Valveが11月初めに公開したSteamハードウェア&ソフトウェア調査の2026年10月分で、32GBメモリ搭載PCの比率が前月から5.16ポイント低下した。しかし、これをDRAMの価格高騰による買い控えの結果と判断するのは早計だ。9月に31.39%まで増えていた簡体字中国語の回答比率が10月には21.98%へ戻っており、過去の調査でも同様の変動が確認できる。簡体字中国語の比率が28%未満だった直近13か月に限ると、32GB搭載機の比率は35.93〜38.02%で推移しており、10月の37.06%もこの範囲内だ。一方、前年同月比で見た32GB搭載機の伸びの鈍化や、大容量ストレージ搭載機の減少には、メモリ・ストレージ価格の高騰が影響している可能性もある。
32GB搭載機が5.16ポイント減少、16GBが再び最多に
2026年10月のSteam調査では、システムメモリ32GBの搭載機が前月の42.22%から37.06%へ低下した。5.16ポイントの減少は相対的には約12%に相当する。一方、16GB搭載機は37.82%から41.42%へ3.60ポイント上昇し、9月に32GBへ譲った最多の座を取り戻した。
同時に、表示言語やストレージ容量の構成も大きく変化している。簡体字中国語の回答比率は31.39%から21.98%へ9.41ポイント低下し、ストレージ総容量が1TBを超えるPCの比率も53.30%から48.62%へ4.68ポイント下がった。これらはWindows、Mac、Linuxを合算した数値であり、メモリ容量だけが単独で変動したわけではない。
過去13か月のデータが示す32GB比率と中国語回答の関係
Valveによると、Steamハードウェア&ソフトウェア調査は任意参加かつ匿名で実施される。公開されるのはメモリ容量、表示言語、ストレージ容量などの項目別集計であり、言語ごとのメモリ構成までは確認できない。したがって、特定の言語を使用する回答者の割合が大きく変われば、PCの実際の買い替え動向とは無関係に、全体のメモリ容量分布が変化する可能性がある。ただし、言語別のメモリ構成が公開されていない以上、その影響を厳密に算出することはできない。
こうした回答者構成の変化は、ほかの言語にも表れている。日本語の回答比率は2026年10月に2.47%(前月比0.06ポイント増)だったが、簡体字中国語が54.60%まで急増した同年2月には1.60%(同1.26ポイント減)まで低下していた。
2025年8月から2026年10月までの15か月を比較すると、32GB搭載機の比率が通常の水準から大きく外れたのは、簡体字中国語の回答が急増した2026年2月と9月の2か月だった。
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}簡体字中国語の回答比率が28%未満だった13か月に絞ると、32GB搭載機の比率は35.93〜38.02%に収まる。28%という基準は編集部が比較のために設定したもので、27.04%だった2025年9月を含み、54.60%だった2026年2月と31.39%だった同年9月を除外している。10月の37.06%はこの範囲内にあり、10月自身を除いた12か月で計算しても範囲は変わらない。
簡体字中国語の比率が近い月と比較しても、32GB搭載機の急減という印象は薄れる。2026年8月は簡体字中国語が23.97%、32GBが37.45%、16GBが41.20%だった。10月との差は32GBがマイナス0.39ポイント、16GBがプラス0.22ポイントにすぎない。また、前年の2025年10月は簡体字中国語が24.01%、32GBが35.93%であり、32GB搭載機の比率は現在の方が1.13ポイント高い。
過去に簡体字中国語の回答が急増した月を調べると、32GB搭載機との連動がより明確になる。2026年2月は簡体字中国語が30.74ポイント増加し、32GBが18.91ポイント上昇した。両者の変動幅の比は約0.62で、翌3月は約0.64、同年9月も約0.64だった。2025年2月にも簡体字中国語が20.88ポイント、32GBが13.73ポイント増加し、比率は約0.66となっている。対して2026年10月は、簡体字中国語の9.41ポイント減に対して32GBが5.16ポイント減少し、変動幅の比は約0.55だった。
これらの比率は0.55〜0.66の範囲に収まっている。2025年2月には簡体字中国語50.06%、32GB 46.94%、16GB 36.71%、2026年2月にはそれぞれ54.60%、56.93%、27.47%を記録し、いずれも32GBが16GBを上回った。急増した月と翌月の反動は一連の変化なので、独立した事例としては2025年2月、2026年2月、同年9月の3回と考えるのが適切だ。こうした過去の傾向は、回答者構成の変動が32GB搭載機の比率を大きく左右しているという見方と整合する。ただし、変動幅の比は単なる相関を表すものであり、因果関係を証明するものではない。
