は2万ウォンで、業績の改善を反映した通常の配当1万ウォンと、キオクシアへの投資利益を株主に分配する特別配当1万ウォンで構成される。SK hynixは、戦略的な投資から得られた利益の大半を株主に還元することを基本方針としている。今回もその方針に従い、今年実現したキオクシアへの投資利益の大半を特別配当として還元する考えだ。
一方、設備投資に必要な資金の調達方法については、従来の計画を変更した。クァク・ノジョンCEOは、Solidigmの新規株式公開(IPO)について、もともとは生産設備の拡張に必要な外部資金を調達し、SK hynix自身の投資負担を軽減するとともに、株主還元の余力を広げることが目的だったと説明した。しかし、金融市場の状況などを検討した結果、当初期待していた効果を十分に得られないと判断し、IPOの検討を中止したという。これは資金調達方針の変更であり、Solidigmへの設備投資が不要になったことを意味するものではない。
今回の決算では、過去最高の売上高と営業利益に加え、長期供給契約の拡大や株主還元の具体策が明らかになった。今後の焦点は、HBM4が実際に出荷量と売上高の両方でHBM3Eを上回り、M15Xや龍仁の生産設備が計画どおり供給能力の増強につながるかどうかだ。2027年以降の投資規模と実行状況が明らかになれば、長期契約によって確保した需要をどこまで実際の売上と利益に結び付け、設備投資と大規模な株主還元を両立できるのかが、より具体的に見えてくるだろう。