なお、比較期間を2025年8月以降に設定したのは、簡体字中国語の回答比率が28%未満の月が多く続くためで、DRAM価格の上昇時期に合わせたものではない。この比較から分かるのは、回答者構成が比較的近い月の32GB搭載機の水準であり、価格高騰による需要減少が起きていないことまでは証明できない。Windows限定の集計でも、10月は32GBが5.10ポイント減、簡体字中国語が9.63ポイント減と、全体集計と同じ傾向だった。
DRAM価格高騰が32GB搭載機の減少を招いたのか
これとは異なる見方もある。Tom's HardwareのMark Tysonは、簡体字中国語の回答が急減したことで、10月の調査は欧米のゲーマーに一般的なPC構成をより正確に反映している可能性があると指摘し、32GB搭載機の減少を部品不足の影響と捉えている。同誌によると、市販のゲーミングPCには依然として16GBを標準搭載する製品が多く、価格追跡ではDDR5メモリの16GBが約250ドル、32GBが約450ドルに達しているという。
日本でもメモリ価格の上昇は顕著だ。AKIBA PC Hotline!が2026年9月26日から10月10日に実施した店頭調査では、DDR5-5600の16GB×2枚組(合計32GB)は最安54,800円、平均63,284円だった。一方、8GB×2枚組(合計16GB)は最安31,980円、平均43,020円となっており、容量を増やす際の価格負担は大きい。
ただし、こうした価格高騰だけで10月の5.16ポイント低下を説明するには無理がある。比較対象の9月は、簡体字中国語の回答比率が31.39%まで増加し、32GB搭載機も42.22%と通常より高かった月だからだ。回答者構成が近い8月と比べれば、32GBの低下幅はわずか0.39ポイントにとどまる。また、Steam調査が対象とするのは新規購入されたPCではなく、既存のPCを含む回答者全体である。新規購入時のメモリ容量が価格高騰によって減少しても、その変化が既存PCを含む全体の構成比に表れるまでには時間がかかる。
したがって、回答者構成の変化は9月から10月にかけての急減を説明する有力な要因だが、DRAM価格の高騰が新規PCの購入やメモリ構成に影響している可能性まで否定するものではない。
32GBの伸びは鈍化、1TB超ストレージも減少
DRAM価格の高騰と時期が重なる変化として、むしろ注目すべきなのは32GB搭載機の普及ペースが鈍っている点だ。32GBの比率は2024年10月の32.17%から2025年10月の35.93%へ3.76ポイント上昇した。この間、簡体字中国語の回答比率は33.48%から24.01%へ9.47ポイント低下していたため、回答者構成の変化にもかかわらず32GB搭載機が増加していたことになる。
一方、2025年10月から2026年10月までの上昇幅は1.13ポイントにとどまった。同期間の簡体字中国語の回答比率は24.01%から21.98%へ2.03ポイント低下している。ただし、DDR5への移行など、メモリ容量の構成には価格以外の要因も影響するため、普及ペースの鈍化をDRAM価格の高騰だけに結び付けることはできない。
ストレージ総容量にも変化が見られる。1TB超のPCの比率は、2025年8月の53.64%から2026年8月には49.51%へ低下し、10月同士の比較でも51.34%から48.62%に減少した。これに対して、750〜999GBの区分は2025年8月の21.77%から2026年10月には25.07%へ増えている。Tom's Hardwareは、公称1TBのドライブでもWindows上では924GBと表示される例を挙げ、1TBドライブを1台搭載するPCが750〜999GBの区分に含まれる可能性を指摘している。なお、2025年8月から2026年8月にかけて簡体字中国語の回答比率も26.03%から23.97%へ下がっており、ストレージ容量の構成変化にも回答者の違いが影響した可能性はある。
供給側でも、ストレージ容量の縮小につながる動きが報告されている。TrendForceは2026年9月30日、同年10〜12月期の汎用DRAM契約価格が前期比10〜15%、NANDフラッシュが15〜20%上昇すると予測した。また、PCメーカーが部材コストを抑えるため主流モデルのSSD容量を減らしており、PC1台あたりの平均ストレージ容量が低下しているとも説明している。Steam調査で確認できる1TB超の比率の減少は、この市場動向と方向性が一致している。
11月以降の調査で確認すべきこと
今回の分析では、32GB搭載機の急減を説明する主な要因を、DRAMの価格高騰ではなく回答者構成の変化と考えている。この見方を検証するには、11月以降の調査で簡体字中国語の回答比率が21〜25%の範囲にあるにもかかわらず、32GB搭載機が35.9%を下回るかどうかが重要になる。また、簡体字中国語の比率がほぼ横ばいの状態で32GB搭載機が3か月連続して減少する場合も、従来とは異なる傾向と判断できる。
いずれかが確認されれば、回答者構成の揺り戻しだけでは説明しにくくなり、実際のPC購入動向やメモリ容量の選択が変化している可能性を改めて検討する必要がある。現時点では、10月の5.16ポイント減少をDRAM価格高騰による32GB離れの証拠とするには根拠が不十分だ。今後は単月の急激な増減よりも、回答者構成を考慮した32GB搭載機の推移と、その普及ペースに注目すべきだろう。



